第40話 もう怖くないよ
(ここは……どこだ……?)
意識がもうろうとする。
(僕は……)
意識がだんだんと鮮明になっていく。
「はっ」
僕は目を覚ました。
──そこは、液体の中。
周りはガラスで囲われている。
僕の体にはなにやら繋げられている。
──これは僕か?
いや違う。
これは竜だ。竜の記憶だ。
(そうだ……僕は竜と戦っていて……)
そこに、一人の研究員らしき男が。
なにやら機械をいじっている。
そして一つのボタンを押す。
その直後。
(ぐあっ、うぐああ! ああああ!)
痛い、苦しい、気持ち悪い。
辛い、悲しい辛い。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい
激しい苦しみに襲われる。
──
激しく暴れまわるが、ガラスは固くて割れない。
ポチッ
研究員がまたボタンを押して、苦しみから開放された。
──と思ったら。
ポチッ。
苦しい苦しい苦しい苦しい痛い苦しい痛い辛い苦しい苦し痛い辛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい辛い苦しい苦しい
ポチッ。
また激しい苦しみが襲ってきて、しばらくして止んだ。
だが。
ポチッ。
──また苦しみが続き、そしてやむ。
──その繰り返し。
それがしばらく行われた後、研究員は何かを記入し、去っていった。
──これが、
気がついたらここにいて、自分が何者かもわからずに、ただ苦しみを与えられる。
研究員のたったのボタンを押すという動作一つで、自分の苦しみが操られる。
──辛い。
こんなに辛いなら、いっそ消えてしまいたい。
──そして、気がついたら僕は別の空間にいた。
僕はそこを進んで行く。
ぴちゃ、ぴちゃっと足元に水が。
その先には、小さな竜がいた。
──泣いている。
そしてこう言っている。
「苦しい、苦しいよ……」
僕はそれを眺めていた。
ただ眺めていた。
「誰か……助けて……」
(僕は
僕は倒すのか──?
「助けて……私をいじめないで……」
僕と──同じなのかもしれない──
自分が何者なのかもわからない。
自分が何をしたいのかもわからない。
ただ戦っている。
「痛いよ……」
──僕と同じだ。
同じなんだ。
そして、こんなに苦しんでいる。
倒していいのか──
僕は、自分と同じ境遇のこの
──いや。
──駄目だ。
「じゃあどうする」
もう一人の僕が現れ、僕に話かけてくる。
「──助ける。」
僕はそう返す。けど。
「どうやって?」
──わからない。でも。
「どうにかして……」
そうだ──どうにかするんだ。
「君には無理だ」
「そんなの……」
──確かに、僕には無理かもしれない。
けど。
「お前は黙っていろ!!」
僕は僕に殴りかかった。
僕は空気となって消えていく。
(やらないと)
(このこが苦しんでるから──)
僕は決意する。
──救ってみせる。
僕は
「僕が君を救ってあげるよ」
「あなたは……?」
「僕はアルナだ」
「私を救うって……」
「あぁ救ってやる」
僕はそう微笑む。
「でも……だれも私を止められない……」
「僕が止めてみせるよ」
泣いて言ってきたけど僕がもっと微笑んで言った。
──そう決めたんだ。
「本当?」
「あぁ──本当だとも」
僕は一つの解決法を思いつく。
「──そうだ、君。──僕のものになってよ」
「あなたの……ものに?」
「うん、僕のものになったら、ずっと君を守ってあげる」
「それは……」
「君の苦しみも悲しみも全部、僕が受け止めてあげるよ」
「──うん」
そう、頷いて──この子は僕の方を向いて言う。
「……私あなたのものになる」
「ありがとうっ」
──僕がまもるんだ。
僕らは、微笑みあった。
初めて
「あっ、そうだ。君の名前を考えないとな」
「私の……名前……?」
「そう」
──何がいいかな。
僕のものだろ?
アルナ……くろひ……
そこで、僕はふと思い出した。
──月の部位にこんなのがあった気がする。
「そうだな……」
「君は今日から……」
「──
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