第39話 絶望の縁で

「全員! 攻撃をやめろ!」


 竜が闇を跳ね返したのを見て、鎧気大暗王はそう指示する。


 そして竜は変な鳴き声を立てながらじっとしている。


「何か打開策を考えるんだ!」


 打開策と言っても、竜の体に触れたらだめなんじゃどうしようもない。

 闇じゃない物理攻撃を加えればいけるかもしれない。しかし、そんな物理攻撃をする手段はない。


 ──詰みか?


 そう思ったが。


 竜の瞳が再び大きく輝きを放つ。それと同時に。

「グァァアアオオオオオァァアアア」


 竜が激しく唸った。


 ──そしてまた暴れだした。




 ──そうか。


 僕は気づいて闇をぶつけてみる。



 ──跳ね返らない。

「大暗王! 見ましたか!」


 僕は鎧気大暗王に呼びかけた。


「あぁ! 全員聞け!」


 鎧気大暗王はそれに気づき、全員に呼びかける。


「竜が暴れている間は攻撃が可能だ! 攻撃開始!」

「「おぉぉ!」」


 また全員で攻撃を開始する。


月光剣サテライト、あの竜の体はどうなってるんだ」

「これはAIである私も驚きです。竜の体全体から闇反応が検知できます」


 ──まさか。


 闇結晶で出来てるのか?

 そう思い。


「──業助!」


 僕は業助を呼び、業助が僕の横に下がる。


「あれをやってみよう!」

「あぁ、俺もそう思ってたとこだ!」


 みんなが戦っている中で、僕らは下がって集中する。


 温度差を広げて──



 ──よし、差がついた。


「開けてください!」

 僕は閃霧隊に声をかける。


「アルナ君! あれをやるんだね!」

「はいっ!」

「わかった。みんな引いて!」


 流輝さんの掛け声で閃霧隊のみんなが引く。

 ついでに近くにいた兵も察してくれたか、少し下がってくれた。


「行くぜぇ!」

「あぁ!」


 そして僕らは飛び上がり。


「「月陽氷炎斬げつようひょうえんざん!!」」


 例のごとく合体必殺技をぶつけた。


 すると。



 バキッ バキ


 ──割れた。

 今まで全く攻撃が効かなかった竜の闇が、割れたんだ。


 これはいけるか。


 だが竜がそんな状況を許すはずもなく、僕らを振り飛ばす。


 そして。


「大暗王! 今の……」


 それを見かねた其先支部長が、促す。


「あぁ。あの二人の攻撃であれば、どうにかいけるかもしれない」


 鎧気大暗王が近寄ってくる。


「二人共、今の攻撃をもう一度与えてみてくれ!」

「はいっ!」

「全員! この二人の攻撃に集中させるぞ! 二人が攻撃を開始したら、二人に攻撃が加わらないように守れ!」


 ──大暗王に期待された。


 これは相応に返さないとな。



 そして僕らは再び温度差を高めて──


 ──攻撃を加えた。


 竜から伸びて来る闇。

 だがそれは兵達が守ってくれる。


 竜が僕らを振り飛ばそうとしても、攻撃して、竜の気を逸らしてくれる。


 僕らは気にせず攻撃を加える。



 ──だがおかしい。


 闇が割れない。

 何故だ?


 僕は闇がぶつかっているところをよく見てみる。



 ──闇が消えている。


 いや──



 ──吸われている?


 僕は危険を察知し、咄嗟に引く。


「業助! 引け──」

 僕は業助にも呼びかけようとした。



 遅かった。


 竜から激しく大きく闇が噴出される。

 みんなが吹き飛ばされる。

 その闇の衝撃が僕の所まで来て、僕も吹き飛ばされた。


 ──そして僕は立ち上がる。


「──あいつ……闇を吸収する事もできるのか──」


 僕はみんなのもとへ駆け寄った。

 みんなは──


 酷い傷を負っていた。



 よくも──

「よくも僕の……を──」


 あれ……


「僕が……たいんだ……。 邪魔するなよ──」


 僕なんて言ってるんだ?


 僕は自分の声が聞き取れない。

 僕の耳が悪いんじゃない。

 僕の闇がノイズを生み出してるんだ。

 みんなにも聞こえてないと思う。


「この──」

 僕は怒った。



「竜ごときがぁあああ!!」


 ──僕の闇が漆黒に染まる。


「うわぁぁぁあああああ!!」



 僕は竜に渾身の一撃を叩き込──


 ──瞬間、目の前が真っ暗になった。



 僕は──





 ──竜に飲まれた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る