第5話 訓練

「あなた、私と手合わせしなさい」

「教官と……ですか?」


 僕が戦闘初心者とは思えない動きをしたあと、教官がそう言ってきた。


「……わかりました」


 僕は仕方ないので手合わせすることに。


「じゃあ、いくわよ」



 ──僕は、がなるべくできるように踏ん張った。しかしどうにも僕は変な動きをしてたらしく。



「あなた、はどこに行ったの?」


 僕は木刀で打たれまくった。


「すみません……」


「とりあえず、さっきの事は忘れて、基本の構えを──」


 シュッ── カッ─ザッ──


 教官が今度は斜めに振り下ろしてきた。

 気づいたらそれを弾き、教官の背後に周り、頭に剣を向けていた。


「あなた……」

「意識的にやろうとするとできない感じね」


「そうらしい……ですね」


 教官が困った顔で。

「あなたの指導の仕方は、少し考えないといけないわね」

 と言った。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「戦闘は後回しね、とりあえず闇操作の基本を教えるわ」


 そう言って教官は、武器庫から何かを持ってきた。


「これは練習用闇器ダークギアよ、誰でも使える仕様だから、これを起動してみて」

「はい」


 僕は闇器ギアを構え、親指に当たるとこにあるトリガーを押して起動した。


 ボカッ


 闇器ギアが爆発した。


「何かの不具合かしらね」


 そう言って教官はもう一本持ってきた。

 僕はそれを構え起動すると。


 ボガッ


 ──また爆発した。


「あなた……まさかあの剣しか使えないのかしら」

「どうでしょう……」

「仕方ないわね、これじゃ訓練にならないから、月光剣サテライトの使用許可を下ろしてくるわ。そこで待ってなさい」


 ──数分後──


 教官が月光剣サテライトを持ってきた。


「はい、これで起動してみなさい」

「わかりました」


 月光剣サテライトを渡された。

 起動してみる。


 シュー


「適正確認、使用者、黒陽 亜月光あるなと確定、起動します」


 ボッワァァアア


 月光剣サテライトから白き霧が大きく広がる。


「あれが噂の……」

「実在したのか……」


 周りの訓練兵や教官たちがざわめき、視線が僕に集まる。


「これが君の闇……」


 椎名教官も驚いている。


「そうね、あなたはこれしか使えないみたいね」

「仕方ないからそれで教えるわ」


 教官が倉庫から的用の木の棒を持ってきて、それを台の上に乗せた。


「とりあえずどんなものか確認するわ、闇を使って切ってみて」


 そう命令されたけど。


「あっあの……」

「できないの?」

「いや……」

「いいからやりなさい」

「はい……」


 厳しく言われたので仕方なく剣を振った。


 ズドガァアアア


 僕の白い闇が散って、砂埃が舞った。


 木の棒は文字通りになり、台も乱切りに。後ろの壁も、物凄い傷がついた。



 驚きの間が通り過ぎる。


「──威力がすごいとは聞いてたけど……こんなに凄いとは思ってなかったわ」

「すみません……」

「いいわ、今のは私のせいだから気にしないで。報告も私だけでしておくわ」


「あなたの指導方針は今日中に会議するわ、今日はもう戻っていいわよ」

「はい」


 ──僕の訓練一日目は、ほぼ訓練にならず終わってしまった。


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 ──東部銀海軍会議──


「さて、黒陽 亜月光君の件だが」


 其先そのさき支部長がアルナの件について議論を展開する。


「今日の訓練で色々と問題があったそうだが、その件はどうなっている、椎名教官」


「はい、いくつか問題が発生しました。」


 椎名教官が今日起きた問題点を端的に説明し始める。


「一つは、彼は誰でも扱えるはずの練習用闇器ダークギアが扱えず、起動すると爆発して闇器ギアが破損しました。二つ目は、月光剣サテライトを使ったところ、彼の攻撃の威力が大きく、訓練兵の訓練場では闇操作の訓練ができません」

「そして三つ目は、彼は何かしらの戦闘訓練を受けていた可能性があります」


「ふむ、まず一つ目の問題だが、これに関しては月光剣サテライトを使わせるしかないだろう。そして二つ目は、彼の指導には上位階級が使う訓練場を使わせてくれ。三つ目だが……詳しく説明してくれ」

「はい、いつも私がやっている方法で、スキをついたらどのような反応をするか検証してみたのですが、完璧なほどの構えで返されました」

「どのように?」

「彼の頭向かって横に切りかける動きをしたところ、彼は体勢を低く取り、私の腹に木刀を向けていました。二回目も、今度は斜めに振り下ろしてみたのですが、それを跳ねのけられ、背後を取られていました」


 椎名教官はジェスチャーを交えながら説明した。


「しかし、彼と手合わせをしてみたのですが、意識的に動こうとすると、まともに動けていませんでした」


「そうか。一つ目、二つ目の件に関しても、東黄の保有していた月光剣サテライトしか使えないのも変な話だ。三つ目も、何かそれに関係があるかもしれない。彼の身元を調べて、危険がない可能性は高いが、今後も重要警戒しつつ、彼の指導を進める。いいな!」

「はい!」


 ──アルナが自身の信用を得るには、遠くなりそうである。

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