第38話 苦戦

 ──銀海軍総勢で竜に立ち向かう。


 鎧気大暗王がその大剣に大きく闇を纏わせ、凄まじく先制を仕掛ける。


 それとほぼ同じく、他の兵達も闇をぶつけた。


 これだけの総勢で一度に攻撃を加えれば──




「──効いてない……」

「鎧気大暗王の攻撃でさえ……」

「そんな……」


 大暗王の攻撃も、最早微塵も通用しなかった。

 兵達がたじろぐ。


「うろたえるな! 攻撃を続けるぞ!」


 だが、鎧気大暗王はその程度では折れない。

 兵たちの士気を高めながら攻撃を続けている。


 ただ攻撃するのであればだいぶ楽なんだろう。

 しかし、相手は竜。暴れまわっては、口から火を放ち、あわよくば纏った闇も伸びてきて攻撃してくる。


「ぬんっ!」

 鎧気大暗王が攻撃を入れる。そこに向かって竜の尾がうねりながら勢いよく振られる。


 それを見た空無中暗王は衝撃を作り、大暗王と後ろに引かせる。

 そして伸びて来る闇を支部長二人が防ぐ。


 ──凄い連携だ。流石は暗王階級の方々か。


 ──そこに。


「我々も手助けさせてもらう!」



 竜が破壊した瓦礫の山の向こうから一人の兵が。がたいは普通だがそれとない気迫を感じさせる男だ。

 それに続いて大勢の兵が姿を現す。

 その兵らの胸元には、円の中心に青い丸が施された紋章。


 青当だ。


功崎こうさき大暗王!」

 真っ先に業助が、その者の名を呼ぶ。


「業助! 既に戦っていたのか!」

「はい!」


 なにやら仲良さげな感じだ。


 そんな事を思っていると。


「グォォァァアアア」

 竜が青当の兵達に向かって大きく翼をはためかせる。


 青当の兵達はこちら側に避ける。


 青当の功崎大暗王が避ける形で鎧気大暗王と並ぶ。

「ふんっ こんな風の吹き回しで共闘する事になるとはな、功崎……」

「こっちだって、こんなのは望んでいないが……」


 僕は竜の方を向き、月光剣サテライトを構え直す。


 また攻撃を開始する──


 が、そこで。


「キュゥオォォオオ」

 竜が一瞬変な鳴き声を出す。


 そして竜の目が大きな輝きを放つ。


「何だ!?」

「何が来る!?」


 何かが来るのか──?



 そう思ったが。


 ──しかし何も来ない。


「来ないなら行くぞぉ!」

「おぉぉ!」


 何も来ないと踏んだ鎧気大暗王の声で、また攻撃をしにかかる。


 そして、いくらかの兵が闇を竜にぶつける。



 ざしゅぅぅうっ


 肉が斬れた音が響く。


「効いた!?」


 功崎大暗王が一瞬そう思うが。


 ぷしゅうと血しぶきが。



 それは竜の血───



 ──ではなく。


 攻撃をした兵の肩から出る血の音だった。

 そして。


 ボトッ



 ──兵の腕が斬れ落ちた。



「ぐぁぁあああああああああああ」


 他の兵も攻撃したはずが、自分が傷を負っている。



「なっ なんだとぉ!」


 それをみた一人の兵が逆上して、闇を竜にぶつける。


 ──だが。


 闇が竜にぶつかったと思ったが、その闇は竜の鱗に触れた瞬間、力を向けた方向とは逆に吹っ飛んだ。


 そして、攻撃をした兵の頭は斜めに斬れ、肩も一緒にドスっと落ちる。


「闇が……跳ね返った!?」



 ──僕らは更に絶望を強いられる事となったのだ。


 そう、この竜は。





 ──闇のカウンターが使えるのだ。

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