第7話 由奈の恨み・・・

俺が住むアパートの前の駐車場に車を止めると、彼女をまたおぶさり、俺の部屋へと連れて行く。



「柚葉!悪い!先に行ってドアの鍵を開けてくれるか」


「うん!お兄ちゃん!」



俺は柚葉に家の鍵を渡すと、柚葉はドアの鍵を開け、ドアを開けて待っていた。そして俺は一階にある自分の部屋のベッドに彼女を寝かせ、カーテンを閉めてエアコンをつけた。



「ちょっと待ってな」



俺は台所の冷蔵庫から500mlのスポーツドリンクを出すと彼女の元に戻り、彼女の上半身を右腕で支えて、彼女にドリンクを飲ませた。



「慌てず、少しずつ飲みな。慌てないでな」


「ゴク‥ゴク‥ゴク‥」


「飲んだら横になって寝てな」



俺はまた台所に行くと、冷蔵庫から冷えた氷枕にタオルを巻き、冷え◯タを持つと、寝ている彼女の頭の下にタオルを巻いた氷枕を置き、おでこに冷え◯タを貼った。



「少し落ち着いたら着替えとか置いて置くから、///その‥君の着替えを手伝いたいんだが‥その‥」


「‥‥貴方なら‥別にかまわない‥」


「えっ!?」


『えっ!?、私何言っているの。初対面の人に///』



彼女はベッドで横になった事で、少し安心したのかポロリとそんな言葉が出た。驚いた俺は彼女の言葉に一瞬、言葉が出ないでいたが、



「///あ、あー!車に買い物した荷物があったんだ!」



俺は慌てたようにその場を離れ、部屋を出る時に一呼吸して、



「体、ゆっくり休めなよ」



そう言って部屋を出た。彼女はコクリと頷いた。

『何で私、あんな事言ったんだろう?///、けど‥なんだかあの人には初めて会った気がしない‥‥‥何処かで‥‥‥今はお言葉に甘えて体を休めよう』

彼女、松塚 柚葉はそう思いながら、熱中症で弱っていたせいか、直ぐに目を閉じて寝てしまった。



俺がリビングに行くと、柚葉が一人で、買った食品が入った買い物袋を持って来てくれた。



「柚葉、ごめんな。重かっただろ」


「ううん。それよりさっきのお姉さん大丈夫?」


「ああ、今寝たとこだ。暫くしたら体力が戻ると思うけどな」


「そうなんだ。よかったね」


「ああ、柚葉の助けもあったからな。ありがとな柚葉」


「うん。けどお兄ちゃん」


「うん?なんかようか、柚葉」


「な〜にか、あのお姉さんの顔をジィと見ていたけど‥‥‥まさか!お兄ちゃん!、あのお姉さんに一目惚れを!(ちょっと嫉妬)」


「えっ!ないないそれはないよ柚葉!」


「本当に〜(まだ嫉妬)」




俺は焦りながらこの後10分ぐらい、柚葉にそれはないよと言いましたよ。だいたい柚葉が泣いたら俺、翔先輩に殺されるよ。てか、俺は柚葉の恋人でもなんでもないんですがね。なんでこんな気持ちになるんですかね。本当に。




