第55話 左腕の‥‥‥
俺が医師から言われた副効果ではなく、服効果とは、
着た服の色と気持ちの高ぶりの感情で、一時的に運動神経と動体視力がかなりあがると。
特に黒い服を着ている時と感情が高ぶる時に、それは起きると言われた。
ただ、その時に何故か左腕に激痛が走る。
医師いわく、それは体内の血の流れが急激に早くなり、怪我を多くしている左腕だけは、血の流れに耐えきれなく、悲鳴をあげているのではと。
もし、左腕が耐えきれなくなると、古傷から大量の血が溢れ出すと言われた。
そして最悪の場合、俺の左腕は完全に死滅する。
そしてこの事を知っているのは、俺ともう一人、あの日一緒に病院に行った由奈。
由奈はあの日、俺が医師に言われた事に驚いていた。
「フミ君、貴方の左腕そんなに‥‥‥」
「えっ〜と、はい。‥‥‥で、由奈さんこの事は誰にも‥‥‥」
「ええ、言わないわ‥‥‥だから約束して。無茶な事だけはしないでと」
そう言った会話を由奈と交わした俺。
けど、こんなに早く由奈との約束を破る事になるとは‥‥‥
「けど、早くあの子を助けないと、あの強盗犯、なにしでかすかわからないぞ」
俺が呟くように一言言って、前に一歩出ようとした時、俺の後ろにいた由奈が、俺の着ていた黒の服の端を持つ。
俺は服が突っ張るので、後ろを振り向くと、由奈が何か声を震わせ呟きながら下を向き、
「フミ君‥‥‥忘れたの?」
「えっ!?」
「約束忘れたの?」
「!‥‥‥覚えてます‥」
「だったら‥‥‥警察にまかせましょうよ」
由奈はまだ下をむきながら俺に涙声で話す。俺の服を掴んだ由奈の手は震えていた。
「ねえ、フミ君‥警察にまかせましょうよ」
「由奈さん‥‥‥俺、嫌な予感がするんですよ」
「嫌な予感?」
「はい、早く助けないと、あの子が死んでしまう、そんな感じがするんです」
「だったら尚更警察に‥‥‥」
「由奈さん、今ここで行かないと後悔するかもしれない」
「後悔‥‥‥」
「だから行かせてください!」
「‥‥‥ダメ‥ダメ!絶対にダメ!」
「由奈さん‥‥‥」
必死で俺を止めようとする由奈に、二人の柚葉は疑問に思い、由奈に聞く。
「ママ、いったいどうしたの?」
「叔母さん、お兄ちゃんがどうかしたの?」
「あっ‥‥‥」
由奈は黙ってしまったが、俺の服を持っ手を離そうとはしない。
そんな時、
「やっとみっけた!」
そう言って来たのは、寝坊した翔先輩とそれに付き合わされた、妻の明菜さん。
「正門が出入り禁止になっていたから、裏門から入ってきたが、凄い事になっているみたいだな」
そう言う翔先輩に、隣にいた明菜さんは
「由奈先輩‥‥‥ど、どうしたんですか?」
俺と由奈の姿を見て、少し驚いた様に聞いてきた。
それもそのはず。
いつのまにか由奈は目に涙を流していたのだから。
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