第48話 勇者様御一行再び その1
ダンジョンに再びやって来たのは覚えやすい名前のラリルレロの五人の勇者パーティです。
ラッツさん、リネルさん、ルーモスさん、レネルさん、ロズさんです。どうやら今回も同じパーティで、助っ人なんかは連れてきてないみたいです。
ここ数日何組かのご来店がありましたが、ストーンタートルあたりで全滅って言うのが多かったです。
ストーンタートルがいる五階層までは、魔物のレベルを調整した程度です。
ゴブリンやスライム、コウモリの魔物から始まって、キラードッグ。キラードッグの手前に少し弱い昆虫系の魔物を配置しました。
この辺りはテトラ達の話を参考にしてます。新たに勧誘するのはとても簡単でした。
ノルマーなんかも手伝ってくれて、ダンジョンはより一層の賑わいを見せています。
ベスティさんも魔物の研究をしているらしく、博識でとても頼りになります。
今はもっぱら二十階層以降の魔物についての配置を考えているところです。
どうやら僕が勧誘した魔物、テトラが連れてきた魔物は珍しいモノがいるらしく、ベスティさんも目を輝かせて見ていました。
ただ、二百階層も作ってしまったので全部が全部見てもらえたわけではありません。
まだまだ僕が知らずに捕まえた魔物の中には、案外とんでもない奴が混じっているかもしれないです。
『さて、久しぶりにやってきたが、今日こそはこのダンジョンを攻略する。』
ラッツさんが拳を握って宣言します。僕も何処まで頑張ってくれるのか、期待でいっぱいです。
はむっ。
あ、このお肉も美味しい。
「声もここまで綺麗に拾えるのだな。こうやって見ていると、見られていた事が恥ずかしくなるな。」
ノルマーが言います。魔王でも恥ずかしいとかあるんですね。
「そりゃあ威勢が良かった割にテトラにやられたりしましたけど、進撃して行く様はカッコよかったですよ?男としてノルマーやテトラの強さには憧れますよ。」
「そ、そうか?テトラ殿には遠く及ばんが、そう言われると照れるな。」
ノルマーは照れ臭そうに頭をかくと、サラダを一口頬張りました。
「む、美味いな。」
「ありがとうございます。」
レイジアさんも褒められて嬉しそうです。さて、僕はモニターに集中しましょう。テトラやベスティさんもモニターに食いつく様に見ています。
『ロズ、リネル援護を頼む。ルーモスはレネルを頼んだぞ。
レネルもサポートをよろしくな。』
勇者のラッツさんがそれぞれに指示を出して、勇者様御一行のダンジョン攻略が再び始まりました。
まずはゴブリンとスライムゾーン。
ここは難なく突破。
そりゃそうですよね。前回も同様でしたし、躓くわけがありません。
「この人たち、強さのレベルが上がってるわ。前に来た時より明らかに動きがいい。」
テトラは彼らを見ながらじっくりと観察しています。ゴブリンやスライムをなぎ払っただけですが、そんな事わかるんですかね?僕には前回と同じように圧勝しているようにしか見えないのですが。
「そんなに違うの?」
「えぇ、動きの無駄が減っているわ。現に、ほとんど歩幅が変わってない。
草を掻き分ける程度の動作で倒したわ。
これは、前回来た時よりも期待できるわね。」
テトラの予想、今のところ全部当たってるんですよね。先に言われるのは面白みに欠けたりする時もありますけど、それを思って見ているのも楽しいって思える様になってきました。
「僕にはわかんないや。」
元々僕より格段に強い人たちです。そこから更に強くなったと言われても、凡人の僕にはさっぱりです。
「彼らはこのダンジョンは二回目なのか?」
ベスティさんが飲み物を口にしながら聞きました。
「そうですよ。前に一度ご来場頂いて、その時は七階層まで進んだんですよ。」
僕の配置の悪さの所為で、命を危険に晒した事は伏せておきましょう。
「ま、それはテトの所為だけどね。」
「テ、テトラ〜。そんな事まで言わなくてもいいじゃないか。」
僕の配置やトラップの所為ってのはわかってますけど、わざわざ言わなくてもいいのに。
「ごめんごめん。でも、今回は落とし穴はやめたから大丈夫じゃない?
軒並み低階層のトラップは無くしたわけだし。」
「たしかにあのトラップは凶悪だったな。」
「ノルマーまで……。」
「あんなもの人間が食らっていたら間違いなく死んでいるぞ?少し度が過ぎていたな。」
まぁ、見ていて凄いものを作っちゃったなとは思いましたけど。そんな風に言わなくたっていいのに。
今回はそのトラップを一新しています。ベスティさんのアドバイスも貰って常識の範疇で作ったので、ある程度バランスは取れているはずです。
『『ひぃ!!?』』
モニターから悲鳴が上がりました。みると、リネルさんとレネルさんの二人が固まっています。
モニターには新たに勧誘した魔物達が
キラードッグの前に彼らとご対面ですね。
『なっ!?前はこんなやらいなかったぞ?
仕方ない、リネル!魔法で一層してくれ!』
ラッツさんが叫びます。
『む、無理よぉ!虫は無理って言ってるでしょ!!』
リネルさんが高らかに声を裏返して返答しました。そういえば、あの姉妹は虫が苦手なんでしたね。
前回もマッドアントで同じような事になってました。
『いい、俺がやる。』
口数少なくロズさんが前に出ます。相変わらずカッコいいですね。
『
たしか、前回一直線に敵を凍らせてしまった技です。洞窟内に犇めく虫達、その間を青い光が微かに輝いて駆け抜けていきます。
ロズさんはその場から動いていません。というか、武器も腰に刺したままです。
《ピキピキビキ》
いつ攻撃をするのかと見守っていましたが、一瞬にして目の前の敵が見事に凍りつきました。
「えぇ!!いつ攻撃したの!?」
と、僕より先にレイジアさんが叫びました。
それは、僕のセリフですよ!!
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