第28話 残党の逆襲

 ──任務の日──


 今日は閃霧隊各自で、それぞれの場所の援護だ。


 準備所に到着。

 いつもより手前の位置に準備所が新しく設けられている。

 それに、何やらけが人がいっぱいいる。


「どうしたんですか?」


「あの獄炎使いが、さらに強くなりやがった! このままじゃ危険だ!」


「業助か……」


 僕はすぐに向かう。


 そこには、大きく、そして赤く。

 前よりも獄炎ごくえんと呼ぶにふさわしい形相の闇を纏う業助がいた。


「弱い、弱いぃ! ──いや? 俺が強いのか……」


 業助は大きな笑い声をあげながら、銀海の兵たちを蹂躙していた。


 その闇は、周囲の物を溶かしながら進む。


「業助!」


 僕は業助に攻撃を入れようとした。

 しかし。


 じゅぅぅううう


 僕の闇が溶かされた。


「アルナ君の多彩な攻撃手段を見て、俺もちょっと心を入れ替えてみたんだ。したらほら、この通り!」


 業助が攻撃を迫ってくる。

 僕はどうにか持ちこたえるが、このままでは耐えられない。


 ──そして熱い。


「闇で熱を生み出しているのか……」

「そうだとも」


 ──やばい、溶かされる。



 窮地に追いこまれて、僕はあることを思いついた。


 ──熱を以て、熱を制す。


「こっちも熱くしてやる! 月上炎天げつじょうえんてん!」

「何っ」


 業助の闇が溶けだした。


「流石はアルナ君だぁ! やっぱり戦い甲斐があるよぉ!」


 お互いに闇を溶かし合う。

 互いに汗が滝のように流れ出る。


 ──このままじゃお互いに溶かし合って相打ちだ。


 そうだ。

 暑いなら寒くすればいい。


「もう熱すぎる! 月下冷敗げっかれいはい!」


 業助の闇の威力が下がる。

 そして冷気が漂う。


「お前っ! そんな事までっ!」


 次第に冷気が増していく。


「負けるかぁっ!」


 業助も負けじと獄炎の威力を増大させる。


 互いにその攻撃を打ち消し合う。


「アルナ君、楽しくなってきたか? 顔が笑ってんぞ?」

「え?」


 そんな事……。

 僕は自分の顔を触って確認した。


 ──笑っていた。



 ドガカァアア

 そこに突然の爆発。


「何だ?」


 爆発の煙から影が薄らと見えてくる。

 そしてその者は姿を現し、こう言った。


「我々は金剛である! これより、全地域からの独立を再び宣言し! 全地域への反逆を開始する!」


「なんだって!」

「生き残りか……」


 そして金剛残党の兵は、僕らに攻撃してきた。


「待て! 俺は金剛と協定を結んでいる青当の兵士だ!」


 業助がそう呼びかけるが。


「知ったことか! 我々がこの状況に追いやられたのは、青当が我々の情報を流したからに決まっているだろう! 潔く銀海もろとも散るがいい!」


 残党はさらに攻撃を仕掛けて来る。


「くそっ、アルナ。 ここは一旦休戦といかないか?」

「そうだな、……こいつは手強そうだ」


 僕らは、互いに休戦を認め、残党に向く。


「へっ、楽しくなってきたぜぇ!」

「そんな事言っといて、不意打ちとかしたらぶっ倒すからな」

「しねぇよ」


 そして僕らは互いに顔を合わせ、頷く。


「行くぞ業助!」

「あぁ!」



 ──僕らの一時共闘が始まった。




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