第12話 罰

俺の左手の怪我は、由奈さんが幸せになる為の等価交換。それを聞いた翔先輩と明菜さんは笑みを浮かべながら



「ふっ 、等価交換か。フミらしいな」


「そうね。そう言った考え方なんて、フミちゃんらしいわね」



俺の方を見て言ってきた。

柚葉もなんとなく理解したのか、少し笑みを浮かべながら、俺を見た。

ただ由奈だけは、最初は顔から少し笑みを浮かべていたが、ある事に気づくと、沈んだ様な顔をする。



「‥‥‥その怪我の等価交換なの‥」


「えっ?」


「‥‥‥私が今までフミ君を恨んできた等価交換は何と交換すればいいの‥」


「由奈さん‥そんなのはいいですよ」


「ダメ!私のケジメがつかない!それに貴方を傷つけた‥‥‥貴方は私の何と等価交換すれば貴方に許してもらえるの‥」


「由奈さん、許すも何も」


「貴方が許しても私の気持ちが‥心が私を許さないの」



由奈は下を向きながら言うと、いきなり俺の右手を両手で掴むと、俺の顔を見上げた。

しかしその由奈の表情は許しを請う表情ではなく、まるで罰を請うような表情をしていた。



「等価交換‥‥‥」


「そう、等価交換。フミ君に怪我をさせた事と、貴方を恨んでいた事。私は、私自身が許せないの‥‥‥私の罪を許して貰おうとは思わないわ。だから私に罰を与えて!それが私が貴方に罪を犯したことへの等価交換‥」



その真剣な眼差しを由奈は俺に向けた。

その瞳は嘘偽りのない事が伝わってくるようだ。

だが俺はそんな由奈にすぐには、言葉を返す事が出来なかった。

俺に決断をする勇気がないからなのか、由奈に罰を与える決断力がないからなのか、それは全て俺にとって当てはまる性格‥‥‥

だから俺は、助けを求めるような表情で、翔先輩を見ると



「フミ‥お前が決めろ」



そう言われた俺は明菜さんに助けを求めたが



「フミちゃん、貴方が決めないと、由奈先輩は納得しないわよ」



2人に言われ、俺は悩んだ。俺が由奈の罰を決めるなんて、そう思っていた時、俺の右手の袖を引っ張る、



「柚葉‥‥‥」


「お兄ちゃん、私がもし由奈さんと同じ事をして、お兄ちゃんに決めてもらいたいなら、私もお兄ちゃんに決めてもらいたい」


「柚葉ちゃん‥‥‥」



俺に真剣な表情で言ってきた柚葉に、由奈はまるで礼を言わんばかりの顔で柚葉を見る。

俺はその柚葉の言葉で俺自身が情けなくなった。

小学六年生の柚葉にまで、こんなこと言われてはと、俺は心を鬼にした。

しかし、いったい由奈にどんな罰を与えればいいのか、直ぐには出なかった。

ただ、由奈に罰を与えるなら、



『幸せになれる罰を』



と、思っていた。

だから 俺は由奈に一つ質問をする。



「由奈さん、今住んでいる所は?」



そんな質問に由奈は、右手の親指を自分の口近くに持って来ると、少し考えながら、話した、



「住んでいる所は‥‥‥ないの」


「えっ?ない?」


「ええ‥‥‥家賃を滞納して‥その‥」


「追い出されたと」



由奈は小さく頷くと、下を向いてしまった。

そんな由奈を見て、やはり罰を与えて良いものかと考えた時、



「住む場所がないって‥‥‥うん?あっ!」



俺は何か頭にひらめいた感じがして、ニタリと笑うと、翔先輩が俺を見て、



「フミ、お前何かひらめいただろ?」


「えっ!先輩、わかりますか!」


「当たり前だろ!由奈さんのさっきのお前の質問を聞いてたら‥‥‥て!まさか!フミ本気か?」


「ええ、俺は本気ですよ」



俺はまたニヤリとすると、由奈を見て決心する。由奈に罰を与えると。

由奈が幸せになれる罰を。














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