第49話 勇者様御一行再び その2

 レイジアさんに先を越されてしまいましたが、僕もロズさんの攻撃が全くわかりませんでした。

 いつの間攻撃を?先ほど技の名前を呟いたのは分かりましたが、攻撃が全く見えませんでした。


「なかなかやるな、俺も手合わせして見たいぞ。」

 

 ノルマーが腕を組んでモニターに映るロズさんを見て言います。


「前よりも早さが格段に上がったわね。剣筋が違う。」

 

 テトラも楽しそうにモニターを見ています。


「二人とも、彼が何をしたのか見えたの?」

「テトもレイジアも見えなかったのね、彼は剣戟に魔力を乗せて高速で放ったのよ。

 真空波を作り出せるほどの剣速に魔力を乗せた事によって、より広範囲の魔物にその影響を与えたわけ。」

 

 テトラが丁寧に説明してくれますが、あの一瞬でそんな事をやったんですか?

 見えないから嘘を言われてもわかりませんが、ノルマーもうんうんと頷いています。

 

 自称最速を極めた魔王ノルマーですから、そんな動きも見えるのでしょうか?

 

「す、凄い……。」

 

 レイジアさんも感心しながらモニターを見つめています。テトラは説明してから、食後のデザートにケーキを頬張っています。

 この前買ってきて気に入ったみたいで、最近毎日チョコケーキを食べています。

 

 美味しそうに頬張っているテトラも可愛いです。僕も食べよっと。

 

 はむっ。

 

『ほら、さっさと先へ進むぞ。』

 

 ロズさんはクールに凍った昆虫型の魔物達の間を通って進んでいきます。


『ロズ、人の技を盗むのは良くないと思うぞ?』


 ラッツさんがロズさんに駆け寄ります。やっぱりラッツさんが使ってた技の名前でしたよね?勘違いしたかと思いました。


『知らん。倒したのだから別に構わないだろう。』

『そりゃそうだけど、なんかこう、歯がゆい。』


 ラッツさんが苦い顔で見ていますが、ロズさんは構わず先に進んでいきました。

 他のメンバーもそれに続きますが、リネルさんとレネルさんは表情を曇らせながら、『ひぃ〜』と言う声を上げて進んでいきます。


『がはははははは!』

 

 それを見てルーモスさんは大笑い。前にも思いましたが、ワイワイと楽しそうなパーティです。

 

『キラードッグが見えないな?』

 

 ラッツさんが前回と違う配置に少し戸惑っているようです。

 でも安心してください、割と良心的な配置になったはずですし、キラードッグもまもなくお目見えです。

 

『グルゥゥウウウウウウ!!』

 

 と、そんな事を思っているとご本人の登場ですね。

 

 あれ?

 

「ねぇテトラ、あれってキラードッグだよね?」

 

 一番最初に現れたキラードッグですが、久しぶりに見たせいか一回り大きく見えます。

 

「いや、あれはキラードッグじゃないわね。テラードッグだわ……。

 キラードッグの上位種よ。」

 

「テラードッグ?名前は似てるけど、上位種って事は強いんだよね?」

 

 キラーとテラー、ややこしいです。でもなんでそんな魔物が?

 

「同系統の魔物でも、強さの階級が違えば天と地ほども差があるわ。

 およそ五倍〜十倍、強さの桁が跳ね上がるわよ。

 テラードッグ一匹で、キラードッグが十匹束になっても敵わないわ。」

 

「そんなに……。

 でも、どうしてテラードッグなんて魔物が出てくるんだろう?捕まえた事なんてないと思うんだけど。」

 

「多分私が放出した魔力も影響を与えているかもしれないけど、一番の原因は群れ同士の争いでしょうね。

 キラードッグは群れで借りをするから、いくつかのグループが出来ても不思議じゃない。群れを統率するリーダーが、別の群れを襲って喰らった可能性があるわ。

 そして得た魔力によって進化したんじゃないかしら?」

 

 魔物同士で喰らい合って進化?そんな事もあるんですか……。

 魔物って恐ろしいです。


「確かに魔物が魔物を喰らって進化をすると言うのは立証されているな。」

 

 ベスティさんがテトラの考えを肯定します。僕らの見ていないところで、魔物達も研鑽していると言うわけですね。

 内容は考えると恐ろしい事ですけど、労せずして強い魔物をゲット出来たわけですか。ラッキーです。

 

『ぐっ!!こいつ、思った以上に強いぞ!?

 速さも力もある。普通のキラードッグじゃない。』

 

 そんな問答をしている間に、ラッツさんとテラードッグとの戦闘が始まっていました。

 現れたテラードッグは一匹、それに付き従うように十数匹のキラードッグが現れています。

 キラードッグはその戦いを見守りつつ、他の四人を牽制しています。

 

『ロズ、リネル、やれるか!?』

『無論だ。』

『まっかせなさい!』

 

 ラッツさんに言われる前に、二人が動いています。ロズさんは待ち構えるキラードッグの群れに飛び込んでいき、リネルさんは魔法を撃つ様に杖を前に掲げています。

 

 ロズさんは正しく目にも留まらぬスピードで駆け抜けて、一瞬でキラードッグを半分近く倒してしまいました。

 

疾走する雷撃ブリッツショット!』

 

 リネルさんの杖がレモン色に輝くと、瞬く間に残りのキラードッグの群れに眩い閃光が駆け抜けました。

 一拍の後、キラードッグはプスプスと小さく煙を上げて崩れ落ちます。

 

「なんですか今のは!?」

 

 よし、今度はレイジアさんの先を行きましたよ。ビックリ驚くのは僕のお仕事ですからね。


「電撃魔法よね?」

「そうだな。」

「あぁ。」

「テト、流石に今のはわかるでしょ?」

 

「へ……?あ、うん。わかってたんだけど、聞いとかなくちゃって思って、つい……。」

 

 なんでレイジアさんまでわかっちゃってるんですか?確かに閃光が走ったし、電撃魔法っぽい感じはありましたけど、確信が持てないじゃないですか!

 もしかして、四人で僕を陥れる算段でもしてるんですか?

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