第11話 軍での訓練

 上位階級者でも使える、広い共用訓練室に到着。


「あっ、篠崎さん! 篠崎隊の皆さんも!」

 流輝さんが入ってすぐ呼びかけた。

「この方たちは?」

「いつも一緒に訓練してもらってる、篠崎隊の皆さん」

 そう、流輝さんが教えてくれると。


「どうも、いつも流輝と一緒に訓練をしてる篠崎隊隊長、篠崎中将です。君が噂の『白使い』だね、よろしく」

 黒髪ロングのお姉さんだ。僕は握手をした。


「篠崎隊の剛田だ、よろしくな」

 いかにも「岩」という言葉が相応しいような人だ。


「影裏だ、よろしく」

 剛田さんの後ろから挨拶してきた。細身な男性だ。


 僕は三人によろしくお願いしますと返した。


「あと、エンジニアの刈谷かりたにを合わせて、四人で篠崎隊だ」



「それでなんですけど篠崎さん! アルナ君の実力を見てやって下さい」

 流輝さんが篠崎さんにお願いした。


「いいぞ。白使いと呼ばれる実力を私も見てみたいしな」

「ありがとうございます」

 篠崎さんが聞いてくれたので、僕はとりあえずお礼を言った。


「では、練習用武器で、模擬戦闘でいいな」

「はい!」


 練習用の木製の武器を武器庫から取り出す。

 篠崎さんは、盾と短剣を使うようだ。


 僕と篠崎さんは向かい合う。

「準備はいいか、流輝、合図をくれ」

「はい。では……」


 僕は、木刀を構え、唾を飲み込んだ。


「始め!」


 僕は先制を仕掛ける。

 篠崎さんは一撃目とニ撃目を足を動かさずに避けた。

 僕が三撃目を打とうとすると、避けて体をずらし、斜めから斬りかかってきた。

 僕は咄嗟に後ろに逃げる。


「避けるのはまぁまぁだな。だが攻撃が甘い。盾を使わずとも捌けるぞ」

 そう言うと僕にまっしぐらに向かってきた。

 斬りかかって来るのを僕は木刀で防ぐ。


「こんなものか?」

 篠崎さんが力強く押してくる。


 どたっ

 僕は抑えきれずに倒れた。


「避けるのはマシだが、防御と攻撃がまだまだだな」

「はい……」

 僕は落ち込みながら応えた。


「俺も行くぞ」

 剛田さんが言った。

 僕は立ち上がって。剛田さんに向かう。


「わかりました。では、始め!」


 流輝さんが合図をすると、真っ先に剛田さんが突っ込んできた。

 腕に装着したナックルで殴りかかって来たのを、僕はかろうじて横に回避した。

 しかし、すぐさま次の攻撃が来て、僕は前に転がる。

 後ろを向いた瞬間、剛田さんの拳が目の前で止まった。


「避けるのも確かに上手いが、圧倒的な力の前では役に立たないぞ」

 剛田さんは最後に、そう助言してくれた。


「次は私だな」

「はい……」


 影裏さんが僕の前に立つ。


「始め!」


 僕は突っ込んだ。木刀を振りかざす。

 当てようと思ったが目の前にはもう影裏さんは居なかった。

 後ろから肩を軽く長刀で叩かれた。


「焦りは禁物だ」

 影裏さんはそれだけ言った。


「ボロ負けしたね、アルナ君。大丈夫?」

「駄目ですね、これは……」

 心配してくれた流輝さんに対し、僕は苦笑いでそう応えた。


「確かに弱いかもしれない。だが、君は訓練を二週間しか受けていないと聞く。逆に言えば、もっと成長できるという事だ。頑張ることだな」


 落ち込んでいる僕に、篠崎さんは、そう声をかけてくれた。


「……はい!」

 僕は敬意の念を込めて返事をした。

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