第3話 魔物が増えてます

 3人は何やらダンジョンへ出たり入ったりを繰り返しているようです。

 警戒しているのでしょうか?

 そりゃあ今まで何もなかった場所にいきなり入口が現れたら誰だって驚きますよね。

 

 でもダンジョンだと認識すると、3人は松明を片手に奥へと進み始めました。

 すごい勇気です。

 

 僕なんて一人でダンジョンに入ったのはいいけど、入り口付近で1時間以上進むかどうかを葛藤してました。

 それに進んで直ぐに見つけた魔物に驚いて、尻尾を巻いて逃げ帰ったんですから。

 

 やっぱり冒険者の人は度胸が違いますね。

 

 ダンジョンの始めの階層はそれらしく洞窟の雰囲気で作りました。

 3人は松明を持って居るけど、幾らか明かりも灯してあります。

 

 光を放つ光魔石に似せた物作成して、点々と置いておいたんです。

 

 リアル感は大事ですからね。

 細部にわたってちゃんとこだわって作りました。

 

 一階層から五階層までは特にトラップもなく、群れでいた弱そうな魔物を配置してあります。

 コウモリみたいな魔物も居ますよ。

 

 彼らを捕まえるのは簡単でした。

 住処になっている洞窟の入り口に蓋をして、そこにダンジョンの入り口を作って誘き出すだけ。

 大きな音を出したら一斉にダンジョンへ入ってくれました。

 

 あとはゴブリンや犬みたいな魔物。

 それからスライムですね。

 

 浅い階層は弱そうなやつを片っ端から落とし穴方式でダンジョンへ勧誘しました。

 

 群れている魔物が多かったので、一度にたくさん勧誘できてよかったです。

 招き入れても自分では倒せないので、放置プレイの真っ最中。

 

 たまにどうしたのか覗いてみると、魔物って餓死とかしないんですね。

 みんなピンピン動いてました。

 

 少し心配だったので、たまに動物とか食べれそうな植物を放り込んでいましたが杞憂だったようです。

 

『お、魔物に出くわしそうだぞ?』

 

 テトラに言われてモニターを除くと、3人の行く手にゴブリンの群れがいました。

 ゴブリンは10匹近くもいますが大丈夫なんでしょうか?

 

 僕なら1匹で降参します。

 

『それにしてもテトよ、ちと魔物が弱すぎるんじゃ無いか?

 幾ら何でもゴブリンはなかろう。』

 

 え、そうなの?

 とりあえず弱い魔物を浅い階層に置いて、徐々に強くしていくのがダンジョンのセオリーだと思ってましたけど。

 

「ゴブリン、ダメですかね?

 ダンジョンの奥に行けば行くほど魔物が強くなるようにしてるんだけど。」

 

『そうなのか?それならいいが、あんな雑魚ばかりだとつまらんと思ってな。

 まぁお前がそう言うなら面白い作りになっているのだろう。確かに敵が少しずつ強くなっていくのは、見ていて楽しいかもしれんしな。』

 

 よかった。

 テトラも納得してくれたみたいだ。

 でも、こう言う他人の意見も有り難いです。

 一人で作ってきたので良し悪しを評価してくれる存在はとても助かります。

  

「これからも、何か気付いた事があったら教えてね。

 より良いダンジョンを作っていこう!」

 

『あぁ、そうするとしよう。』

 

 そうこうしていると3人がゴブリンに遭遇しました。

 身振り手振りはモニター越しにわかるんですけど、何をしゃべっているのかわかりません。

 

 そう言えば会話を聞き取るなんて事は考えていませんでした。

 見ていてなんだか物足りないですね。

 

『声は聞こえないのか?

 臨場感が少し足りないな。』

 

 テトラも同じ事を思ったみたいです。

 

「僕もそう思ってたとこだよ、ちょっと音が拾えるか試してみるね。」

 

 僕は《クリエイト》を使ってスピーカーをモニター横に設置してみた。

 映像が拾えるんだから音声も拾えると思うんだけど。

 

『・・は・・・ら。

 俺・・・ら行く!ラッドは後方支援を頼んだぞ!

 ゴブリン程度に負けるなよ!』

 

 あ、音声拾えました。

 

「できた!」

 

『うむ、素晴らしい。』

 

 ドラゴンなので表情はよくわかりませんが、テトラもご満悦の様子。

 これでますますダンジョンの経営が楽しくなりそうです。

 

『グギィィィ!!』

 

 魔物の声もしっかり拾ってます。

 思ったよりも優秀なスキルです。


『グゥゥゥゥゥ・・・ーーーー。』


 恥ずかしながら、僕のお腹の音です。

 ちょっとお腹が空いてきちゃいました。

 

「ちょっと食べ物持ってくるね。

 テトラはご飯とかどうするの?」

 

『我は殆ど食事を必要としないのでな、今はこの者達を観察させてもらおう。

 一人で食べるが良い。』


 ご飯食べなくても平気なんですか?羨ましいですね。


『よし!あと2匹!!』

 

 モニターの向こうでは、冒険者の人達がゴブリンを圧倒している姿が映っています。

 やっぱりテトラが言うようにゴブリンくらいじゃ弱すぎたんですかね?

