第27話 勇者さま御一行がやってきました その2
『コイツは、まさかヘルダイバーか?』
『ヘルダイバー?』
六階層へ入って早々、ウニョウニョとした植物を見て、後ろのイケメンな騎士が言い当てました。どうやら勇者の人はヘルダイバーを知らないみたいです。
『あぁ、植物の魔物の一種だ。獲物に絡みついて、生命力を吸い取る。本体は地中に潜っているから、アレを切ったくらいじゃあ倒せない厄介なやつだ。』
騎士の人は博識ですね。しっかりと情報を持っているみたいです。知ってると言うことは、ウィザードのリネルさんがいるから炎魔法で楽勝ですね。
『じゃあどうすればいいんだ?』
『弱点は炎だ。大火力で一気に焼き払えばどうと言うことはない。』
流石です。騎士の人が正解を導きだしました。
『じゃあ、私の出番ね!一気に焼き払うわよ!!』
リネルさんが杖を構えます。やはりここも簡単に突破されそうですね。
次の七階まで一直線で進んでくれそうです。
『まって姉さん。』
突然、ヒーラーの人がリネルさんを制止しました。一体どうしたのでしょうか?と言うか姉妹だったんですね。
『何?レネル。』
レネルさん!名前そっくりです。というか、よく見たら確かに顔も似てますね。
『こんな狭い洞窟で炎魔法を使うことは、危険だと思います。空気中の酸素濃度が低下するし、下手をしたら一酸化炭素で全員あの世行きですよ?』
な、なんて事ですか!?狭い洞窟って、そんな危険があったんですか?別に故意に狭く作ったわけじゃないですよ?
「なるほどな、ヘルダイバーを炎で倒すと自滅する仕掛けとは、テトは中々頭が回るのだな。我には考えもつかなかったぞ。」
偶然です偶然。二重トラップとか貼る様な頭は僕にはないです。それに、一酸化炭素ってなんですか!?
「ぼ、僕がそんな事を思いつくわけないじゃない。」
「謙遜するな。お前は凄いやつだよ。」
いや、本当に違うんですけど・・・。
でも、そうなるとどうやってここを突破するんでしょう?見ものですね!
『確かにそうね、でも任せといて。私は炎だけじゃないのよ!』
リネルさんが不敵に笑ってます。どんな魔法を見せてくれるんでしょうか?
『いや、俺がやろう。リネルが無駄にMPを消費する事もないだろう。』
『ルーモス?』
戦士の人が前に出てきました。ルーモスさんと言うんですね、厳ついけど、カッコいいです。
リネルさんの魔法も気になりますけど、戦士の技も見てみたいです。
『要は土の中の本体を倒せばいいんだろ?だったら・・・グランドアックス!』
ルーモスさんが大きな斧を地面に向かって振り下ろした途端、斬撃が地を走る様に前方が切り開かれていきます。
そして大きな音を立てながら地面のあちこちが大きく隆起していきます。
地面の下にあるダンジョンの外枠は大丈夫でしょうか、なぎ倒されていくヘルダイバーよりもそっちの方が心配です。
『おいおい、張り切りすぎだろ。洞窟自体が崩れたらどうすんだよ。』
騎士の人は眉を寄せてルーモスさんの肩を叩きました。ホント、ダンジョンを壊さないでくださいよ?
『悪い悪い、でも大丈夫そうだぞ?ほれ、ヘルダイバーも倒せたし、固いこと言うなよロズ。』
あのイケメン騎士さんはロズと言うみたいですね。豪快に笑って誤魔化すルーモスさんを見て、額に手を当てて肩を落としています。
なんかこれ見ただけで普段の風景が想像できますね。
『まぁいいじゃないか、兎に角道は開かれたんだしな。だがまぁ、歩きにくそうだけどな・・・。』
勇者の人がボコボコにせり上がった地面を見て、ボソッと呟きました。
確かに、歩きにくそうです。後先考えずに動くタイプっぽいですね。
『その雑さを直して欲しいもんだがな。ラッツもあまり甘やかすな。』
騎士の人は真面目な感じがして、何だかんだ大変そうですね。振り回されてる雰囲気が滲み出てます。
そして、勇者の人はラッツですね。これでようやく全員の名前がわかりました。ラッツ、リネル、レネル、ルーモス、ロズですね。覚えましたよ勇者のパーティー!
!?
「僕、気づいちゃったよ・・・。」
「何がだ?」
大変な事に気付きました。
「あのパーティーの共通点!!」
「共通点?なんだと言うのだ!?」
ふっふっふ。テトラも気付いていない様ですね。しかし、僕は確かに気付きましたよ?重大な事実に。
「彼らは・・・・。」
『ゴクリ』
少し溜めを作って、テトラが唾を飲み込んだのを確認しました。
聞いて驚いてください!
「名前の頭文字がラリルレロなんだ!勇者のパーティーはラリルレロだったんだよ!!」
「だ、だからなんだと言うのだ!?」
あれ?驚かない?
「いや、だって並べたらラリルレロなんだよ?凄くない?運命だよ!」
「・・・・・・。」
うっ!!テトラの細い目線が痛いです!!なんで?ラリルレロだよ?
こんなの偶然じゃなくて運命感じるでしょう!?
そ、そんな目で見ないで下さいよ!!
テトラにそんな目で見られると、悲しくなっちゃいます。
哀れむ様な視線はやめて下さい!!!
「っふ。テトらしいな。」
優しい笑みを作ってくれましたけど、今鼻で笑いませんでした?
軽く傷付きましたよ?
「ほれ、とうとう七階がお披露目だぞ!我も新たなステージを楽しみにしておったのだ。
ラリルレロは置いておいて、モニタリングを楽しもうじゃないか!」
あ、置いとかれちゃいました。仕方ないです。今回は、諦めます。
僕も続きが楽しみですし、モニタリングを再開しましょう。
七階は引き続きトラップを用意してますよ?これは僕が作ったものですから、対処できますかね?
ちなみに魔物はヘルダイバーの近くにいた大きな虫を入れておきました。まぁ、流石に虫で苦戦する事は無いでしょうから、テトラには僕の作ったトラップに注目して欲しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます