第35話 サン・サンクロスへ行こう その4
「早く中身を見せてくれ!」
ベスティさんに案内されて、店の裏口から大きなシャッターをくぐって中へ入りました。店内とは違ってだだっ広い空間です。ドラゴン姿のテトラでも収まりそうですね。
それにしても、ベスティさんのテンションが上がり過ぎていてちょっと怖いです。最初に話をした時と人格が少し変わってませんか?
「テトラ、荷物を降ろしてくれる。」
テトラはそこへ背負っていた袋を降ろした。兎に角、素材を見てもらってさっさと引き上げましょう。
「クリエイト。」
僕は袋にしていたヘルダイバーを元の形へと戻して荷ほどきした。大量の素材が山積みになって、端の方から転がり落ちてくる。
「何だ今のは!?魔法?錬金術か!?いや、錬金術は高度な術式と魔法の融合。展開するには力の循環を促す魔法陣が必要のはず!
素晴らしい!なんて能力だ!!」
ただクリエイトで作り直しただけなんですけど、偉く喜んでいただいたようです。こんな反応をされるのは初めてなので、どう対応すれば良いのかわかりません。
「えっと、僕の授かったスキルです。」
「スキルだと!?物質の構造を変化させるなど、なんと言う素晴らしいスキルだ!!
君!是非私の助手に、いや、協力者になってくれ!!」
凄いグイグイ来られますけど、助手?協力者って何のですか?
勢いが凄すぎてテトラに目で助けを求めますが、テトラは何故か視線を外してしまいました。
な!?テトラ!!僕を見捨てるんですか!?
「と、兎に角先ずは素材を買い取ってくださいよ!!」
どうしようもなくなって僕が声を張り上げると、ベスティさんはピタリと動きを止めた。
「そうだな。それも私には必要な事だ。
よし、先ずは持ってきてくれた素材を見せてもらおう。」
さっきまでの勢いを殺して、キリッと素材の方に向き直り一つ一つ物色し始めた。
持ってきたのはキラードッグ、ヘルダイバー、マッドアントから取れる素材。
それからテトラの持っているストーンタートルの爪だ。とりあえず説明しておいた方がいいかな?
「凄いな、キラードッグにマッドアント、それにこれはヘルダイバーの蔓か?本体の球根まであるじゃないか!
その大きな岩は、まさかストーンタートルの物じゃないのか!?君たち二人で集めたと言うのか!?」
一通り目を通して、ベスティさんは持ってきた素材を全て言い当ててしまいました。あんな部位だけでよくわかりますね。
僕なんか見てもさっぱりわかりませんよ?ヘルダイバーは丸ごと持ってきましたから、そうでもないかもしれませんが・・・。
ダンジョンにくるお客さんよりよっぽど博識な感じがします。
「よくわかりましたね。言われた通り僕たち二人で回収した物です。ストーンタートルの素材はテトラが剥ぎ取りましたけど。」
嘘は言ってない。間違いなく二人で『回収』したんだから。倒したとは言ってないです。
テトラなら簡単に倒しちゃうと思いますけどね。
「そうか。量もあるし鮮度もいい、ちょっと金額は計算させてくれ。
他には何かないのか?」
一体幾らになるんでしょうか、換金が楽しみです。っと、そう言えばもう一つ持ってきたんでした。
小さいからポケットに入れてましたけど。
「もう一つありました。これ、黄金蟲の卵です。」
最初の冒険者さんが落としていったものですけど、ようやく売る時が来ましたね。かなり高価なものだと聞いてましたから、これの金額が一番楽しみかもしれません。
「おぉ!!良いものを持っているじゃないか!これ一個で金貨5枚はするぞ!」
き、金貨5枚!?
銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨1000枚で金貨1枚、そんな金貨が5枚!?
そんな大金貰っちゃっても良いんでしょうか!?
「そ、そんなにするんですか!?」
「嘘は言っていない様ね。」
テトラが横からフォローが入りました。そう言えば、目を見れば嘘かどうかわかるんですっけ?
