第21話 どんだけデカイんですか!?
レイジアさんを安全な管理室に連れて来たのはいいけど、手当をしようにも道具も何もありません。
さっきは無我夢中で助けに行っちゃいましたけど、後のことなんて考えてませんでした。
とにかく奇跡的にも助けられて良かったです。《クリエイト》、初めてこのスキルに助けられた気がします。
ダンジョンを作るだけじゃなかったんですね。ダンジョンの外でも同じ様な事が出来るんでしょうか?
まだテトラとの約束の時間まで40分くらいありますけど、このまま様子を見ましょうかね。そこまで傷は深くない様ですし。
レイジアさんはおかしな人でしたけど、何があるんでしょうか?度胸は凄いんですけど、命を賭けてまで宝を取りに行く理由って何なんですかね?
僕にはわかんないです。命より大事な物なんて、まだないですから。
これからも、そんな物が出来るかなんてわかりません。
とりあえず、僕も横になりましょう。流石に疲れましたし、身体が痛いです・・・。
僕はモニターに背を向けて、レイジアを眺めました。別にやましい事なんて考えてないですよ!?
モニター越しに見た人を、こんな間近で見るのは初めてですし。なんだか新鮮です。
盗賊団もいましたけど、彼らは石になってましたしね。そういえば、彼らはあれからどうしたんでしょう。
姿は見せないですが、ダンジョンの攻略は諦めたんでしょうか?
そういえば、ストーンタートルの残骸がとなりの倉庫に置きっ放しですね。後で5階層に戻しておきましょう。
ん〜、なかなか起きませんね。そろそろテトラとの約束の時間にもなりますし。一旦テトラを迎えに行きましょう。
「い、いてててて・・・・・。」
痛む身体を起こして、テトラの棲家に向けて扉を開く。様子を伺いながら扉を潜ると、ドラゴンなテトラが待っていた。
「あれ、もしかして待った?」
テトラは丸まって待っています。案外早く用事が終わったんでしょうか?
『ん、テトか。思ったより早く終わってな。少しばかり待っただけだ。
我が時間を指定したのだ、気にすることはない。』
テトラはムクッと起き上がって、僕を見下ろした。
『何か、変わったことは無かったか?』
いきなり良い質問を頂きました。変わった事しかないですからね。
「えっと、実は・・・。」
僕はこの二時間で起こった出来事をテトラに報告した。勝手に手を出した事、怒られちゃうかな?あまり関与しないほうがいいって、テトラは言ってましたもんね。
それも僕とダンジョンを思っての事だし、怒られても文句は言えませんね。
『なんて無茶をしたのだ!キラードッグ一匹とは言え、お前では荷が重過ぎるぞ!?
だが、無事で何よりだ。
保護した者も、我が診てやろう。取ってきた物も役に立ちそうだしな。』
怒られるかと思ったけど、それ以上に僕の心配をしてくれているみたいです。テトラはどこまでも優しいですね。
でも、取ってきた物って一体なんでしょう?
「何を取りに行ってたの?」
「これだよ。」
テトラはボンッと煙を立てて少女の姿になると、一粒の玉の様なものを取り出した。
一見ビー玉の様に見えますが、テトラが差し出した時に玉はプルンと動きました。まるで小さなスライムの様です。
「それは?」
「これは月の雫と呼ばれる回復アイテムだ。我の住むヴォルガ山脈の山頂にある木から、夜にだけ取れるのだ。
1日に2、3粒しか取れんが、大抵の病気や怪我は治せるぞ?
今夜は2つ分とれたからな、まずはお前が使うといい。残るは保護した者に使ってやれ。」
まさか、僕の身体を回復させるために探してきてくれたんですか!?
「ありがとう!!」
僕は思わずテトラの手を握りしめました。他人にこんなに気遣ってもらったのは初めてです。
「べ、別に大したことではない。お前が毎回何かする度に動けなくなってはいけないと思ってな。それに、ペンダントのお返しだ。
ペンダントだが、ドラゴンに戻る時に外し方がわからず苦労した。
すまんが、後でまた付けてもらえるか?」
テトラは照れ隠しする様に後ろを向いて、ペンダントを付けて欲しいとジェスチャーをした。
少女なテトラがすると、ほんと可愛いですよね。
「わかった。じゃあ帰ったら付けるよ。
でも、帰りはドラゴンの姿で入れるサイズの扉が必要なんじゃ無かったの?
取ってきたのはこれだけ?」
テトラは出かける前に、確かそんな事を言っていたと思います。このアイテムだけなら、そんな必要ないですよね?
「あぁ、月の雫はいくらあってもいいからな。木を丸ごと持ってきたのだ。
土も付いているから、相当なサイズだぞ?管理室にも設置するスペースを確保してくれ。」
なっ!?
木を丸ごと引っこ抜いてきたって事ですか!?
「ど、何処にそんな物が!?」
「あぁ、ここだと手狭だからな。外に置いてきたよ。」
この棲家でもドラゴンが入るサイズですよ?どんだけデカイんですか!?
身体を引き摺って外に進むと、テトラにヒョイと抱えられた。
「わっ!?」
「まったく、見ていられんよ。」
恥ずかしながら、本日二度目のお姫様抱っこです。男女逆ならカッコいいんですけどね・・・。
「こ、これ!?このデカイのがその木なの!?」
テトラに連れて行かれて、入り口横に置いてあった木を見て愕然とした。
その高さは優に20mを超えそうなほど大きく、横には同様に長い枝が伸びている。
そんな大木が、少し斜めになって岩肌にもたれかかっていた。
「そうだ。マザームーンと呼ばれる大樹だ。まぁ、ここまで大きく育ったのは我の魔力の影響もある。
我が所有しても問題なかろう。」
「いや、そうじゃなくて・・・どうやったはこんだの!?」
「どうって、こうやってだが?」
少女なテトラは僕を下ろして大樹マザームーンへ歩み寄り、根っこを掴んでその巨木を持ち上げた。
遠目からみると、蟻が人間を持ち上げている様なそんな感覚。
テトラって、おかしいですよ。
それ、1トンや2トンのサイズじゃないですよ・・・。
僕がおかしいんですかね?世界の常識がわからなくなってきます。でも、人間には到底出来そうな気はしません。
「そ、そんな事出来るんだね・・・。
とりあえず、扉を開いてから、管理室を広げてくるね。」
横幅は大丈夫だけど、天井の高さがまったく足りません。
テトラに合わせて10m以上高くしたのに・・・。
その前に、僕はテトラから貰った月の雫を飲んだ。すると、たちまち身体の痛みが消えていく。
すごい効果です!こんな世の中にはアイテムがあるんですか。
「テトラ、すっかり治っちゃったよ!本当にありがとう!!」
「それは良かったよ。」
僕は軽くなった身体で管理室に戻り、部屋を更に大きくしてからテトラの所へ戻った。部屋に居るレイジアさんは、まだ眠ったままだった。
「さ、準備できたよ!」
僕の掛け声を合図に、テトラが再び巨木を抱える。そして大きな扉の中に入っていった。
「木はここに置いて。」
木の根が隠れるくらいの大きな穴を床に開けて、テトラに置き場所を支持する。
支持に従って、テトラはヒョイとその巨木を置いた。それと同時に、ズヴゥゥンと大きな音が部屋の中に響いた。
「ん・・・・?」
今の音で、どうやらレイジアさんが起きちゃったみたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます