第37話 漆黒の竜。

 ──ドラゴンが降臨した。



 ──黒煙が立ち上る。



 竜は、暴れに暴れ回って、周りの建物や兵に向けて破壊の限りを尽くしている。

 兵たちの断末魔が聞こえるが、薄い。

 竜の破壊の音のほうが遥かに大きいからだ。


 その強大な力の前では、下級兵など、塵ですらない。

 ただの空気のようだ。


 その空気達は、立ち向かっているのではなく、逃げようとしている。

 しかし、風に帰ってしまう。



 ──僕はただ、その光景を眺めている事しかできなかった。


 他のみんなも、周りの兵も。

 わかっているんだ。



 ──と戦う事なんてできない、と。



 そこに。


「流輝! 私達篠崎隊も応援に──」


 篠崎さん、とその隊員二人が来た。しかしすぐにに目を奪われ、絶句する。


「あれは──何だ──」



 漆黒の竜は、その口から業火の球を吹き放ち。

 その大きな悪魔のような翼は、凄まじい衝撃を生み出し。

 そのうねる巨体は、周りのものを破壊しつくす。

 そして、その表面を大きく包み込む漆黒の闇。



「こんなの──どう倒せば良いんですか──」

「無理……ですよ……」



 ──この世の終わりだ。


 そう、思った。


 そこに、僕らの気を覚まさせるサイレンが鳴り響く。



「全、銀海軍の兵士達に告ぐ。勢力の半分以上を竜討伐に向けた! 全力で竜を倒せ!」


 その命令を期に、後ろから多くの足音が聞こえて来る。

 それは次第に大きく、力強く。



 ──振り返ると。


 ──増援だ。


 多くの兵たちが、増援に来たのだ。

 暗王階級の兵も十数人見える。


 その中に、其先支部長、上田支部長、空無中暗王もいる。


「よぉ! 閃霧隊! 呆然と立ちつくしてねぇで根性出せぇ! 俺たちが来たからにはもう安心だ」


 其先支部長のその声かけで、僕らは気力を取り戻す。


 そして、後ろから肩を叩かれる。


 空無中暗王だ。


「白使い君、俺は君の実力はこの程度でどうこう言うものではないと見るぞ。ここで戦わずしてどうする?」


 ──そうだ。


 ここでやらないで、何があるっていうんだ。


「そうですね……戦います!」

「その意気だ」


 僕は戦意を取り戻す。


 大暗王の一人が先頭に立つ。


 ──あの人は確か、銀海軍の柱の一人とも呼ばれている──



鎧気がいき大暗王だ! 鎧気がいき大暗王が来たぞ!」

「なんだって!」

鎧気がいき大暗王が来たなら勝てる!」


 鎧気がいき大暗王が来ただけで、兵たちの戦意が復活していく。

 ──勝利の象徴と呼ぶべきか。


 そして。


「それじゃあ」

 銀海軍の兵たちが、気力を取り戻し、闇器ギアを構える。


「行くぞぉぉぉおおおおお!!」

「おぉぉおおおおおおお!!」



 鎧気大暗王の掛け声で、全員が立ち向かう。






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