初めて会った時に言ってましたもんね。
「おいおい、私は取引で嘘なんてついたりしないわよ。見合ったお金を支払うわ。」
ベスティさんは変わり者ですけど、偏屈ものではない様です。案内所で教えてもらえるだけはあって、信用もあるのでしょう。
今一番気になるのは、何故素材をそんなに集めているかという事です。さっき助手とか協力者とか言っていましたけど、ただ物を売り買いしているだけじゃないんでしょうか?
「さてと、キラードッグの牙と爪が36体分、それにマッドアントの牙が87体分と蜜が96リットル、ヘルダイバーは球根が15に蔦が約260キロ、そしてストーンタートルの爪が二つ。それから黄金蟲の卵。
あんたらが相当な実力者である事と、これから付き合いを期待して少し高めに買い取らせてもらおう。
締めて金貨14枚と銀貨500枚で買い取ろう。」
金貨14枚と銀貨が500枚!?大変です!大金ですよ!!たった数日の稼ぎでなんて事ですか!?こんな事ならもっと早くに売りにくれば良かったです!!
そうすれば美味しい食事にふかふかなベット、さらには好きな本もたくさん買えたじゃないですか!!
というか、目測でそこまで正確に数量を把握出来たんですか!?
「内訳がいるかい?」
嘘じゃなければ別に内訳なんて必要ないです。テトラを見ましたが、特に何も言わないので嘘では無いんですね。
「いえ、内訳はいいです。」
「そうか。では精算をするが、なに分量が多すぎる。少し運ぶのを手伝ってくれないか?」
ベスティさんに頼まれたので、僕は再びヘルダイバーを袋に変えてテトラに素材を運んでもらった。
向かった先は隣の部屋だけど、何やらいろんな物が置いてある。一体何をする部屋でしょう?
「そこの隅に置いてくれると助かる。」
ベスティさんに指示された場所に荷物を置いて、再びヘルダイバーを元の姿に戻しました。
「やはり何度見ても面白い能力だな!他には何かできるのか?」
「いえ・・・僕は物を作り変えるくらいしか出来ないですよ。」
とても仮想空間を作れるなんて言えません。ベスティさんの勢いが増すのが怖いです。
「ふっ、嘘だな。」
「なっ!?」
ベスティさんが僕をマジマジと見つめながら不敵に笑います。
「こちらに嘘の取引をするなと言いながら、自分は嘘をつき通すのか?そんな事はまかり通らんと思うが?」
「な、何故嘘だと思うんですか・・・。」
こんな事を言うのも何ですけど、僕は昔から嘘が下手だと言われてきました。でも、そんなにおかしな素ぶりはした記憶がありません。
「科学者としての勘、加えて女の勘というやつだな。」
か、科学者!?見た目は確かにそんな感じがしますけど・・・。
「何でも屋の店主じゃなかったんですか?」
でも、言われてみればこの部屋、なんか実験とかしてそうな感じですね。よくわからない道具なんかが置いてあります。
そして、何故か少し薄暗くて怖いです・・・。
「何でも屋は事のついでさ、本業は科学者だよ。この店をやっていると自然と色んな物が揃うんだ。」
なるほど、それで何でも屋ですか。店の中が乱雑なのも、本気でお店をやっていないからなんですかね?それとも性格?
まぁそんな事よりも、嘘を誤魔化すのは難しいという事が問題です。それに、こちらだけ嘘を突き通すのは性に合いませんし・・・。
「仕方ないですね。お互いフェアがいいですし。でも、他言無用でお願いしますよ?」
「テト?」
テトラは心配そうにしてくれてますけど、多分納得してくれると思います。優しいですからね。
「わかった。私は約束を守る主義だ。」
ま、ダンジョンからは程遠い場所ですし、レイジアさんも知っていますから、一人秘密を知ってる人が増えても今更ですね。《二人目の内通者》と言った所でしょうか?
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