第39話 魔王さんがやってきた その2

『がははははははは!!いつの間にこんなダンジョンが出来たのだ!

 最奥に住まう者を倒して、この俺が支配者となってやろう!!』

 

 魔王さんは楽しそうに草原を駆けていきますが、どうやらダンジョンに住むことが目的みたいです。

 どうしたものでしょうか?まさか魔王が来るなんて思ってもいませんでしたし、そもそもダンジョンに住み着こうとする人が現れるなんて考えもしませんでした。

 何故そんな考になるのでしょう?

 

「テトラ、魔王さんがダンジョンの主になろうとしてるんだけど、どうしたらいいと思う・・・?」

 

 僕にはどうしようも出来ません。出来るとすれば、ニセの扉を作って何処かへ帰って頂くくらいですかね。

 

「あまり好ましくない客ね。奴は倒した魔物の魔力を喰いながら進んでいるから、このまま放っておけば魔物が復活しなくなっちゃうわよ?」

  

 え!?それは困ります。せっかくテトラが魔物を自動復活出来るようにしてくれたのに、補充なんかをまたやり直さないといけないじゃないですか!

 

「何やら面白そうな話をしてるじゃない。」

 

 後ろからベスティさんがやってきて、モニターを覗き込みました。


「あれ?荷物の整理とかはいいんですか?」

 

 てっきり運んだ荷物の片付けをすると思ってました。あと、面白い話ではありませんでしたよ?

 どちらかといえば一大事、大変なお話です。

 

「そんなものは後でいいんだよ。今魔王種が来たと言っていたが、コレがそうなのか?」

 

 ベスティさんは、モニターに映っている黒いマントを羽織った魔王を指差します。


「そうらしいです。」

 

 まぁ、本当に魔王なの?って感じですけど、テトラが言うんですから間違いないと思います。テトラって、嘘とかついたことないですしね。

 

「どうしようか・・・。」

 

 でも、このままだと魔王にダンジョンの面々がどんどん倒されちゃいます。


「仕方ないです。偽の扉を作って、外へ帰って頂きましょう。

 魔王が来るなんて反則ですよ。」

 

 次の階層に先回りして扉を作り変えてしまえば、魔王に出くわさずにお帰り頂くことは可能でしょう。

 僕のダンジョンで暴れ回るのはやめていただかないと。

 

「いや、私が行こう。」

 

 立ち上がった僕を止めるように、テトラが後ろから肩を叩きました。

 私が行くって、闘うつもりですか?

 

「まさか、闘うの?」

 

 いくらテトラと言えども、魔王なんてものを相手にさせられませんよ。だって魔王ですよ?

 有名な勇者が倒したりするような奴です。英雄伝にも、過去壮絶な闘いがあったと記録されてますし、伝え聞く魔王は災厄の象徴。

 現代にどんな魔王が息を潜めているのかは良く知りませんが、史上に登場するのはとんでもないモノばかりです。そんなモノにテトラと言えども勝つことができるんでしょうか?

 

「心配しないで、アイツは魔王種とは言えその中でも下っ端よ?それに、最近は人も魔物も軟弱になっているからね。

 今の世の中に、私に勝てる魔王なんていないわよ。」

 

 テトラは僕に向かい合って、自信満々に腕を組んでいます。魔物を簡単に薙ぎ払っていくあの魔王が下っ端?

 この言い方だと、他にも魔王って沢山いそうに聞こえるんですけど・・・。でも、最近の人や魔物が軟弱って、千年前はどんな時代だったんですかね?

 

「本当に大丈夫なの?」

 

 別にテトラの事を信じないわけじゃないんですけど、送り出す僕は心配で仕方ないです。もしもの事があったらと思うと、お願いするのに踏ん切りがつきません。

  

「大丈夫だ。それに、ようやく私の出番が回ってきたのよ?200も階層を作って、私の出番を無きモノにしたのはテトじゃないの。

 たまには遊ばせてくれてもいいんじゃない?」

 

 なんだか凄く楽しそうですけど、本当に大丈夫でしょうか?加えて若干嫌味を言われた気がします。

 でも、テトラの為に作った階層もそのまま放置してますし、使わないと勿体ないですかね?

 テトラはもう行く気満々ですから、止めたって跡が怖そうです。上手い言い訳も思いつきませんし、ここはテトラに任せてみましょうか。

 

「わかったよ。でも、無茶はしないでね?」

 

「わかってるわよ!テトに心配かけるような事はしないわ。」

 

 男の僕が何も出来ないのは、とても歯痒いですけど。テトラを信じて見守りましょう。

 

「じゃあ、テトラのエリアに向けて魔王を送り込むから、テトラはそこで迎え撃ってね。

 僕は扉を作り変えてくるよ。」

 

「わかった。テトも、無茶な事はしないでね?」

 

 大丈夫です。僕は逃げる事に関しては自信を持ってますから。伊達にテトラの住んでた山を踏破してないですよ。

 

「うん。行ってくるね。」

 

 僕は二十階を目指して、管理室から移動しました。今魔王が何階層にいるのかわかりませんが、中ボスのいる20階層よりも手前で在るのは間違いありません。

 

「クリエイト!」


 19階と20階を繋ぐ通路を、強制的に201階層の『テトラのエリア』へと繋ぎかえます。

 19階から降りてくる階段は、これで201階層への直通となりました。僕は魔王が来る前に、さっさと管理室に戻る事にします。

 

 

 

「ただいま〜。」

 

 管理室に戻ると、待っていたテトラが駆け寄ってくる。


「おかえり。早かったわね!」

 

 女の子に出迎えられるなんて、ほんと幸せです。しかもこんなに可愛い女の子ですよ?世の中の男子に自慢してやりたいです。

 

「そりゃあ、ちょっと通路を作り変えただけだからね。すぐに戻ってくるよ。」

 

 さて、魔王はどこまで来てますかね?相変わらず凄い勢いで突き進んでいます。

 近づく魔物は少ないですが、ワザワザ魔物を自分から倒しに行ってますよ。それ以上倒さないでいただきたいんですけど・・・。

 

「テト、魔王の奴が私のエリアに入ったら、通路を塞いで隔離してほしいんだけど。お願いできる?」

  

 テトラが不意に提案してきましたが、どう行く意味でしょうか?わざわざ入り口を塞ぐ必要なんてあります?

 

「それは出来るけど、何で?」

 

 考えてみましたけど、よくわかりません。だって、追い返すのならそんな事をする必要ないですもん。

 塞いじゃったら何処にも行けないですよ?


「何故って、途中で逃げられては面白くないからよ。折角の出番なんだから、タップリと遊んであげないとね。

 それに、二度とこのダンジョンで悪さをしないように躾けてくるわ。」

 

 テトラは凄く楽しそうに、不敵に妖艶な笑みを浮かべていた。

 可愛いのに、怖いです!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る