第34話 破壊生物

 僕らは再び戦闘に向かう。

 第二大隊も闇獣に乗っているんだろうか。


 そんな事を考えていると。


 ──いた。


 その兵達は、一人一人闇獣を連れていた。


 しかし、それは狼ではなかった。



 ──鳥だ。


 鷲だろうか。


 兵一人一人が鷲を連れている。


 そして、鷲との連携攻撃を取っている。



 ──こいつらと戦うとなると、厳しそうだな。


 そして、僕は立ち向か────



 ──おうと思ったが。



 なんだ……あれ。


 僕は兵よりもその後ろから迫ってくるものに目を奪われた。


 最初はとてつもなく大きな闇を纏っていて、よくわからなかった。


 けど、それが近づいて来るのに、だんだん姿が露わになる。



 ──それは、大きな狼。


 しかし、一言でそう呼ぶにはふさわしくない。


 なぜなら───



 ──頭が三つあるからだ。



「──三頭狼ケルベロス


 僕の口は、その名を口にしていた。


 僕は唖然として立ちすくむ。


 すると三頭狼ケルベロスは飛び上がった。

 衝撃で地響きがして、飛び立った後の地面が大きく凹む。


 僕の目の前まで来た。


 ──あ、死んだ。




 イィィィイイン


 ──最早、聞き慣れた音。


 流輝さんが僕を守った。

 何回目だろうか。


「アルナ君! しっかり!」


 はっ、と僕は我に帰る。


「アルナ君、大丈夫か」

「はい!」


 爽也さんに促されて、僕は体勢を構え直す。


 パキッ

「耐えれない!」


 流輝さんの闇をいとも簡単に破壊する三頭狼ケルベロス


 僕らは避ける。



 ──そこに。



「なんだこいつは!」


 業助が現れた。

 隣には式もいる。


 そして、流輝さんの連絡端末に通信が。

 流輝さんが出る。


 続けて、式のにも通信が。


 ──通信が終わる。


「みんな! いまさっき、銀海と青当間の一時的な協定が締結されたみたい!」


「こっちも、その連絡だ」


 流輝さんと式がそれを告げる。


「正式に共同戦線って訳だなぁ」


 ──銀海も危機的状況に追いやられ、青当もさらに協定を結んでいた二地域から裏切られた。


 そして、戦場でも実際共闘がいくつか起きている。ここは一時的にでも手を取り合うのが当然な話かな。



 そんな話をしていると。

 三頭狼ケルベロスが襲ってきた。


 流輝さんと爽也さんが守る。


 その間に、残った僕らは横から攻撃を仕掛けるが。


 闇が鋼のように硬い。


 三頭狼ケルベロスは、僕らを振り払う。

 僕らは立ち上がる。


「アルナ!」

「あぁ、分かってる。あれを使えばいける!」


 業助の呼びかけに、僕は答えた。


「あれって? 何か策があるんですか?」

「はい!」


 木賊さんが聞いてきた。


「僕の冷気と業助の熱気の温度差で、闇のガードを割ります! けど、少しの間時間稼ぎが必要です」


「この前と同じだね! みんな! 時間を稼ぐよ!」

「「はい!」」


 流輝さんの合図で、みんなが動く。


 僕と業助は引いて、温度差を上げていく。


 みんなが時間を稼ぐ。


 ──そして、僕らの温度にだいぶ差がついた。


「みんな! 行けます!」


 僕の声で、時間を稼いでくれた五人は引く。


「やったろうぜアルナ!」

「そうだな、業助!」


「「月陽氷炎斬げつようひょうえんざん!」」


 全力を一気に三頭狼ケルベロスに叩き込む。



 三頭狼ケルベロスが大きく唸りを上げる。



 ──そして。




 闇が割れた。



「よっしゃ!」

「このまま押し切る!」



 ──しかし。


「斬れない!?」

「どうして!」



 ──割った闇の奥にさらに、もう一層闇があった。

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