第24話 材料がないと無理みたいです

 ドラゴンなテトラを見たレイジアさんは、またもや気を失ってしまいました。どうしてドラゴンだって言ったのに、見た途端に気絶しちゃうんですか。

 話が進みませんけど!

 

「レイジアさん、レイジアさん!!」

 

 しっかりしてくださいよ。どうしてこうなっちゃうのかな・・・。

 でもまぁ、僕も彼女の立場なら、気を失っているかもしれませんけど。起きてもらわないと話が進みません。

 

「ん・・・。」

 

 レイジアさんの瞼が少し動きました。今度は直ぐに起きてくれそうです。

 

「もう、食べられないわよ・・・。」

 

「何を食べてるんですか!?起きてください!!」

 

 普通こんな短時間で夢なんて見ますか!?どんな神経してるんですか!?

 

「ぇ・・・・?」

 

 ようやく目を開けてくれました。


「レイジアさん、起きてくださいよー。」

 

「はっ!?ど、ドラゴン!!

 なんて、いるわけないわよね・・・。

 って、いたぁぁああああ!!!?」

  

 煩い人ですね。たしかにテトラに出会った時の僕も、同じような反応はしてましたけど。他人がしているのを見ると煩いです。テトラの気持ちが少しわかりましたよ。

 

「落ち着いてください。テトラ、ごめんけど一回元に戻って。」

 

『うむ、このままでは拉致があかんな。』

 

 再び少女なテトラに戻り、話をする。

 

「ドラゴンが人間で、人間がドラゴン!?

 訳がわからないわ???」

 

 混乱しているようですが、話を聞いてもらえそうな程には落ち着いたようです。

 

「だからさっき言ったじゃないですか。テトラはドラゴンですって。

 別にとって食べたりしませんから、落ち着いて、信じて聞いてください。」

 

 まずは信じてもらわないと、口止めも出来ない。それに、聞きたいこともあります。

 

「わかったわ。信じられないけど、貴方が言った事は本当なのね。

 と、言う事はダンジョンの方も本当の事なのね?」

 

「はい、ダンジョンは僕の能力で作ったものです。宝はありません。

 そこで質問なんですが、どこから宝の話が出てきたんでしょうか?」

 

 僕が知りたいのはそこです。何処からそんな話が出てきたのか。

 

「村に来た冒険者3人が話していたのを聞いたのよ。間違いなく凄いお宝が眠ってるって。」

 

 冒険者3人組と言うと、やはり始めてご来場頂いた方々ですかね?話しているのを聞いたって事は、直接じゃないんですね。

 どうせなら酒場とかでおおっぴらに広めて頂きたいですが、時間が解決さしてくれるでしょう。

 

「そうですか。わかりました。

 それじゃあ、これからクルルス村に連れて行きます。今度は気絶しないでくださいよ?」

 

「こ、今度は大丈夫よ。」

 

 少しばかり怒ったように頬を膨らませて、プイッと横を向いた。腕の傷が心配でしたけど、元気そうですね。これなら大丈夫そうです。

 僕はダンジョンの入り口がある渓谷へと扉を開いた。渓谷の入り口に出てくるのは、盗賊が来た時以来ですね。

 そんなに時間が経っているわけでは無いですけど、久しぶりな感じです。

 

「さ、行こうか。テトラ、よろしく。」

 

「わかった。」

 

 周囲に人がいない事を確認して、テトラはドラゴンの姿に戻る。レイジアさんは気絶する事はなかったものの、やはり驚いたように後ずさった。

 

「レイジアさん、テトラに乗りますよ。」

 

 体を伏せてくれたテトラによじ登る。レイジアさんは腕を負傷しているので、手を引っ張って支えてあげた。なんとかテトラに乗り込む事に成功して、僕は忘れずにダンジョンの入り口を閉じた。

 これで準備はオッケーだ。


「クルルス村に出発!」

 

『二人とも、しっかり捕まっているのだぞ。』

 

 僕は身体を支えられる様にレイジアさんの後ろに回った。


「スピードは、なるべく控えめでヨロシク。」

 

 前に初めて飛んだ時の様に、身体が動かなくなるほどのスピードで飛ばれては後々困る。レイジアさんも負傷しているわけだし、ゆっくり目に飛んで貰いたい。

 

『それなんだが、テト、お前のスキルで椅子なり風除けの壁なりを作れんのか?』

 

 なるほど、椅子ですか。出来るんですかね?

 

「ちょっとやってみる。」

  

 僕は《クリエイト》のスキルを使ってみた。が、何も作り出す事は出来なかった。

 ダンジョンの外では材料がないと使えない様だ。

 

「材料が無いと無理みたいだよ。」

 

『そうか、仕方がないな。それなりの速度で飛行しよう。』

 

 ダンジョンの中なら大抵の物を作れるんですけどね。外にいる時は本当に使い物にならないです。

 

「ね、ねぇ。女の子がドラゴンになったりで、驚いて聞くタイミングを逃したんだけど。さっきの部屋って何処にあったの?

 ダンジョンの入り口にあんな場所あった?」

 

 レイジアさんが振り向いて、不思議そうに質問します。その辺の事は教えてないですもんね。

 

「あれは僕のスキルで作った部屋ですよ。言えば仮想空間ですかね?

 制限はありますけど、何処からでも出入り出来るんです。」

 

「何処からでも出入り出来る空間?よくわからないけど、なんか凄そうね。」

 

 多分理解はしてもらえてないでしょうけど、無理矢理納得してくれたみたいです。レイジアさんは首を傾げながら前へと向き直りました。

 色々と理解出来ない事が起こっているわけですし、頭が追いつかないのかも知れないです。テトラに乗っているこの状態なのに、さっきより落ち着いてますし。

 

『では飛ぶぞ?振り落とされん様にな。』

 

「振り落とさないでね。レイジアさんも、しっかり掴まっててくださいね。」

「わ、わかったわ。」

 

 レイジアさんは緊張気味にテトラにしがみついた。僕は彼女の後ろでスタンバイ。非力ですが、後ろで支えられればと思ってます。

 そして、テトラはフワリと飛び上がって、クルルス村へと飛び立ちました。

 

「す、凄いわ!ドラゴンに乗って飛んじゃってる!!こんなの夢見たい!!」

 

 先程まで驚いたり気絶したりと忙しかったレイジアさんですが、とても嬉しそうな声を上げてます。僕も最初に乗った時は心臓バクバクでした。彼女も同じような気持ちなんでしょうね。

 

 しかし、少しずつスピードがあがってきました。この前よりは大分ましですけど、態勢を低くしていなければ風が当たってしんどいです。レイジアさんも黙ってしまい、態勢を低くして風を避けてます。

 この分だと30分もあれば着きそうですね。

 

「レイジアさん、大丈夫ですか?」

 

 とりあえず、確認はしておきます。だって怪我人ですし。

 

「これくらいなら大丈夫!」

 

 怪我してるのに凄いですね、やっぱり根性があります。伊達に一人でダンジョンに入るだけのことはある。

 

 と、テトラにしがみつきながら彼女を見上げるように首を起こすと、目の前にお尻があった。

 な、な・・・なんて事ですか!!

 こんな状態で村まで!?また僕の心臓を攻撃するんですか!?

 み、見るに見れないじゃないですか。僕が前に乗ればよかった・・・。

 

 彼女もまたテトラにしがみついているので、こうなる事は必然だ。しかし、テトにそこまで考えが回る頭はなかった。

 

 テトは葛藤する心に耐えながら、夜間飛行にて精神を鍛えるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る