第29話 一時休戦

「行くぞ業助!」

「あぁ!」


 僕が先に攻撃を仕掛けるが、防がれる。

 即座に業助が次の攻撃をする。


 僕らは連続して攻撃を続けるが。


「なんだこの闇、強度が半端ない!」

「業助の熱でも溶かせないとはな」


 一向に効いてる様子がない。


「我々の復讐を前に、貴様らなど敵ではない!」

 残党がそう言うと、闇を大きく広げる。

 そしてそれを自らの体全体を覆うように纏う。


「闇の鎧……」


 そう呼ぶに相応しいだろう。

 そして残党はそのまま突進してきた。


 僕らは受け止めるが。

「こいつ……重い!」


 その攻撃は今までに感じてきた重みの何倍も大きい重み。


 これがこいつらの復讐心か……。


 ──そして抑えきれず、突き飛ばされる。


「ぐはっ!」

「がっ」



 そして残党が僕らに大きく攻撃を──


 ィィィイイン


 ──はげしい音が響く。


 僕らは攻撃されてない。


 ──いや、守られたのか。


 前を見ると、漆黒の中に、青いラインが一瞬光っては消えた。


「流輝さん!」


 その輝きで分かった。

 彼女の体の影を見る前に。


 そして流輝さんはあの強靭な重みを跳ね返した。


「大丈夫? 逃げるよ!」


 僕は流輝さんに引っ張られる。

 ついでに業助も。



 ──とりあえず逃げ切れた。


「アルナ君、大丈夫?」

「──はい、助かりました」

 僕はとりあえず無事を伝える。


「君も……ってお前! 青当の!」


 流輝さんがついでに引っ張ってきた人物に気づき、驚く。


「『お前!』も何も嬢ちゃんが引っ張ってきたんだろうに」

「ここで殺す!」

「あぁ? 今やるか?」


 二人が闇器を構えるので。


「ちょっと! 今戦ってる場合じゃないですよ!」


 僕が止めに入る。


「今の状況で戦ってもお互いに犬死にしますよ!」

「──そうだね、冷静じゃなかった」


 どうにか二人が闇器をしまってくれた。


「今、金剛の残党兵が全勢力で青当と銀海に進軍してきてるんだ。ここは一旦休戦したほうが良さそうだね」


「全勢力で?」

「そう」


 ──確かに、周りの音がさっきより戦闘が激しくなっている感じだ。


「それでアルナ、嬢ちゃん、どうする──」

「嬢ちゃんって呼ぶな。私は君たちより年上だ」


 話を持ちかけようとした業助の呼び方を、流輝さんが訂正に入る。


「え? でも?真面目に見ても同い年くらいに──」

「こう見えても私は十九歳だ」

「そうなんだ……」


 業助がそっと流輝さんの胸元を見る。


 シャキンッ

「──殺すぞ。」


 流輝さんが今までに見たことがない程、殺気立った目つきで言うと。


「ごっ、ごめんなさいー」


 業助が珍しく引き気味に謝る。



 ──というか、流輝さん十九歳だったんだ。


 それに、殺気立ててる流輝さんもこれはこれで──


「んで流輝……さん? どうするんだよ」

「一旦支部に戻って体勢を──」


 ドゴォオオ


 横の壁が壊れる。

 ──そこから残党が。



「──逃してはくれないみたいだね」

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