第18話 ちょっと覗いてみましょう

 いつの間にか夜になった。テトラの話は色んな事を考えさせられたけど、一緒に過ごす時間は楽しい。

 情けないけの、お腹が空いたのに身体が痛くて動くのが一番億劫です。今日はもう食べなくてもいいかな、と思う。

 

「テト、少々出かけて来たいのだが。ここへの出入りは自由にできないか?」

 

 テトラは思い出した様に立ち上がって、僕を見て言いました。こんな時間に何処へ行くんでしょう?

 

「出入り口は僕にしか作れないから、帰ってきたらダンジョンの入り口に入ってくれれば扉を開くよ。

 出口の行き先は、僕が扉を開いた場所ならどこでも行けるよ。何処に行きたいの?」

 

 テトラにも何か用事はあるでしょうし、あまり詮索するのも良くないですね。帰ってきてくれれば、なんだって良いです。

 

「我の住んでいた、ヴォルガ山脈へ行きたいのだ。ダンジョンの入り口までは距離があるな、二時間程したら同じ場所に扉を開いてくれないか?」

  

 あの山はそんな名前だったんですね。よく知らずに歩いてました。

 

「わかった。じゃあ、テトラのいた所に扉を開くね。でも、二時間だけで良いの?」

 

「あぁ、少し物を取りに行ってくるだけだ。帰るときは、入り口を大きめに作ってくれると助かる。ドラゴンの姿でも入れる程にな。」

 

 ドラゴンの姿で帰ってくるんですか?どれだけ大きな物を持ってくるんでしょう。

 でも、テトラなら変なものは持ってこない気がします。それに、帰ってきてくれるならなんでも良いです。

 お任せしましょう。

 

「わかった。それじゃ、気をつけてね。」

 

 僕はモニター横に扉を作った。少々なテトラが通るには十分な大きさです。

  

「では行ってくる。我はこう見えて、中々に実力はあるのだぞ?気をつける事など特にはないよ。」

 

 テトラが強いのはよくわかってますけど、そういう意味で言ったんじゃないんですけどね。僕は君の身を心配してるっていう意思表示と、うっかりして怪我をしないようにって事。

 まぁ、余計な心配でしたかね。

 

「わかってる。じゃ、行ってらっしゃい。」

 

 テトラは扉を潜って、管理室から出て行ってしまいました。ここ数日ずっと一緒にいたので、一人で居ることが不思議な感じです。

 というより、急に寂しくなってきました。半年以上せっせとダンジョンを作りながら、一人で暮らしてきていたのに。

 自分で思っている以上に、テトラといる時間は楽しかったんですね。

 でも、それも二時間ほどの辛抱です。

 






「動けない状態で寝ずに待つのって、とても大変ですね。」

 

 テトラが出て行ってから、まだ30分と言ったところでしょうか。

 しばらくモニターを眺めていましたが、それも段々と飽きてきました。

 

 だって、景色とか全く変わらないんですもん。少し画面を動かしても見ましたが、スライムやゴブリンがウロウロしてるのが見えたくらいです。

 

 あ、なんかゴブリンとスライムが喧嘩を始めました。スライムが一方的に叩かれてます。

 でも、割と元気ですね。打撃は聞きにくいんですかね?

 

 そうだ、他の階層もちょっと覗いてみましょう!

 あと一時間半くらいは時間があります。時計がなかったのですが、クリエイトで作れたので目の前に置いてあります。

 どうやらダンジョンの中では材料が無くても物が作れるみたいです。

 外では材料が無いと作れなかったので、この空間限定のアイテムですかね。

 便利なような、そうでもないような・・・。

  

 兎に角、気になる階層をチェックしていきましょう!

 まずは何処にしようかな?

 最初の頃捕まえた魔物はどうなったかな?10階層には猪みたいな魔物を入れたんですよね。結構大きな魔物でしたけど、元気にしてますかね?

 

 モニターの映像を10階層に移して、中を確認します。

 そうでした、ここは森をイメージして作ったので、色々とごちゃごちゃしてます。

 木や草が邪魔でいい角度からは見えにくいですね。天井からの視点に変えましょう。

 

 再度カメラの位置を変えて、ダンジョン内を見渡す。

 あまり変わったところは見受けられませんかね?割と広いマップですから、ちょっとずつ移動させて見ます。

 

 上から見てみるとなんだか物凄く深い森に見えます。それに、光源は光魔石だけですからね、薄暗くて君が悪いです。多分木々が生い茂ってる場所は真っ暗なんでしょうね。

  

 見渡していると、木々の隙間で大きな影が動きました。おそらくあの魔物です。

 ちょっと近くで見てみましょう。

 

 僕はカメラを影の見えた方へ移動させました。そこには立っている木々の三分の一程も背丈のある、大きな猪の魔物がいました。

 

 おかしいですよ!?たしかに大きかったですけど、捕まえた時はこんなに大きくはありませんでした!

 精々2mそこらの猪だったはずです。この大きさは4m近くもありますよ!?

 一体半年で何が起こったんですか!?

 

 口から生えてる牙も物凄く大きいですし、これ絶対何かあるやつです!!

 み、見なかったことにしましょう・・・。

 つ、次の階層に行ってみましょう。

 

 次は20階層、中ボスっぽい魔物を見ていきましょうかね。

 20階層は草原のエリアです。ただ、ここは天井に空を作ったので、明るいステージです。

 手前の階層で夜目になった人には眩しいと思います。

 

 20階層の天井にカメラを移してみると、画面には1キロメートル四方程もある草原のエリアが映し出された。

 割と見通しの良いエリアです。が、ここは次の階層の手前に巣穴を作っていたはずです。どうなりましたかね?

 

 たしか、あっちの方に・・・。

 あ、いたいた。今は巣穴からちょうど出てきましたね。

 ここにいるのは大きな蛇です。

 ちょうど他の魔物に絡みついて、お食事中だった所を捕まえました。

 

 今思えば、あの時の僕は凄いですね。こうしてみると絶対近付きたくないです。

 ・・・・・・・・・・・・。

 こっちもなんだか成長してるみたいです・・・。

 あれですか?テトラが魔力をばら撒いた影響でしょうか?あとで聞いてみましょう。

 

『パンパカパーン』

 

 げっ!こんな時間にお客様!?

 テトラはまだ一時間以上帰ってこないだろうし、僕一人で楽しむのはなんだか悪い気がしますけど。

 とにかくモニターを戻しましょう。

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