第28話 助けた女子

‥‥‥ここはどこだ?‥‥‥

真っ白な空間‥真っ白な世界‥

俺はどこにいるんだ?

何故、俺はここにいるんだ?


俺は暫くその場に立ち尽くしていた。

周りも見ても、上下を見ても、どこを見ても真っ白だ。


その時、何処からか声が聞こえる。聞き慣れた声が。


「お兄ちゃん‥」

「お兄さん‥」

「フミ君‥」



俺はこの声にすぐに反応する。



「柚葉‥達なのか‥」



声のする方を向いた俺は、白い空間に突然出て来た霧の中に、柚葉達三人の影の様な者が見えた。



「‥‥‥うん?‥柚葉‥由奈さんなのか?」



俺はその三人の影の様な者を見つめていると、その横にもう一人の影が薄っすらと浮かび上がり出す。



「な、なんだよ!今度は?‥‥‥誰だ?」



まだ、影は薄っすらしか浮かび上がらない。

俺がその影を更に見つめていると、かすかな声が聞こえてくる。



「‥‥‥おに‥‥‥」

「えっ?何?」

「おに‥‥‥ま‥」

「おに?なに?」

「‥‥‥お‥お兄様♡」

「はあ?お兄様?」



その時、俺の左腕の傷が疼き痛み出す。

しかしその痛みは傷の痛みとは違った痛み。

まるで、心に何かが伝わる痛み。

そして、俺は何かに引き戻される感覚がする。



「な、なんだよ!この感じは!」



俺が何かに引き戻されそうになる時、何処からか



「あなたは‥‥‥誰を‥‥‥」


「えっ?なんだ?」


「‥‥‥選ぶの‥‥‥」



‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥




「はあっ!」



俺は目を覚ました。

ここは何処だと目だけを動かして、周りを見渡す。

体に伝わる感じは柔らかい感じ。

ベッドなのか?



「フミ君!」


安心したように叫ぶ由奈は俺の名を叫ぶ。


「‥‥‥あっ‥由奈さん‥ここは?」

「ここは医務室よ。フミ君大丈夫?」

「え、ええ。‥俺どうして?」

「エスカレーターから落ちて、体を床に叩きぶつけたのよ。‥‥‥覚えてないの?」

「体を床に‥‥‥はあっ!そ、そうだ!」



俺は思い出した!エスカレーターの上から落ちて来た女子を受け止めたんだ!

けど、俺は女子を受け止めた反動で下へと。

そして俺は女子をかばう様に、床に体をぶつけたんだ。

俺は思い出し、ベッドから上半身を起こすと、左肩に激痛が走る。



「グゥッ!‥イッ!」



俺は左肩の激痛に耐えていると、俺の視界に見知らぬ女子が、なにやら申し訳ない様な顔つきで俺を見ていた。



「君は誰?」

「あ‥あ‥あ‥‥の‥」

「うん?」

「あ‥あのう‥‥‥助けて下さりありがとうございます!」

「えっ!あっ、う、‥助けた?俺が?」



その女子は力強く首を上下に動かしながら頷く。

その女子を俺はよ〜く見つめていると、女子が来ていたセーラー服が、柚葉と着ているセーラー服と同じのに気づくと、俺は「あっ!」と思い出した。



「エスカレーターから落ちて来た女の子?」

「はい!‥‥‥で、あ‥あのう‥そのう‥怪我の方は‥‥‥」


「怪我?‥あ、これねー‥‥‥ッ!」



俺は左腕をあげようと動かすと、左肩から激痛が走る。けど、この女子は俺の事を心配しているみたいなので俺は、



「だ、大丈夫だよ。今は少し痛いけど、大した事ないから」


「本当ですか?」


「本当、本当。ほらね!」



俺はその女子の前で、激痛に耐えながら少しぎこちない笑顔を女子に見せると、その女子は安堵のため息をする。



「本当だ‥‥‥よかった‥。あ、あのですね助けてくれたお礼をしたいのですけど‥」

「お礼。いいよ気を使わなくて」

「いいえ!それでは私のケジメが!」

「いや、本当にいいから、ね!」

「いいえ!‥‥‥そ、それに///」



俺に何か言いたそうに、恥ずかしそうにしていると、いきなり



「私、男の人に助けられたの初めてなんです!///」

「えっ?」

「しかも身を呈してまで///」

「えっ?えっ?」

「だから///そ、そ、そのう///‥‥あのう///‥私、木野 りんは///貴方の事が‥だから、その///‥連絡先を教えてください///」

「えっ?えっ?えっ?・・・連絡先?・・・ええええええーーー!!!」



俺がエスカレーターから落ちて来た女子‥‥‥女子高生の木野 りんは、恥ずかしそうに俺の連絡先を聞いて来ました。







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