第36話 サン・サンクロスへ行こう その5

 僕はベスティさんへ自分の能力についてを語った。仮想空間が作れる事を。

 その過程で、ダンジョンについても教えた。ベスティさんは終始興味津々で、『おぉ!』とか『なんだと!!』とか驚いていました。

 こうして、僕の事を知る人がまた一人増えた。ただ、テトラがドラゴンである事は内緒にしてますよ?知ってるのはレイジアさんだけです。

 

「それにしても凄い能力だな。私も一度連れて行ってくれないか!?いや、寧ろそこで研究をさせてくれ!!」

 

 え?何って!?

 一度連れてくのは別に構いませんけど、ダンジョンで研究ですか!?

 

「それに、君はまだ隠している事があるだろう?彼女について。」

 

 ベスティさんはまたもニヤリと不敵に笑って僕に詰め寄ってきます。テトラについて隠してる事って、まさかドラゴンだって気付いたというんですか!?

 

「まさか、気づいていたんですか・・・。」

 

「あぁ、君たちの態度を見ていればわかるよ。それに、私の授かったスキル《解析》の前では隠し通す事は出来ないさ。」

 

 《解析》ですか、テトラの人並みならぬ魔力なんかもお見通しって事ですか?僕の態度からわかるなんて、どんな態度だったんですかね?

 これからは気をつけないと・・・。

 

「凄いですね。確かに、テトラはドラゴンです。他にはもう何も隠していませんよ。」

 

 完敗です。なんでそんな事までわかっちゃうんですか?反則ですよ・・・。


「なにぃ!!ド、ドラゴンだと!!?何だそれは、彼女は人間ではないと言うのか!何という事だ!!是非!研究させてくれぇ!!!」

「え!?」

 

 お気付きでない!?だってさっきの感じは、明らかにそこの事じゃないんですか!?他に隠してる事ってありました!?

 

「そんな事実は全く気がつかなかったよ。もはや人智を超えているな。

 私が言いたかった事は君の彼女へ対する気持ちさ。彼女と話をする度に上がる心拍は一つの事実を伝えてくれていたぞ?

 君が彼女を」

「わーわーーー!!!」

 

 そっちですか!?そんな事を言わないで下さいよ!!!

 

「テトが私を?」

「ななな、何でもないから!」

 

 テトラがこういう事に敏感でなくてよかったです!そんなお節介は入りませんから!

 確かにこの所テトラが可愛すぎて、さらに言葉遣いまで女の子っぽくなっちゃったので、ドキドキしっぱなしではあります。

 でも、可愛い女の子を前にしたら誰だってそうなるでしょ?仕方ないんですよ!

 

「いや〜、それにしても面白い!やはり私を君の作ったダンジョンとやらに連れて行け!勿論素材の代金もしっかりと支払うぞ?

 何ならもう少しサービスしてもいいくらいだ!金貨を1枚追加しよう!!」

 

 金貨1枚追加!?な、何て誘惑・・・。僕がお金を欲しい事もお見通しって事ですか。

 別に悪い人ではなさそうですけど。

 

「まぁ、もうテトに任せるよ。」

 

 チラリとテトラに目で助けを送ったが、肩を上げて投げ捨てられた。

 そんなぁ、僕頼まれると断れないタイプなんですけど・・・。任せられたら答えなんて決まってます。

 

「わかりました。でも、ダンジョン経営の邪魔はしないでくださいよ?」

 

 こう言うしか出来ないです。はぁ、勢いに負けてしまいました。

 それに、テトラがドラゴンだって事を自分から漏らしてしまって、テトラにも申し訳ないです。

 ただ、ダンジョンに来てくれるなら他言出来ないでしょうし、その点については安心ですかね?

 

「勿論だ!約束しよう!!

 それと・・・君たちの仲も邪魔はしないよ。私も異種族の恋愛と言うのは興味があるのでな。」

  

 ベスティさんは僕に聞こえる程度に近づいて囁いた。

 

「だから、そんなんじゃないですって!」


 

 

 

 

 

 〓〓〓

 

 

 

 

  

 ベスティさんはこれから移住の準備をするとかで、僕はテトラと買い出しに出てきました。そろそろダンジョンを離れて一時間半くらい経ちます。ちょっと心配ですね。

 

「ゴメンねテトラ、まさかこんな事になるなんて。」

 

 トボトボと肩を落として、本屋さんへと向かってます。


「構わぬ・・・ないわよ。彼女は悪では無さそうだしね。

 しかし、これから賑やかになりそうね。」

「確かに・・・。」

 

 初めて会うタイプの人でしたね。煩いというか、大胆というか。テトラはどちらかといえば静かなタイプですしね。

 一体どうなる事やら。

 

「あ、本屋さんに着いたよ。」

 

 ベスティさんに教えてもらった本屋さん『本の虫』は、色んなジャンルの本が揃っているとの事。特に入って右側の棚がお勧めだと言っていましたけど、一体どんな本が置いてあるのやら。

 先に素材を買い取って貰ったので、今お金はたっぷり持っています。面白そうなら大人買いしてもいいかなって思ってます。

 

 お店の中はベスティさんのお店と比べ物にならない程綺麗です。と言うかコレが普通ですね、あのお店は異質でした。

 えっと、右側の本棚・・・コレだな。ジャンルは・・・・

『異種族恋愛物:フィクション』

 

 

「何が置いてある棚なの?」

 

 文字の読めないテトラが首を傾げますが、言えませんよこんなの!ベスティさん、謀りましたね!!

 

「け、研究関係みたいだね。僕たちは読まなくていいかも。」

 

 とにかく、別の本を探しましょう!

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