白光の闇使い

竜風 真

銀海篇

第1話 黒い太陽

 ─僕は自分がわからない─


 とある街に一人の少年がいた。

 普通に高校に通い、何事もなく過ごしているのであった。

 だが、彼は疑問を抱いていたのだ。

「僕は何がしたいのだろう……」


 ──彼は──


 ──無欲であった──


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


六時間目、いつものつまらない一日が終わりそうだ。


「えー皆さんご存知の通り、この国ではまぁ、今戦争が起きてるわけですが。今私達がいるこの地域、もちろんわかると思いますが東黄とうきですね。これはテストに出ますが、まぁわかるでしょう。」


こういう時に限って、時間というものは長く感じる。


「では、今東黄とうきと敵対関係にある地域はどこでしょう、わかるだけ答えてください。えー今日は10月4日なので14番。士等しどう君。」

「はい、銀海ぎんかい赤南せきなんです。」

「そのとおりですね、あと中立関係にある地域として、青当せいとう金鋼こんごうがあります。これテストに出るので、覚えときましょう。」

 

 キーンコーンカーンコーン


 いつも通りのチャイムで、いつも通り授業が終わる。そんな日常。


 特に友達のいなかった僕は、いつも通り一人で帰る。

 今日は好きな漫画「神と僕」の第7巻の発売日であるため、本屋に寄りながら帰ろうとした。


 カランカラン


 街の隅にある書店だ。家と学校から少し離れてはいるが、行きつけの店である。


 ゴーーーーーーーーーー


 本を買い終え、帰る途中。いつも通る発電所の横道。うるさい機械音も、なれたら心地がいい。なんの発電所かは知られていないが、きっと街の役に立っているのだろう。

 平和だ、戦争なんて起きてないんじゃないか。そう思っていた。


 ヒュゥーーーーーーー


「ぐうっ……」

 上空からとてつもない、ジェット機が飛ぶ、いや落ちてくるくらいの音がした。咄嗟に耳を塞ぎ、上を──


 ドォオオーーーーン


 向く前には落ちてきた。

 隣にあった壁が爆風で壊れ、そこから自分めがけて爆風が襲ってくる。

 なにが起きてるかわからずまま、必死に飛ばされないように堪えた。



 ──気がついたらどこかに落ちていた。

 上を見たらそこにはいつも通る道が。

 地下に来てしまったようだ。

 戻ろうとも考えたが、瓦礫は登れそうにない。

 携帯電話で助けを呼ぼうとも考えたが、バッグがどこかに行ってしまった。手元にあったのは、「神と僕」の7巻だけだった。

 とりあえずそれはポケットにしまい、仕方なく地下を進む。


「……らしいぞ、今回の任務」


 人の声がした。話かけようと考える前に、体は隠れていた。


「そうなのか?」

「ああ、人の脳を取り出して、刺激を与える事で、闇を生み出してるっていう噂だ」

「まじかよ……早くここを潰さないとな」

「そうだな」


 胸には、楕円を斜めに切り、片方が銀色の紋章があった。


 銀海……


 その者たちとは別の方向へ進んだ。


 行き止まりに到着、指紋認証ドアがあったので適当に指をかざしてみた。


 ピッー  ガシュゥゥー


 開いた。

 何故開いたかはわからないが、とりあえず進んでみる。


 ──唖然とした。


 そこにはこれが人の世界とは思えないほどのものが並んでいた。

 カプセルを見ると、説明のしようがないうねうねと動く謎の生物が入っている。その隣は、変な形の武器のようなものが並んでいる。そしてその奥には──


 ──人の脳と思われるものがあった。


 立ち尽くした。呆然としていたが、ふと何かを思おうとすると、ものすごい頭痛が走る。


 ドガァァア──


 突然壁が破壊され、奥の方に飛ばされた。


「ここかな……例の研究施設は」


 破壊された壁から、同年代くらいの女の子が出てくる。

 しかしその手には、つかの両側にやいばがある槍を持っていた。胸には銀海の紋章。


「そこいるのは誰?」


こちらに気付いた。

目の前にあった棒を掴み、立ち上がった。

棒を取ろうとしたら、棒が抜けた。

棒を構えた。


「──僕は──」


煙が風に流され、その姿が見える。


「──黒陽くろひ 亜月光あるなだ──」


持っていた棒が機械音を立てる


シュゥーーーー


「適正確認、闇適正有。黒陽くろひ 亜月光あるな月光剣サテライトの使用者に設定します。」


「なに……あれ……」


──彼の持つ剣には、白き刃が生え、白く燃え上がっていた。


──太陽が黒く輝いて見えた。

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