第46話 歴史喫茶

柚葉のクラスの喫茶店に入った俺。

中はそれらしい飾りがしてあります。

窓には白いレースのカーテンが固定されてたり、四角い窓枠を楕円の窓枠に見立てるように黒いシールを貼ったりとか。

机とかは折りたたみのテーブルとパイプ椅子を借りてきて、椅子にはクッションを置き、テーブルにはテーブルクロスを敷いて、まあ、その辺りはありきたりな感じですか。

で、ただの喫茶店ではあまり学校からの評価は良くないので、学校の歴史の写真を壁や仕切り板に飾った、「我が高校歴史喫茶」てな具合の喫茶店になってます。

まあ、よく考えてありますよ。


で、そのなかで俺は今、椅子に腰掛けて上半身をテーブルの上にうつぶせになった状態でいますよ。

何故?それはですねー、



「お兄ちゃん、大丈夫?」

「お兄さん、大丈夫?」



二人の柚葉に介抱されているせいです。

右にはウェデングドレスの小さい柚葉。

左にはウエイトレス(メイド)の大きい柚葉。


で、そんな俺の状態を見てます男性の皆様、



「このやろー、羨ましい!」

「なんであいつみたいなのが!」

「地獄に落ちろ!」



なんて嫉妬心のオーラと視線が俺に向けられて痛いですよお〜。



「ところで柚葉(まだめげている)」

「なに?お兄さん♡」

「ここって、この高校の歴史喫茶だよな」

「うん、そうだけど」

「じゃあさ、歴代OBの集合写真とかも展示してあるのかな?」

「えっ?さあ〜?全部は見てないからわからないけど‥‥‥」



大きい柚葉がそう言うと、何か感づいたのか、俺の前の席に座っていた由奈さんが慌てる様に席を立つと、柚葉に手招きをします。



「柚葉、ちょっと」

「なあにママ?」



由奈さん、柚葉が近くに来ると柚葉の耳元でヒソヒソ話しをします。

で、俺の方をたまにチラリと見る二人に俺は首を傾げ「?」します。

その時、俺に声をかける一人の少女。



「あのう、すみません」

「はい?」

「この子の保護者様で?」

「えっ?あー、(小さい柚葉の事か?)はい、そうですが」



声をかけてきたのは、欠 千明。

で、俺はなにかようですか?と聞くと、



「この子、しばらく貸してください!」

「はあ?この子?あー柚葉ね。‥‥‥うん?て、貸す⁈あのう〜言っている事が‥」

「あっ、すみません。私、欠 千明です。このクラスの企画の責任者です」

「は〜、で?」

「それで、この子を我がクラスの看板娘として貸してもらいたいんです!」

「へえ?看板娘?」

「はい!こんなに綺麗で可愛い子、私、きにいりましたので」



なんて、凄い勢いで言って来た、欠 千明。

で、俺は小さい柚葉にその事を聞いてみると、柚葉、即答で「うん」と答えましたよ。



「本当にいいのか?」

「うん。だってあそこまで褒められたら」

「お前がいいならいいが‥‥‥辛くなったら俺にいつでも言いなよ」

「うん!(笑顔)」

「そうと決まれば!松塚さん!」



欠 千明は大きい柚葉に声をかける。

そして、柚葉に何か話していると、大きい柚葉が小さい柚葉の所に来ると、



「いいの?」

「うん。お姉ちゃん」

「じゃあ、やろうか」

「うん!」



で、今から柚葉二人がやるのは、これまた定番中の定番のクラス前でのビラ配りです。

まあ、この二人がビラ配りをしていると、あっと言う間に人だかりができましたよ。

それを見た俺は、改めてこの二人は可愛く、そして綺麗で人気があるのだと再認識しましたよ。



「じゃあ、その間このクラスに掲げてある歴代OBの集合写真を‥‥‥」



なんで言っていたら由奈さんが



「あっ、フミ君。他の所も回ってみない?」

「えっ?」

「フミ君〜(ジト目)」

「あ〜、わかりました」



で、俺と由奈さんは柚葉達に一声かけると、他の所に移動する。

その際なんですが、由奈さん、なんだかとっても安心した表情をしていたのが、気になりましたが。

ただ、その後の由奈さん、なんかとっても懐かしいのか、俺に、あそこはあーだった、ここはこーだった、と言ってきますよ。

で、そんな由奈さんを見ていた俺は一瞬何ですが、由奈さんが女子高生の由奈さんに見えたんです。


これってもしかして‥‥‥俺は‥‥‥。





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