第9話 作りすぎました
朝、僕は何時もの時間に目が覚めました。昨日は寝すぎた所為で、あんまり寝つけませんでしたし。
今日は珍しく、テトラの方がお寝坊さんみたいです。
隣でぐっすり眠ってます。
寝るときは人の姿でしたけど、今はドラゴンの姿に戻ってますね。
こっちの方うがちょっと安心します。
だって、あんな可愛いこの寝顔を見るなんて、昨日の今日で僕の心臓には負担が大きすぎます。
ドラゴンなんですよねぇ。
テトは眠っているテトラを見つめた。ドラゴンという生き物と、共に暮らす人間などテトぐらいだろう。
それはテトも感じているし、二人にとって数奇な巡り合わせであったと言える。
瞼を閉じるテトラにそっと近づくと、テトの身長よりも大きな顔が、さらに際立って見える。
すると、テトラがパッとその目を開いた。
『テトか、どうした。
客でもやってきたか?』
落ち着いて、そのままの姿勢でテトラは思念を飛ばしてくる。
「ん〜ん。テトラの寝顔を見てただけ。」
『な、何を言っている。あまりマジマジと見ないでくれ。
その、恥ずかしいではないか。』
そう言ってテトラは飛び起きました。でも、それだけ大きいと仕方ないですよ。
「テトラは大きいから、すぐ目に入っちゃうよ。」
『だ、だがこれは仕方ないだろう。
目に入るのは別に良いのだ。ただ、あまり顔を直視されるのは、な。』
テトラ、やっぱり女の子ですね。
ドラゴンなのに、仕草というか態度が乙女です。人間のスレた女性より、よっぽど魅力がありますね。
魔物って、心は純粋なんでしょうか?
そう思っていると、ボンと煙を上げて少女なテトラが現れました。
テトラ、そっちの方がジロジロ見ちゃうんですけど・・・。
ただ、顔を直視出来ないという点では有効ですね。僕も恥ずかしいです。
「さ、それじゃあ日が昇り切る前に、ダンジョンを開きましょうか!
今日はお客さん来てくれるかな?」
張り切って、ダンジョンの入り口を開きました。
さて、お客さんが来る前に朝食を食べちゃいましょう。
食料庫から適当に木の実や薫製肉なんかを取り出して、自作のお皿に乗っけてモニター前で颯と平らげます。
《パンパカパーン》
お皿を片付けている間に、ランプとブザーが反応しました。
お皿をほっぽって、僕はモニター前に駆けていきます。すでに少女なテトラはモニター前にちょこんと座っていました。
僕も少し恥ずかしかったですが、モニターを見たいのでその横に座ります。
モニターがそんなに大きくないので、殆どくっつく形で座らないといけません。
もう少し大きいモニターをつくれば良かったかな?でも、これはこれで良いですね。
隣に美少女なんて、普通あり得ないですし。
さてさて、今日のお客さんはどんな人かな?
『全員、気を緩めるな!国の為に最善を尽くせ!しかし、死ぬことは許さんぞ!!』
おやおや?
なんだか重厚な鎧を纏った騎士様が、私兵団を引き連れてやってきたようです。
「本日のご来場、ありがとうございます!」
恒例となった挨拶にも、気合いが入ります。まさかこんな方々までやってきて頂けるとは。
あの紋章はこの一帯を収める、ノーベイル王国の物ですね。勉強できない僕だって、流石に自分の住む国家の事くらいは知っています。
国の調査団と言ったところでしょうか?
「あの指揮をとっている騎士は、なかなか出来るな。」
テトラの実力予想も定着化しつつありますね。でも、これ本当によく当たるんですよね。
眼力の精度に感服です。
「じゃあ、五階層は突破できそうですか?」
一昨日の様な事にならないと良いですが。
「戦い方を知っていれば、彼らが負ける事はあるまい。」
そうですか、それは安心しました。
こんなに強そうな人達が、5階層で負けてしまったら作成した僕の責任です。
階層の入れ替えも検討しなければなりませんし、少しでも探査階層の記録を塗り替えて欲しいものです。
今回は全部で50人くらいはいるでしょうか?それぞれが鎧に身を包んでいて、指揮をとっていた人以外はあまり顔が見えません。
指揮しているのは男性の様ですが、長いサラサラとさした金髪に、コバルトブルーの澄んだ瞳をしています。
女性かな?って思うくらい綺麗な顔をしていますけど、強いんですよね?
それに指揮をしているという事は、団長さんとかそういう立場の人でしょうから、僕とは次元の違うミスターパーフェクトですね。
文美両道とでもいうのでしょうか。正直言って羨ましいかぎりです。
「はぁ、僕もあんな風になれたら良かったのに。」
皮肉ですよね、田舎に生まれて顔もどちらかというと普通だと思ってますが、頭悪くて身体能力も低い僕。
そんな僕の作ったダンジョンに、僕の持っていない全てを兼ね備えたような人が来るんですから。
「なにを言っておるのだ、テトは今のままで十分だと思うぞ?
それ以上なにを望むというのだ。」
テトラは優しい顔で此方を見て慰めてくれました。
僕、幸せ者だと思います。
「ありがとう。」
少し恥ずかしいですけど、自然と笑顔になれました。テトラの優しさに、ちょっと涙が出てきそうです。
涙を流すのなんて恥ずかしいので、テトラにバレないうちに腕でこすってごまかしました。
モニターに映るの騎士たちに目を移しましたが、すごい勢いでダンジョンを進んでいきます。
やっぱり鍛えられてる騎士団は違いますね。
あれ?
「前に大分やられたはずなのに、キラードッグが沢山いる。」
一昨日大量に倒されたはずのキラードッグがなんだか多い気がします。
あれだけ倒されたのなら、増えたにしてももっと少ないはず。
「あぁ、あれは我がちょっと細工をしておいてのだ。
魔物の元となる魔力を、ストーンタートルのエリアからダンジョン全体へ流しておいたのだ。
これで今いる魔物のエネルギーを得る事で、同じ魔物が誕生するというわけだ。」
あの時そんな事してくれてたんですね!
それなら、無理に魔物の補充に行かなくてすみそうです。
あ、でもダンジョンって気合入れて作ったのでかなり広いんですけど、全部に行き渡ってますかね?
「それって、何階層くらいまで魔力をが届いてるんですかね?」
「我も最深部が何階層かわからなかったが、100階層分くらいは届いているはずだぞ。十分足りておるだろう?」
あちゃー、全然足りません。
その倍はあるんですよ。
「実は、200階層まで作っちゃった。
最後のテトラの場所を含めると、201階層だね。」
作りすぎました。
「お前、そんなダンジョンを攻略できるわけ無かろう!?
まず食料が底をつくぞ!?」
テトラもなんだか呆れてます。
んー、どうしましょう。
「む、無理かな?」
「・・・・・・まぁ、我の出番がない事はよくわかった。突き進んでくる強者を期待しておくよ。」
「反省しまてます・・・。」
そんな事はつゆ知らず、騎士団はダンジョンを進んでいる。
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