第16話 見えちゃいますよ!?
摩訶不思議な女性がダンジョンから去って行って、僕は少しばかりの間モニターを眺めて横になっていました。
しかし、その後は誰もやってきません。
管理室の天井から見える窓には、オレンジ色に染まり始めた空がその姿を映しています。もうすぐ日が沈みそうですね。
誰もやってこない様ですけど、素材でも売ってきましょうかね?
「ゔっ・・・・・!?」
その場から起き上がろうとして、身体中に痛みが走った。そういえば、重たいものを運んだので動けないんでした・・・。
おかしな女性の奮闘に集中していたので、すっかり忘れてました。
「どうしたのだ?」
テトラが心配そうに顔を覗かせますが、近くで見るとドキッとします。
ずっとそこにいるのに、気を抜くとダメですね。直視するのは慣れてきたと思ったんですけど、そう簡単にはいかない様です。
「ちょっと動こうとしたら、身体が痛いのを忘れてた。もう筋肉痛きてるよ・・・。」
「何処かへ行きたかったのか?」
テトラは僕の目の前でしゃがんで、その膝を抱え込む。
テ、テ、テ、テトラさん!!?
長くて白いワンピースの裾から、僕が見てはいけない物が見えそうですよ!!
僕は慌てて目を閉じて、手を伸ばしてテトラへ注意を呼びかける。
「テトラ!そ、そんなところでしゃがみこんだら。み、見えちゃいそうですよ!!」
少女なテトラでも顔を見て話が出来るようになったとは言え、近くで見るだけでドキドキするのに・・・。
そんなもの見ちゃったら僕はどうなってしまうか分かりません!多分出血多量で死んじゃいますよ!?
「見えそう?」
ドラゴンのテトラには伝わらないんですか!?そんな、僕だけ一人でオロオロとして、余計に恥ずかしいですよ。
でも、見るに見れません!!
「そ、その。裾の中が見えちゃいそうです!!」
ここまで言っちゃって大丈夫何でしうか!?村に住んでいるときに、同級生が似た様なことをして平手打ちを食らっていました。
もしテトラに平手打ちなんかされた日には、僕の胴体と頭がサヨナラばいばいしちゃいそうです!!
「なんだ、人間は足の付け根を見るのはいけないことなのか?すまんな、我にはそう言ったことはよく分からんのだ。」
テトラはワンピースの裾をたたんで、中が見えない様に座り直した。
「これで良いのか?」
テトラに言われて恐る恐るそちらを見ると、裾が折り返されている。ちゃんと口で伝えないと伝わらないですね。
あのままだと、絶対見えちゃってました。
しかし、これが恥ずかしくないのならドラゴンにとって恥ずかしい事って、あるんでしょうか?
そう考えてみると、野生のドラゴンて服なんか着てないですもんね。人間で言えば裸の状態です。案外人間が感じる様な羞恥心なんてものはないのかもしれません。
一人ドキドキしてしまいました・・・。
「ごめんね。人間は足の付け根って、他の人には見せないんだよ。恥ずかしいから。」
テトラにも知らない事ってあるんですね。そういう人間としての常識も、気付いた時には伝えていかないとですね。
「人間は変わっているのだな。」
僕からすれば、ドラゴンも変わってるって思いますよ?考え方次第でどっちにも取れますよね。
僕も、ドラゴンの常識を知っていかなくちゃですね。
「それで、どこに行こうとしていたんだ?」
「あぁ、集めた素材を売りに行こうかと思ったんだけど、身体が治ってからにするよ。まともに動けないし。」
そうでしたね、この話の途中でした。まともに動けるようになったら、テトラについて来てもらいましょう。
もし入手経路を疑われたりした時に、僕だと実力が無いので疑われそうです。テトラが倒して手に入れた事にすれば、実力的には可能でしょうし怪しまれにくいと思います。
「おぶってやろうか?」
「いやいや、急がないから大丈夫。その代わり、売りに行く時は一緒について来てね!」
テトラと街に行く約束をした。ある程度のお金が入ったら、美味しいご飯をご馳走してあげようと思う。
それから、布団を買いたい。硬い床で寝るのは、やっぱり身体に良く無いよ。
あったかい布団に包まれて眠りたいな。
「勿論だ。我も人の住む街並みを拝見してみたいしな。実は、街の中へは入ったことがないのだ。人の常識というのがわからないものでな。」
よかった。一緒に付いて来てくれるみたいです。
でも意外ですね、こんなに生きているのに人間の街に行ったことがないんですね。
1000年を超えないと人間の姿にはなれないんですっけ?なら機会があったのは70年くらいか。
それでも、行こうとは思わなかったのかな?
「テトラにも、初めての事があるんだね。そういえば、テトラの事を話してる途中だったよね?
テトラの事、聞かせてほしいな。
僕の話なんかより、色んな事があったんでしょ?」
そうです、テトラの話をまだ聞いていません。動けないから、というわけでは無いですけど、気になりますよね。
ドラゴンの事ってだけでも、普通の人は聞くことなんて中々出来ないんです。テトラの話となれば、僕だって興味いっぱいですよ。
「そうだったな。だが、我の事なんて知っても、何にもならんぞ?」
「そんな事ないよ、僕はテトラの事を知りたいんだから。」
テトは真っ直ぐに、少女なテトラの顔を見つめた。テトラも少し照れた様に視線を外したが、ゆっくりと自分の事を語り始めた。
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