第15話 柚葉

俺の胸の中で泣く由奈。

そんな由奈を、翔先輩や明菜さんは微笑んで見ている。

俺が由奈に与えた本当の罰、『幸せにする罰』で、由奈が今後どの様な人生になって行くかは誰にもわからない。

けど、これだけは言える。

これ以上、由奈は悲しみの涙を流さないという事が‥‥‥。


の、の、のだが‥‥‥俺は何かを忘れかけている。

大事な何かを‥‥‥。


「‥‥‥あっ!」


俺は由奈を見つめると、大事な何かを思い出す。

そして俺は由奈に聞く。



「由奈さん」


「‥‥‥はい(泣き)」


「由奈さんに娘さんがいますよね?」


「‥‥‥はい、けど‥どうしてそれを‥」



泣きながら驚く由奈に俺は、柚葉を向くと小声で「今朝の人」と俺が言うと、柚葉は「あっ!」と声をだした。

いきなり声を上げた柚葉に、親の翔先輩達が柚葉を見ると、柚葉は慌てた様に自分の口を両手で塞ぐ。

俺は由奈に



「由奈さん。由奈さんの娘さん、俺の家にいますよ」


「えっ!」



目を赤くして泣き止んだ由奈は、驚き俺を見た。



「何故フミ君の家にあの子が‥‥‥柚葉が」


「ええ、今は僕の部屋の‥‥‥て!あの子、柚葉ていうんですか!」




由奈の娘の名を聞いて驚いた。

まさか、俺の目の前にいる柚葉と同じ名前だとは思ってなかった。柚葉も自分と同じ名前だと知って驚く。



「私と同じ名前!」



翔先輩と明菜さんは、由奈から話は聞いていたので然程驚かなかったが、由奈の娘の柚葉が俺の家に居ることに驚き、



「フミ!何故、由奈さんの娘の柚葉さんがお前の所にいるんだ!」


「あっ、それは‥‥‥」



俺は翔先輩との話の途中で、柚葉の方をチラリと見て、また話し出す。



「今朝、由奈さんの隣に居た娘さんの柚葉さんを一緒に居るところを見たんですよ」


「フミ、今朝って?」


「ええ、今朝のラジオ体操の時に公園で」


「はあ?見たって。けどなんでお前の家に由奈さんの娘さんが居るんだ?」




そう言うと俺の隣に居た柚葉が口を開く。



「あのお姉さん、私とお兄ちゃんの買い物の帰りに公園で倒れてたの」


「倒れてた?」




柚葉の言葉に驚く翔先輩達。そして由奈もまた心配そうな顔になり、俺に慌てた様に聞いてきた。



「娘は‥柚葉は大丈夫なの⁈」


「由奈さん、慌てないで。大丈夫ですから。軽い熱中症にかかったみたいで、柚葉さんは今俺の部屋で寝ていますよ」


「本当なの!」


「ええ(笑顔)」



俺が笑顔で由奈に返事をすると、由奈は安心したのか、安堵の溜息をする。

そして直ぐに俺の部屋の方に行きたいと言ってきた。

が、その前に俺の左手の治療をさせて下さいねと俺が言うと、由奈は俺の顔色を伺いながら、申し訳ない様な顔をする。

そして 明菜さんが俺の左手に応急処置をしてくれ、



「フミちゃん!事が終わったら直ぐ病院へ行く事!いいわね!(怒)」


「えっ?あっ、はい!あ、ありがとう‥‥‥ございます」



怒りながら明菜さんは俺を心配そうに言ってきましたよ。

こんな明菜さんはあまり見た事なく、俺は明菜さんに返す言葉が、最後、敬語になりました。

しかしなんですね。明菜さん、中学時代はあんなに可愛かったのに、お母さんになるとそれらしい貫禄なのがつくのでしょうか?

俺も翔先輩同様、明菜さんには逆らえませんよ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る