第59話 痛み
俺の左肩の辺りから、何かが体の中で切れる感じがした。
まだその時の俺は左腕が動いていた為に、何かの筋が切れただけかと思っていた。
そんな 俺は木野をおぶさり、右腕で木野を支えながら、柚葉達の所へと歩む。
「お兄ちゃん!大丈夫?」
「うん?ああ」
「お兄さん!怪我とかは?」
「してないよ」
犯人が捕まり、警官が規制線を解除する前に、二人の柚葉は、規制線のテープをくぐると、俺に安心した表情を浮かべて駆け寄ってきた。
そんな俺を見て、翔先輩達は一安心した表情を浮かべる。
「フミ!大丈夫なのか?」
「先輩。大丈夫ですよ(笑顔)。それよりもこの子を保健室に連れていて下さい」
俺は気絶している木野を翔先輩に預けると、柚葉と一緒に由奈の方へ向き、
「由奈さん心配かけましたが、このとおり無事です(笑顔)」
「フミ君(笑顔)」
由奈は安心して、俺に笑顔を見せてくれた。
俺もそんな由奈を見て、両腕を上げてガッツポーズをとる‥‥‥が、
ーーーブチッーーー
『えっ?』
ーーーブチッ、ブチッ、ブチッーーー
『なんだ?左腕が‥‥‥』
それはまるで、吊り橋を支えていたロープが一本、また一本と切れる様な感じ。
そして片側が全て切れた吊り橋は、ロープが繋がっている片側へと一気に、まるで戻ってこないブランコの様に‥‥‥
俺の上にあげた左腕は一気に下に下がる。
「えっ?」
「フミ君?」
「えっ?えっ?えっ?」
「お兄さん?」
「お兄ちゃん?」
「‥‥‥ど、どうしたんだよ?俺の左腕は」
俺は左腕を上げようとするが、上がらない。
それどころか、左手も動かない。
俺は左腕に力を入れて腕を動かそうとするが、動こうとはしない。
「‥‥‥なんで?」
「どうしたの?お兄ちゃん?」
「動かない」
「お兄さん?」
「動かない‥‥‥動かない!」
「フミ‥君?」
「由奈‥さん」
俺は由奈を見て更に左腕に力を入れる。
ーーーパァン!ーーー
俺の左肩辺りに、何かが腕の中で弾けた様な感じが伝わる。
すると俺の左腕の皮膚の色が肌色から徐々に紫色へと変貌していく。
『なんなんだよ!なんなんだよこれは!』
「お兄ちゃん?えっ?腕が!」
「お兄さんの左腕が!」
俺の左腕の色がみるみる変わって行く事に、二人の柚葉は更に驚く。
由奈も翔先輩達も俺の左腕の変化に驚く。
「フミ!おまえ、その左腕!」
「フミちゃん!」
「竜君!」
「フミ君‥‥‥」
由奈が俺を心配して、俺の左腕に触れようとした時、俺の左肩辺りに激しい鈍痛が襲いかかる。
「グゥッ!イ、イタイ!」
「フミ君‥?」
「があっ!ああああっ!」
「フミ君!」
俺は余りの痛さに叫び、その場にしゃがみこむ。そして右手を左腕に触れた時、俺は初めて自分の左腕に起きている事を知る。
「か、肩が、い、痛い!」
「フミ君!」
「ゆ、由奈さん‥‥‥ウッ!‥‥‥はあ?な、なんだよ‥‥‥左腕の感覚が」
由奈は俺を心配し、俺の左腕を見る。
そして翔先輩が、
「フミ、いったいどうしたんだよ?左腕の感覚が‥‥‥まさか!」
「ウッ!イッ!‥‥‥せ、先輩‥‥‥無いんです‥‥‥肩から下の‥‥‥左腕の触られた‥痛みの感覚がないんです」
俺の言葉にその場にいた全員が驚いていた。
そして俺の左腕は‥‥‥。
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