第4話 軍

 ──支部長室の扉が開かれた。


「よぉ! 流輝るか! そいつが例の白使いか?」

「はい! 支部長! この学生が白使いです」


 いかつそうだと思う前に、支部長の快活さが先回ってきた。


「ぱっと見ひょろそうだけど、名前は?」


「はい、黒陽 亜月光あるなです!」


「少しは威勢ありそうだなぁ、俺は東部銀海軍支部長の其先そのさき 限次げんじ、少暗王だ。階級は分かるか?」


「はい、閃霧せんぎり少将に聞きました」


「そうか。んじゃまぁアルナ君の事なんだが」


 早々と僕の処遇について話し始める


「どこも同じだと思うが、今は使える戦力は使わんともたない。それでアルナ君は大きな戦力となり得ると、本部は考えたんだ」

「今すぐにも戦闘にぶっ込みたいが、流石に戦闘初心者を急に戦わせるのは無駄死にするだけだ。ということで、アルナ君には2週間戦闘訓練を受けてもらう。」

「訓練……」

「そうだ。その間は訓練兵の扱いになる。訓練終了時の状況によって、階級を決める」


 僕は、自分の処遇をなんの抵抗もせず受け入れた。というより、何もせずただ過ごしていた自分に飽き飽きしていたのだ。

 僕は最後に一つの疑問をぶつける。


「一つ質問していいですか?」

「なんでも聞いていいぞ」

「僕は敵対勢力の住民だったのにこんな感じでいいのでしょうか……」

「それはどういうことだ?」

「いえ、普通ならもっとひどい扱いを受けるものだと思って……」


「え?」


 少将に驚かれてしまった。


「はっはっはっはっ……アルナ君、君結構凄いこと言うんだな」

「え?」

「君はこの処遇が甘すぎるんじゃないかって言いたいのか?」

「あっあの……そうです」

「おかしなやつだ。捕らえられて軍にむりやり入れられ、強制的に戦場に立たされるのが甘いか……」

「すみません……変な事言って……」


 場に静けさの間が通り過ぎる。


「気に入ったぞ! お前見た目よりぶっ飛んでるな!」

「ありがとうございます!」

「褒めてはないけどなっ」


 どうやら僕はちょっとおかしな事を言ってしまったらしい。


 ──こうして僕はニ週間の訓練を受けるのであった。


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 ──翌日──


 僕は、いつの間に作ったんだと思いながら、名前入りの配布された軍服に着替えた。訓練兵は皆真っ黒だ。閃霧少将は青のラインが入ったかっこいいのを着ていたけど。

 軍食堂で食事を済ませる。料理の味は普通で、特に言う事はない。そのまま訓練場に向かった。


「てあ! ああ!」

「了解しました!」


 他の訓練兵たちの訓練の声が響く。


「君が黒陽君ね、今日からニ週間君の訓練をする、椎名しいな 狩乃かりのよ、よろしく」

「よろしくお願いします!」

「普通は訓練兵数人を相手に教えるのだけれど、あなたはイレギュラーだから、私が専任の教官よ」


 上品な感じの人だ、僕からしたらおねえさんとおばさんの間くらいの年だろうか。

 流石に訓練兵の教官だけあって厳しそうな雰囲気だ。


「まず聞くわね、あなたは戦闘の経験はある?」

「いえ、無いと思います」

「格闘技とかを習ったりは?」

「いいえ」

「……そう、じゃあまずこれを持って」

「はい」


 普通サイズの木刀を渡された。


「あなたの使う月光剣サテライトは武器の種類のうち中刀にあたるの、その木刀も中刀よ。とりあえず中刀の基本的な構えを教え──」


 シュッ──




 教官が持ってた木刀で急に僕の頭を横に切るようにしてきた。


 シュッ──


 普通だったらそんなの気づかないで打たれてるんだと思ったけど。僕は動いていた。体が勝手に動いていたんだ。




「君……本当に戦闘未経験なの……?」


 気づいたら僕は体勢を低く取り、なおかつ手元の木刀を教官の腹に向けていた。


「あっえっ、えと……」


 僕はすぐさま木刀をのけた。自分でも驚いた。


「わからないんです……」


「どう言う事?」


「小学生の時の記憶が無くて……中学も半分くらい覚えて無くて……」


 教官は唖然としていた。



 ──僕も唖然とした。







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