第28話 勇者さま御一行がやってきました その3

 勇者さま御一行は、難なく七階へとたどり着きました。優秀な方々ですが、ここから僕お手製のトラップがで始めますよ!

 さっそくトラップを仕掛けた辺りに差し掛かりそうです。

 

『一体このダンジョンには何があるんだろうな?浅い階層から、敵のレベルが割と高いぞ。』

 

 戦士のルーモスさんがポツリと漏らします。他のダンジョンを奥に進んだことがないのでよくわかりませんが、敵のレベルはどんなものなのでしょうか?

 比べようがないので僕にはさっぱりです。

 

『そうね、1階層にゴブリンやスライムみたいな弱い魔物がいたかと思うと、2階層でいきなりキラードッグだったものね。

 それにストーンタートルも、並みの冒険者じゃああそこで終わってるわよ。』

 

 ウィザードのリネルさんも同感してます。テトラが言うように、やっぱり配置を変えた方が良かったような気がしてきます。

 でも篩にかけるって意味では丁度いい事は確かですもんね。配置って難しい・・・。

 

『どわぁあ!!?』

 

 お?どうやらトラップに引っかかった見たいです。引っかかったのは先頭を歩いていた勇者さまですね。ラッツさん、しっかり落とし穴にハマってくれたみたいです。

 

『『だ、大丈夫(か)!?』』

 

 仲間たちも一斉に駆け寄りますが、あまりオススメ出来ませんね。だって、

 

『のわぁ!?』

『きゃぁ!!?』

 

 あらら、みんな落ちちゃいました。

  

「テト、あれは何だ?」

 

「驚いた?僕お手製の落とし穴!

 一定以上の重さが加わると、床が崩れるようにしてあるんだ。みんなでおんなじところに乗ったから、落ちちゃったんだね。」

 

 まずラッツさんが乗った事で、小さな落とし穴が開く。その周りに駆け寄った人も、重すぎると穴が広がって落ちると言った仕掛けです。

 穴も3メートルくらい掘ったので、登るのにも苦労すると思います。

 

「まさか、中に槍でも仕掛けてあるんじゃあるまいな!?」

 

 テトラは怖い事を言いますね。


「そんな危ないものを置くわけないじゃないですか。ただの嫌がらせですよ。」

 

 よくそんな恐ろしいことを思い付きますよね。そんなことしたら死んじゃうじゃないですか。

 びっくりさせて警戒をさせることが目的です。罠があると分かればハラハラしませんか?しますよね?

 

「そうなのか?偉く手の込んだ嫌がらせだな・・・。ダンジョンと同じ物質で作りをしているから、罠を感知できない様だぞ?」

 

 どう言う意味ですか?罠を感知?


『ラッツ、ちゃんと見てなかったのか!?』

『いや、トラップサーチには何も反応はなかったんだ・・・。』

 

 僕の疑問を解消してくれる様に、勇者さまとロズさんが言い合ってます。トラップサーチと言う、その名の通り罠を見つける力でしょうか?

 

「我も罠の見分けがつかなかった。普通は自然の中に罠という人工物が混じるから、スキルや魔法で感知することができる。

 しかしお前のダンジョンは、罠も含めてお前が作った同等のものだ。見分けるのは至難だろう。」

 

 そ、そうなんですか!?まずそんな力があるなんて知りませんでしたから、僕にはそっちの方がビックリですけど。結果オーライですね。

 これでハラハラを楽しんでいただそうです。


『と、兎に角。俺のサーチでは反応しない罠がまだある可能性が高い。全員気を引き締め直してくれ。』

 

『はいよ。それにしても深いな。ほら、俺が踏み台になるから全員上がれ。』

 

 全員がルーモスさんを踏み台にして落とし穴から這いだしました。あっさり出られちゃいましたけど、何処かに敵も居ますよ?頑張って下さいね。

 

『まて、トラップサーチには反応がないが、エネミーサーチで大量の魔物を感知した。サイズは小型の様だが、あの奥に蠢いている様だ。

 気を抜くなよ。』

 

 ラッツさんはダンジョンの奥を指差しました。罠だけじゃなく魔物まで感知できるんですか。

 これは魔物で驚かすのは難しそうですね。


『小型で大量か・・・。狭い洞窟だと大火力の魔法は出しにくいだろう。俺が先頭を行こう。』

 

 騎士のロズさんが先頭に立ちます。イケメンな上にどんだけクールなんですか。でも、あの細い剣でどうやって複数の敵を倒すんです?

 

「一体なんの魔物を入れているのだ?」

 

 テトラが不思議そうに聞いてきます。どんな魔物がいるのかを楽しみにしてるみたいなので、未開の階層の事は話してません。テトラが連れてきた魔物くらいしか知らないでしょうね。

 でも彼らは中ボスとして各所に着いてもらってます。出番はまだまだ先ですね。

 

「アリだよ蟻。ヘルダイバーの近くにいたから、巣ごと持ってきたんだ。」

 

 そう、僕が捕まえたのは大きな蟻です。一匹が50センチくらいの大きささがありましたから、ちょっと怖かったですけど。

 地を這うことしかしないので、近づいてくる分は残さずダンジョンに落としてやりました。

 

「ま、待て。まさかとは思うが、それは紫色の蟻だったか!?」

 

「そうだね、言われてみれば黒っぽい紫だった気もする。流石テトラは物知りだね。」

 

 自分の住んでた山の魔物ですから、知っていても当然でしょうか?でも、何をそんなにびっくりしてるんでしょうか?

 所詮蟻ですよ?

 

「それはマッドアントとだよ・・・。

 凶暴性が強く、一匹の硬度はストーンタートルにも匹敵する。それに繁殖力も高いため集団で動くのだ。

 強靭な顎と硬い外郭をもつ魔物の狂戦士だよ。こんな浅い階層にいる様な魔物じゃない・・・。」

 

 テトラが額に手を当てて項垂れました。今までで一番困った様な表情です。


「で、でも彼らなら大丈夫ですよね!!」

 

「広い場所でなら戦い方は多様にあるだろうが、お前は数百、数千といる敵の棲家に入りたいと思うか?」

 

 そう言われると、絶対に入りたくはないですね。ストーンタートル級の防御力に、虫の素早い動き。さらに強い攻撃力を持っている敵なんて、恐ろしくて戦いたくないです。

 

『な、何だコイツらは!?蟻!?』

 

 テトラと問答をしていると、勇者さま御一行もマッドアントに接触したようです。


『嫌ぁぁあああ!!!虫は無理よぉぉおおお!!!』

『わ、私も無理ですぅ!!』

 

 女性2人が二歩も三歩も後ずさり、後方へと回った。それを庇うように男性3人が前にです。


『なんて数だ!?』

 

 モニターに映し出されたのは、床から天井まで全てを覆い尽くす大きな蟻の群れでした。テトラの言っていた『数百、数千の敵の棲家』という表現がこの時初めてしっくりときた。

 でも、彼らは背を向けずに身構えています。


『二人は近づく奴だけなんとか凌いでくれ!!あとは俺たちがやる!!

 ルーモスはリネルとレネルを守ってくれ!!』

 

 ラッツさんが指示を出して、マッドアントとの激闘が始まりそうです。

 僕は何とも言えない罪悪感を抱えながら、モニター越しに祈りました。

 

 

 お願いだから死なないで下さい!!!

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