第23話 約束して下さい

 まさかレイジアさんが同郷の人だったなんて、思いもしませんでした。

 こんな綺麗な人、村にいましたっけ?

 人付き合いしてなかったから、知らないのは僕のせいかもしれませんけど。

 

「同郷?・・・貴方、テトって。もしかしてファウストさんトコの引き篭もりのテトくん!?」

 

 たしかに僕はテト・ラ・ファウストですけど。引き篭もりのテトと呼ばれているのは心外です。

 ただ家の中で本を読んでいただけなんですけど。

 

「私、ポルテの姉よ。覚えてない!?」

 

 ポルテ・・・、ポルテ。

 あぁ、いましたね。そんな人。

 僕と同い年の子です。確か頭も良くてイケメンで、周りの女子からチヤホヤされてたから嫌いでした。

 呪いに掛かったのってポルテだったのか・・・。

 そう思うと、少し複雑ですね。でも、知り合いを見捨てるのも出来ないですよね。

 

 しかし、こんなお姉さんがいたなんて初耳です。顔良し、頭良し、姉良しですか。

 羨ましいです。

 

「お姉さん、いたんですね。知りませんでした。」

 

 なんだかさっきと違って、レイジアさんは少し笑顔が出てます。同郷ってだけで、少し気が紛れたんでしょうか。

 

「テト、そこまで移動する事が出来るか?」

 

「向こうから扉を開けた事がないので、無理ですね。」

 

 テトラの考えはわかりましたが、扉で一気に移動する事は出来ません。

 僕は外からならどこに居てもダンジョンに戻る事は出来ますが、一度扉を開いた場所じゃないと、中からは移動出来ないですからね。

 

「そうか、テトの同郷なら我が手を貸してやらんでもないが、どうする?」

 

 テトラの心遣い、染み入ります。


「じゃあ、夜のうちにお願いしようかな。

 レイジアさん、今から村まで送ります。でも、いくつか約束をして貰いたいのですが。」

 

「送るって、どうやって?」

 

 僕とテトラだけ話がわかっていても、レイジアさんには伝わりません。ちゃんと話しますけど、口止めはしとかなくては。

 

「方法は今はいいです。兎に角、ポルテを早く助けたいなら僕と約束をして下さい。」

 

 少し強引ですけど、自分の命を賭けてまで助けようとしていた彼女です。約束は守ってくれると信じます。

 

「わかったわ。月の雫をポルテに飲ませる為なら、約束を守る。何をすれば良いの?」

 

 レイジアはゴクリと小さく唾を飲み込んだ。


「何もしなくていいです。これから起こる事、僕らの事を口外しないで下さい。」

 

「そ、それだけ?」

 

 どんな要求をされるかと心配していたレイジアは、途端に肩の力が抜けて目を丸くした。

 

「てっきり、身体を要求されるかと思ったわ。」

「な、何を言ってるんですか!?そんな事しませんよ!!」

 

 何を言いだすんですかこの人は、僕がそんな事するわけ無いじゃないですか!!

 そもそもそんな発想すらありませんでしたよ!

 

「と、兎に角。約束は守って下さいよ!!」

 

 気持ちを振り払う様に大声で叫んだ。


「身体を要求とは、労働奴隷と言う事か?テトはそんな男ではないぞ。」

 

 テトラも腕を組んだまま頷きますが、ちょっと意味が違うと思います。まぁ、あまり気にしなくていいです。

 

「わかったわ。貴方達の事は口外しない。」

 

「絶対ですよ!」

「えぇ、この命に代えても。」

 

 真剣な顔で、しっかりと約束を受け入れて貰えました。これで裏切られたら、僕は人間を信じられなくなりそうです。

 

「なら、貴方には言っておきます。ダンジョンには宝なんてないですよ。あそこは僕が作ったダンジョンですから。

 だから、もうダンジョンには入らない方がいいです。」

 

 レイジアさんがまた間違って危険に会うのも嫌ですからね。これは言っておきます。口外されなければ一人くらい知っていても良いかな、と思いますし。

 

「ダンジョンを、作った?そんな事、信用できると思うの?」

 

 あれ、信じて頂けない?信じて貰えないとまた入って来られるのは嫌です。

 心配で見ていられませんから。

 

「そこにモニターがあります。そこからダンジョンを管理してるんです。」

 

「モニター?」

 

 僕が指差したモニターには、現在ダンジョンの入り口が映されている。

 

「あそこは、ダンジョンの入り口。どう言う事?」

 

 よく飲み込めないようですね、ここまで言っといてなんですが、説明するのが少し面倒です。

 

「僕のスキルでダンジョンを作ったんです。まぁ理由は伏せますが、僕はダンジョンをテトラと一緒に管理してるんですよ。」

 

「へ〜、まぁ信じられないけど、そう言う事にしておくわ。で、どうやって私を村まで送ってくれるの?」

 

 むむむ・・・。信用していない目です。

 テトラは直ぐに信用してくれたのに。僕、人間より魔物の方が好きかもしれません。

 

「テトラに送って貰います。彼女はドラゴンですから。」

 

「ドラゴン!?その可愛い女の子が?

 あはははははは。

 面白いこと言うわね、これ以上からかわないでよ。あははあはは・・・・。」

  

 何にも揶揄ってなんか無いんですけど。信じて貰うのって、難しいです。

 

「テトラ。」

「む、では。」

 

 ボンッと煙を上げて、少女なテトラは大きなドラゴンのすがたに戻った。これで信用せざる得ないでしょう。

 

『わかったか?』

 

 テトラも思念を飛ばしてそれを伝えます。流石の彼女ももう笑っていられないようで、静かになりました。

 

「ど、どどど・・・ドラゴン・・・・・・!?」

 

 パタン

  

 レイジアは目を見開いたまま、その場に仰向けで倒れ込んだ。

 

「なんでまた気絶するんですか!!!」

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