第31話 危機的状況
──僕らは堤防前に帰還。
「アルナ君、流輝さん! 戻ってきたか」
閃霧隊のみんなと集合した。
「これはやばい状況ですね」
「うん、私達も合流したことだしすぐに応援に──」
するとそこに、あからさまにヤバそうな状況だと言わんばかりの勢いで一人の兵が走ってきた。
そしてこう告げる。
「大変だ! 金剛だけじゃなく、東黄まで勢力を尽くして進軍を開始して来てる!」
「なんだって!」
僕らは慌てて堤防に登り、見渡す。
東黄軍はもう見える所にまで迫って来ていた。
そして軍兵のうち数人が──
──
大きな狼だ。そして、凶暴化していない。
まさか、
「我々東黄軍は、これより青当と銀海に、本格的な進軍を開始する!」
青当って、協定を結んでいたんじゃ無かったんか?
その疑問は、すぐに判明する。
「なぜだ! 我々は協定を結んでいたはずでは!?」
その場に居合わせた青当の兵士が、その疑問をぶつける。
「その協定は、我々東黄によって破綻された!」
「どうしてだ!」
「青当軍、君たちは我々の研究の為に土地や技術を与えてくれた。もう用済みだ」
「そんなっ! 我々は…… グッ ぐはぁっ」
青当の兵は無惨にも切り捨てられた。
「銀海軍! 君たちもだ。我々の生物実験の実戦相手になってくれてありがとう。そしてさようなら」
東黄の兵のその言葉が、過酷な現実を突きつける。
「みんな、加勢するよ!」
流輝さんの命令で、僕らは堤防を飛び降り、東黄軍の前まで向かう。
「ほぉ、強そうな奴らが来たな、お前ら! 慎重に戦えよ」
「はっ!」
隊長の後ろからずらーっと兵士が横に並ぶ。
──全部で8人か。
「かかれぇ!」
隊長の合図で、全員が攻撃を仕掛けて来る。
流輝さんと佐部さんで3人相手、爽也さんと木賊さんも3人相手。
僕は──二人相手か。
しかも一人は隊長だ……。
「でやぁああ!」
隊長が上から切り下ろしてくる。
僕はそれを避ける。
──しかし、避けた先に兵の攻撃が。
僕はそれを闇で防ぐ。
そして隊長は狼──
──それから降りる。
からの、隊長が攻撃をする──
──かと思ったが。
攻撃してきたのは闇獣の方だった。
蹴りでどうにかしようと思ったが、闇獣は軽く闇を纏っている。
蹴ったら足がひとたまりもない。
「このやろぉ!」
僕は兵を押し倒し、すぐさま闇獣を斬りつける。
するとさらに後ろから隊長が。
「てあっ!」
僕はどうにか避ける。
これじゃ実質三対一じゃないか……
──が。
頬に少し痛みが走る。
頬を切られたらしい。
「くそぉ!」
そこに後ろから兵が。
僕はそれを薙ぎ払うが。
サシュッ
──闇獣の攻撃を負った。
その場所は──
──目だった。
けど、幸いなことに、眼球自体は大丈夫なようだ。
ただ。
まぶたが痛い。
とても開けられたものではない。
──ふざけるな。
痛い。痛い。痛い。痛い。
さっきの頬の傷も痛い。
──ふざけるな。
致命傷じゃないから、大したことないんだろうけど、その時、凄く気が立っていたんだ。
危機的な状況に追い込まれてたっていうのもあると思うけど。
──よくも僕にこんな思いをさせてくれたな。
──よくも僕の顔に傷をつけてくれたな。
──こんなにムカついたのは始めてた。
──よし。
──こいつ殺すか。
僕の闇が膨大する。
さらにさらに。
大きくなる。
そして白く輝きを増す──
──いや。
色が変わった。
僕の闇が────
──黒くなった。
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