第50話 振る舞い
草野が俺を好きになった訳とは、
それは、
「竜君の前向きな生き方よ」
「えっ?俺の前向きな生き方?」
「そうよ」
草野が言うには、俺が怪我をした事で色々な物を失ってかなり落ち込んでいる人だと思っていたらしい。が、実際は周りに明るく振る舞っていた。
何故、そんな明るく振る舞う事が出来るか、あの時の草野にはわからなかったと。
「秋野先輩にフラれた私はあの後、自殺を考えてたの」
「えっ!草野、お前がかよ!?」
「そう。けどやめたの。あなたを‥‥‥竜君を見てね」
「俺を見て?」
「そうよ。竜君、あなたはあんな怪我をして今まで努力してきた物がほとんど無くしても、あんなに明るくしていたんですから」
「けど、草野は俺の闇を見抜いたよな」
「ええ、けど竜君は死のうとはしなかったでしょう?」
「‥‥‥そうでもないよ」
「えっ?」
「俺も最初は死のうと考えていた。けどやめたんだ」
「竜君が!何故?」
「俺、あの子の笑顔とあの人の涙が忘れられなくてな。だからやめた」
「あの子?」
「草野が知らない子」
「ブゥー、教えなさいよ!」
「悪いな草野。これだけは俺の胸の中にしまっておきたいんだよ」
俺が笑顔でそう言うと、草野はやれやれとした表情をする。
が、横で俺と草野の会話を聞いていた由奈は何か気落ちしたような表情をする。
由奈の様子がおかしいのに気づいた俺は、
「由奈さん、大丈夫ですか?」
「‥‥‥私が‥フミ君の大事な物を奪った‥‥‥」
「由奈さん?」
「私がフミ君の大事な‥‥‥」
「由奈さん!」
俺は由奈の顔を見た。由奈は今にも泣き出しそうな顔をしていたのに気づいた俺は由奈に近づくと、ギュッと由奈を抱きしめた。
「由奈さん‥」
「フミ‥君?‥」
「俺はあの時の事を後悔はしてないですよ。だってあれがなければ、俺は由奈さんや柚葉に会うことはなかったんですから」
俺は由奈を抱きしめながら、由奈にそう呟いた。由奈は俺の胸に顔を埋める。
そんな由奈は心の中で「ありがとう」と言って涙を流した。
だがそんな由奈を見ていた草野は、なにか憤るような感じで由奈に
「あなた今度は竜君に色目を使うの!」
「!」
「草野!」
「だってそうでしょう!あなたを助けた事で竜君の左腕に後遺症が残ったんだから!」
「!、草野お前知っていたのか!」
「ええ、高校を卒業する少し前に、先生の立ち話を聞いて知ったのよ。けど、相手が誰だかは分からなかったけど‥‥‥、今のではっきりわかった」
草野は鋭い目で、由奈を睨み、そんな草野から俺は由奈をかばった。
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