第30話 二つの車内で。

俺があの女子高生の木野きの りんを助けた。

エスカレーターから落ちた彼女を。

まあ、そのお陰?で左側にまたも、怪我をしたんですが。



「ところで、フミ君?」

「はい」

「その左肩、大丈夫なの?」

「えっ?あー、大丈夫ですよ。由奈さんとこうして冗談をして‥‥‥イッ!」



丁度、車が信号待ちをしている時に、由奈がおれの左肩を軽く、ポンと叩くと、俺の左肩に激痛が走る。



「な、な、な、何するんですか!」

「大丈夫じゃないの?(怒)」

「あっ‥‥‥」



で、由奈さん、俺が着ているトレーナーの首筋か、左肩側に手を入れる。



「イッ!」

「あっ!ごめんなさい。けど‥嘘は駄目よフミ君。それに、何この左肩!こんなに熱持って、しかもかなり腫れてるじゃないの!」

「あ、けど‥さっき医務室でシップ貼ってもらいましたから大丈夫‥‥‥」

「ダメ!怪我をしたフミ君の言葉は信用出来ない!家に荷物置いたら、直ぐに病院へ行くの!私もついて行くから、ね」

「大丈夫ですよ一人で‥」

「ム〜ウ!(怒)」



由奈は俺をすごい顔をして睨みつけながら、まるで説教をしているかの様に、俺に言ってきましたから、俺は渋々頷きましたよ。



『に、してもさっきの小さな女子高生は大丈夫だったのか?とりあえずlineを交換したけど、帰る時あの子、顔をかなり赤くしていたからな』


俺が心の中で呟くと


「フミ君聞いてる⁈」

「はい!聞いてますです!はい!荷物置いたら病院に直行しますです!」

「よろし♡」



◇◇◇



その頃、助けられた木野 りんは、担任の先生の車内で


『あの人、竜宮橋りゅうぐうばしフミて言うのか///‥』


助手席に乗っている、木野りんは自分のスマホのlineの画面を赤面しながら眺めていた。


「ねえ、りんごちゃんもしかしたら‥」

「そうね。あの顔からすると‥」

「お前ら何話してんの?」

「うるさい!男子のあんたにはわからないことよ!」

「な、なんだよー、教えろよー」

「うるさいの!」



そんな後部座席の会話も、今の木野 りんには耳に入らない。

そんな時、運転している女性担任は、



「木野」

「‥‥‥」

「木野、木野!」

「‥‥‥あっ、はい」

「お前大丈夫か?さっきので何処か痛めたか?」

「えっ?あっ何ともないです‥‥‥」

「木野、なんだか心ここにあらず、みたいだなぁ」

「そ、そうですか‥‥‥」

「なあ、木野。さっきの人とline交換したんだろ」

「はい///」

「だったら、さっき助けてもらったお礼、もう一度言ってもいいんじゃないのか」

「えっ?///けど‥///」

「フム、だったら私が替わりにお前のスマホからお礼を送ってもいいか?(冗談まじり)」

「えっ!ダ///ダメですよ!あの人は私が連絡します‥ハアッ!///(赤面)」

「木野、もう少し素直になれ。じゃないと私があの人を取っ‥」

「絶対にダメー!」

「おっ、ニヤリ」

「あっ///」

「まあ、頑張れ、頑張れ。あははは」

「せんせい〜(ちょっと怨み)」


そんな会話を車内でしている木野 りん。

後部座席の女生徒二人は「ほ〜」とか「へえ〜」とか、からかいながら言ってきますが、男子は「?」とした表情をしてます。

のちに彼は女生徒から「にぶチン」とあだ名がつけられますよ。可哀想にね。









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