第52話 新ステージです
落とし穴がないだけでこうもあっさりとクリアされてしまうなんて、なんだか複雑です。ダンジョンを経営するのも大変ですね。
罠だって自分が思っていたより凶悪な物になることだってありますし、加減が難しいです。
そもそも僕自身が戦えないので、冒険者相手にどれほどの効果を持つのかが容易には想像できない事も失敗続きの理由でしょうか。
しかし、二百階層を超えるダンジョンがようやく次のステージを見せてくれます。次は八階層ですからね、階層にちなんで蜂がいます。
あ、ギャグじゃありませんよ?虫続きで蟻からの蜂です。強さ的にも飛んでる分少し強い気がしてますけど、実際にはどうなんでしょうね?
テトラは割と未公開の階層を見たがらなかったので、ノルマーの話を参考に微修正を掛けて作り直してます。
捕まえるのも大変だったんです。何しろ大きいし飛び回るので、夜中の活動休止中を狙って巣ごと持ち帰りましたからね。
巣も馬鹿でかかったんです。直結十メートルくらいはあったんじゃないでしょうか?
その魔物はデスホーネットと言うらしいのですが、ノルマー曰く耐性のない人間が刺されれば即死するほどの猛毒を持っているらしいです。
捕まえる時に刺されなくてほんとよかったと思います。無知ってのは怖いですね、危ないって知ってしまった今ならそんな真似は絶対に出来ないです。
『お、少し開けたな。』
ルーモスさんを先頭に一行は八階層の中核へとたどり着いた様です。
『でも変ね、前あった落とし穴がなくなってた。床も塞がってたし、なんか変じゃない?』
リネルさんが疑問を口にします。ラッツさんも顎に手を当てて考えている様です。
『確かにそうなんだよな、前に来た時と様子が違う。
ロズ、気づいたか?ここまでの道のりでダンジョンが前回と少し変わっていた。』
『あぁ、俺も薄々感じていたが六階層あたりで確信したよ。俺たちが破壊した床や壁が全て修復されていた。
それに洞窟内が明らかに前回と違う。分かれ道の数や作りも変わっていたな。』
『やっぱりそうだよな?このダンジョンは普通じゃないぞ。何か大きな力が関与している気がするな。
もしくは、ダンジョン自体が意思を持って変化しているとでも言うのか?』
確かに!床とか壁が治ってたらおかしいです!!
何にも考えなしに修復しちゃってました。しかも分かれ道の数まで覚えてるなんてとんだ計算外です。冒険者って凄いんですね。
反省反省……。
「当たり前のようにダンジョン修復しちゃってましたよ……。」
考えたらすぐにわかる事ですけど、なんでこんな失敗をしちゃったんでしょう。
「私もそこまでは考えてなかったわ。」
テトラが同じように肩を落とします。色々一緒に考えてくれてたので、思う所も同じようです。
「いや、それはそれでいいんじゃないか?」
ベスティさんがそう言いながら、何処で仕入れてきたのかコーヒーを啜っています。
「どういう事ですか?」
「人知れず修復されるダンジョン。変化するダンジョン。
ラッツが言ったように別の力が関与していることは間違いないが、冒険者の目線で考えると別にマイナス面は少ないと思うぞ?」
「そうなんですか?」
「考えても見ろ、お宝が眠っているかもしれない場所で普通ではありえない様な事が起こる。
大抵の人間は何かあると思うだろう。捉え方はそれぞれあるかもしれないが、特別な何かがあるのではないかと言う考えに至るはずだ。
ま、この場合とんでもないお宝が眠っているかもしれないと浮かれる者と、未知の危険に足踏みする者とがいると思うが、人とは都合のいい者でな。大抵はイイ方へと捉えるものだ。
つまり、今回の事は今後のイイ客寄せになるって事だよ。」
ゆったりとコーヒーを飲みながら解説してくれましたが、なるほどなと感心します。
「そうよね〜。私もこのダンジョンに来た時は危険だとわかってても入っちゃったし。心のどこかで何とかなるかもって思っちゃってたと思う。
ま、テトくんが何とかしてくれたけどね〜。」
「ち、ちょっとレイジアさん。くっつきすぎです!!」
急にレイジアさんが僕の腕に抱きついて顔を近づけてきました。ほんと、ここ最近グイグイやってこられて大変です。
嫌ではないんですけどね。
照れます。
「いいじゃない、減るもんじゃないし。」
「そういう問題ではないんですけど……。」
『さて、いいかみんな。ここからは未知の場所だ。どんなトラップや魔物がいるかわからない。
気を引き締めていこう。』
『あぁ。』
『はい。』
なんて事をしているうちに、ラッツさんたちも八階層攻略に向けて進み始めました。
十階層まで洞窟が続きますが、少し道幅は広くしてます。蜂さんは飛びますからね。狭すぎるとダメなんです。
八階層は幅五メートルくらいの広々としたトンネルになってますから、動きを阻害される事は少ないはずです。
テトラはこの辺りを見てないですから、どんな反応をするかも気になるところですね。
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