◇◇◇



そのころ、松塚 柚葉の母親の松塚 由奈は明菜さんと高校時代の談笑をしていた。

ただ、やはり由奈の顔から笑顔がでるが、何処と無く違和感のあるぎこちない笑顔に見えてしまう。

そんな由奈を見ていると、明菜さんはあの噂話が本当か聞くことが出来ないでいた。

しかし翔先輩がしびれを切らしたかの様に、由奈に聞き出した。



「‥‥‥由奈さん、今日ここに来たのは昔話をしに来たわけでわないですよね」


「‥‥‥え‥ええ、その通りよ」


「由奈先輩‥‥‥」



翔先輩は神妙な顔で由奈を見る。由奈からはいつのまにか笑顔が消えていた。その姿に心配そうに見つめる明菜さん。



「由奈先輩‥いったい何があったんですか?」


「明菜‥‥翔くん、私の噂、どう聞いているの?」


「それは‥‥‥」



由奈は少し苦笑いに似たような笑いをすると、翔先輩を見た。翔先輩は聞いた由奈の噂を話した。



「‥‥‥そうなんだ‥」


「由奈さん、本当の事なんですか?」


「‥‥‥うん‥本当よ」



明菜さんと翔先輩は由奈の返事に驚いた。

あの美人でみんなの人気者だった由奈がまさかこの様になるとはと。

そして由奈は話した。今までに起きた事を。

まるで自分ごとではないような表情をして。



「そんな事が‥‥‥」


「翔くん‥‥‥お願い!私達をたすけて!」


「「!」」


「私が‥‥‥私がしっかりと‥‥」


「由奈さん。俺も明菜も貴女を助けるつもりです。ただ一つ聞いていいですか?なぜ十五年前に自ら命を断とうとしたんですか?」



翔先輩は由奈をじっと見つめると、由奈は遠い目をして、一つ深い息を吐くと答えた。



「あの人の事‥‥‥一番最初の旦那の事を私は心の底から愛していた。けど‥子供が生まれてからは変わってしまった。家では暴力を振るうようになり、挙句には他の女を作り、借金までして私の前からいなくなった」


「由奈先輩‥‥‥」



明菜さんは由奈を哀れむような目で見るが

翔先輩は由奈の表情をまだ見ていた。

由奈の少しの変化した表情を。



「結局、あの男は最初だけ優しかった。子供も早く欲しいと言っていたのに‥‥‥。私に男を見る目が無かったて事ね。それから私は必死に生きた。まだ小さなあの子を抱えて、けど‥‥‥限界がきたの‥」


「由奈さん‥‥‥それで自殺を‥‥」


「ええ。けど‥たすけられちゃった‥あの男の子に」


「男の子?」


「ええ、けど‥正直、あの男の子には感謝の気持ちがないの。むしろあのまま放っておいてもらいたかった」



由奈が表情を曇らせると、今迄心の中にしまい込んでいた事を話しだした。まるで恨みでもあるかのように。



「なあ!何言ってるんですか!由奈さん!」

「そうですよ由奈先輩!」


「だってそうでしょう!あのまま死なせてくれたら、こんなに苦労して惨めな生活をしなくて済んだんだから!」


「由奈さん!」


「私はあの時助けてくれた男の子を恨んでいる‥‥‥」


「「!」」


「あの男の子もバカよね。私達を助けなければ左腕を怪我なんかしなくて済んだのに」


「由奈先輩‥‥‥」


「左腕の怪我⁈」



まるであの時も、いや今もその男の子を恨んでいる表情をし話す由奈に明菜さんは悲しげな表情をして由奈を見る。が、翔先輩は由奈の話に何か気づいたような感じで、



「由奈さん‥‥‥あなたを助けた男の子は左腕に怪我をしたと言ってましたよね」


「ええ、そうよ。けど、本当、お笑い種だわ。こんな生きる価値のない女を助けたなんて」



それを聞いた時、翔先輩は体を震わせると、目の前のテーブルに両手を突いて怒りをあらわにした。



「由奈さん!あんた!、何言っているかわかってんのかよ!」


「あ、あなた‥いったいどうしたのよ」


「明菜‥‥‥あいつに黙っていてくれと言われたが‥‥‥由奈さん!あんたを助けたのはフミて男だ!」


「フミ?」


「えっ!嘘でしょう?だってフミちゃん、あの怪我は高2の時のランニング中に崖から落ちてしたと」


「あいつがそんなドジをする玉かよ!俺は聞いたんだ三年前にフミから‥」



翔先輩は明菜さんと由奈に話した。十五年前に起きた日の事を。俺が翔先輩にだけ話した事を。







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