 要検討です。

 

 じゃ、僕も気になるからさっさと食べ物取ってこよ。

 僕はモニターに夢中になっているテトラを残して管理室横の食料庫へと向かった。

 

 食料庫は二つあって、一つは冬山をイメージして作りました。食材はカチカチに凍ってます。多めに釣り上げた魚などを、そのまま凍らせて保存してるんです。

 長期間保存できて重宝してますよ。

 ただ、寒いんですけどね。

 

 今日はそちらの食料庫ではなく、もう一つの普通の倉庫へ向かいます。

 集めた木のみと、昨日作った野菜のスープを取りに向かいましょう。

 あと、残しておいた鶏肉も。

 

 やっぱり朝食べないと一日持ちませんからね。

 しっかり食べます。

 勿論お金なんてかけていないので遠慮はしません。

 

 食べ物をとってモニターの前まで戻ると、冒険者の3人はゴブリンからはもう遠ざかっていました。

 

「順調に進んでる?」

 

『あぁ、やはりゴブリン程度では少しの足止めにしかならん様だ。

 だか、この冒険者達もあまり強くはなさそうだな。』

 

 ゴブリン10匹に楽々勝てるんだから、僕からしたら十分強いんですけど。やっぱりドラゴンともなると次元が違うんですかね?

 

 彼らは30分もすると次の階層へとたどり着いた。

 流石は冒険者です。

 

 ここからは、群れで捕まえた犬の魔物なんかも出てきますよ。

 でも、やっぱりゴブリン同様にあっさりやられちゃうんですかね?

 

 と、そんな事を思ってたらいきなり犬の大群です。

 彼らも獲物を見つけたような目で、冒険者を見つめて涎を垂らしてます。

 

 僕なら見つけてすぐに逃げ出しますね。

 でもあれ、おかしいな?

 

 捕まえた時はあんなに群れてなかった気がするんだけど。

 10匹かそこらだった魔物が30匹くらいは画面に映ってます。

 

「魔物が増えてます!」

 

『何?どれ・・・。

 あれはキラードッグだな。

 よくもまあ捕まえたものだ。

 アイツらは我からすれば雑魚当然だが、群れで連携をとると普通の冒険者にはかなり手強い相手だぞ?

 それにゴブリンなんかとは比べ物にならんほど強い。

 強い魔物は己の発する魔力から新たな魔物を生む。増えるのは必然だ。

 しかしテトよ、徐々に敵が強くなるのでは無かったのか?』

 

 魔物ってそうやって増えるんですね。

 知りませんでした。

 でも、あの犬そんなに強いんですか?

 片っ端から捕まえてたからそんな魔物だなんて思ってもいませんでした。

 

 もしかしたらそんな場違いな魔物が別の階層にも紛れてるかもしれません。

 これも、要検討ですね。

 

「冒険者たちは勝てますかね?」

 

 そこが大事だ。

 倒してもらっておこぼれにありつけないと意味がない。

 

『どうかな?

 我の見立てではあの数のキラードッグに彼ら3人では荷が重いと思うぞ?』

 

 それは、残念です。

 配置換えを検討しないといけないですね。

 

 テトラの見立て通り、3人はキラードッグを前にしてそのままダンジョンの外へ逃げていった。

  

『いきなり敵のレベル上がりすぎだろぉぉおおおおお!!!!!』

 

 やはり配置替えは必要なようです。

 おや?冒険者の一人が何か落としていきましたよ?

 黄金色に輝いてますけど、もしかして棚ぼたですか?

 

 

 逃げ帰った3人を見届けたあと、僕は落し物を拾いに行こうか迷っています。

 今行ったら、あの犬に襲われて間違いなくやられる。

 

 拾いに行きたいけど、行けない!

 

『最初の来客はちと呆気なかったな。

 ん?どうしたのだ、難しい顔をして。』

 

 テトラが悩んでいる僕に気づいて、声をかけてくれました。

 本当に優しいです。

 

「いやぁ、さっきの冒険者が何かを落としていったんだけど、拾いに行こうかどうか迷ってて。

 ほら、僕弱いから。」

 

『なんだそんな事か。

 よし、我が着いて行ってやろう。』

 

 まさかの展開です!

 ドラゴンに守護してもらえるなんて願っても無い。

 

「いいの?」

『それくらい構わぬさ。』

 

 お言葉に甘えて僕はダンジョンに入った。

 ただ、洞窟はテトラには小さかったので人の姿になって貰った。

 可愛い女の子と二人っきり!?

 

 中身はドラゴンだとわかっていても緊張します。

 僕は緊張しっぱなしのまま黄金色の落し物を拾って管理室へ帰りました。

 キラードッグはテトラのお陰かまったく近寄ってくることは無かったので、安心して拾うことが出来ました。

 

『これは黄金蟲の卵だな。

 巣から出した時点で孵化することはないが、売ればいい金になるだろう。』

  

 少女なテトラが頭に話しかけてきます。

 テトラって物の価値までしってるんですね、流石は年長者です。

 ただ、見た目と声のギャップが少し気になりますけど、そこはグッと我慢・・・・。

 しにくいです。

 

「テトラって、普通には喋れないの?」

 

『人の姿なら出来なくはないと思うが、試したことがないな。

 なにせそんな事をする必要がなかったからな。』

 

 思念で会話ができるなら確かに不要ですね。

 でも、この格好でいる時は違和感しかないんです。

 

「試しに喋ってみてよ。」

 

 ちょっとその格好の声も聞いてみたいですし。

 

「こ、こうか?

 なんだか思念で話すのとは違って恥ずかしいな。」



 

 可愛いぃ!!!!!

 

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