第32話 怒りのままに

「貴様! どこからそんな力を!」


 なんかごちゃごちゃ言ってる。

 うるせぇ。


 うるせぇから僕はそいつを斬った。

 一瞬ほんの少しだけ固かった。

 けどすぐに緩んだ。


 ──あれ。


 今の防御してたの?


 脆すぎてわからんかった。


 ズシュゥゥウウと血しぶきが。

 触りたくなかったから熱で溶かしてやった。


 そしてそいつの死体を見つめる。




 ──汚くて吐いちゃった。


 そこにがあるのが嫌だったから跡形も無く溶かしてやった。


「たっ 隊長! あっ、あああ、ああああ」


 兵が狂い出す。

 股間が濡れてた。


 きったね。


 僕は月光剣サテライトを振り上げ──



 ──兵を斬ると見せかけての。


 後ろから来る闇獣をぶった斬った。


 攻撃をやめない分、兵より闇獣の方がよっぽど優秀だなー。



「あ、ああああ! ああああああ──」


 兵を斬った。


 これ以上こいつの悲鳴聞いてたら僕の心が汚れる。


 こいつも汚いから溶かそっと。


 闇獣は──


 ──可愛いから死体は残しとく。



 あー、閃霧隊の皆が戦ってるなー。


 惨めだ。


 見てて損しかしないと思った。


 僕は瞬時に兵に近づき。


 斬って。

 他の兵にまた近づいて。

 斬って。


 斬って、斬って、斬って、斬って。


 全員斬り終えて。


 今度も汚いから全部溶かしてやった。


「アルナ君……何して……」


 流輝さんが恐ろしそうな表情を浮かべながら聞いてくる。


 僕は素直に。


「汚いから溶かしてます」


 そう微笑んだ。


 そうだ。

 流輝さんも────




 ──そう思ったけど、まだその時じゃないな。


 僕は飽き足らず、他の東黄の兵も潰しに行く事にした。


 あぁ、めんどくさいからこうしちゃうか。


 僕はそのへんにいた兵を斬る。


 ──んじゃなくて。


 面倒だから一気に月光剣サテライトを振って溶かして消し去る。


 僕は次々兵を溶かしていく。

 とりあえず東黄の兵だけ溶かす。


 味方の兵の顔をちょっと見てみた。

 皆変な顔をしている。


 へにょーんとか、はひーん、みたいな顔。

 僕は笑ってしまった。


 僕はそこら辺の東黄の兵を溶かして進んだ。


 しばらくそうしていると。


 声が聞こえる。

 何か指揮している声だ。


「おい! 一番隊はどうした!」

「応答がありません!」

「他の隊は? どうなっている!」

「わかりません! 応答が──ぐはぁっ」


 なんか喋ってたので斬った。

 そしてまた溶かそっと。


「貴様! 何者だ!」


 うるさいなぁ。

 僕が誰かなんてどうでもいいだろう?




 ──あれ?


 ──僕誰だっけ?


 誰だっけ誰だっけ。


 あれ?


 ──思いだせない。


「僕? 誰だ! 僕はだれだ! ダレ?!」



 ──不快だ。


 とりあえずこいつも溶かして───



 ──防がれた?



「貴様…… 貴様が兵をやったのか?」



 防がれた、防がれた防がれた。


 僕が?


 だから僕は誰だっけ。


 あぁぁあああああああぁっぁ あ

 あ  あああ  あ ああああぁあぁあ



「貴様がやったのか? やったのかと……聞いて…… い ……」



 溶けないから凍らしてやった。

 弱い。弱い


 弱い弱い 弱い弱い弱い 弱い 弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い 弱い弱 い 弱い弱い弱い弱い弱い弱 い弱い 弱い弱い弱 い弱い弱い 弱い


「ハハハッハハハッハハハハハッハハハハハッハハハハハッハハハハハ」


 僕は笑い疲れて──




 ──倒れた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る