第10話 軍での日常

 朝、寮の自室で目が覚めた。

 朝の支度を整え、軍服に着替える。


 昨日の人故ひとなしとの戦闘の疲れが、まだ残っている。


「あっ」

 僕はふと、棚に置かれている「神と僕」の第七巻を見つけ、思い出した。

 そういえばまだ読んでないな


「今日は時間空いてるし、読むか」


 僕は椅子に座り、ページを捲り始めた。




 すぐ読み終わった。

 面白いものほどあっという間に終わらせてしまうと言うが、その通りだな。


 やっぱり面白い。特にこの七巻のこのシーンが。

「97ページからか」

 僕はページを覚えた。

 何回見ても良い。そういうシーンだ。


 僕は読みふけっていたが、時間に気付き、軍食堂へと向かう。


 食堂に到着。

 僕は特に好きな料理とかはないが、カレーが目に入ったのでカレーを頼んだ。


 どこに座ろうかと、席を探していると。


「おっアルナ君! こっち来いよ!」


 窓際の席から呼ばれた。爽也さんだ。

 流輝さんと木賊さんも座っている。


「おはようございます!」

 僕が挨拶すると。

「おう、おはよう」

「おはよう」

「おはようございます」

 三人とも応えてくれた。

 僕は流輝さんの隣に座った。


「おっ、アルナ君もカレーを選んだんだ。お目が高いですねぇ」

 流輝さんが僕がカレーを選んだのを見かねて言ってきた。

「好きなんですか?このカレー」

 僕が聞くと、木賊さんが何かを言いかけた気がしたが、まぁいいだろう。

「うん。すっごい美味しいよ。食べてみなよ」

「はい」

 僕がカレーを口に運ぼうとすると、なぜか前の二人がそっぽを向いていたが。気にしなかった。


 ぱく

 衝撃が走った──


 僕は思わず声を出してしまった──



「うまっっっっ!!!」




「「……えっ!?」」

 僕が思わず声を漏らしたあと、数秒して二人も僕を驚きの表情で見て、声を漏らす


「ね?おいしいでしょ?」

「すんごいおいしいです!こんなカレー食べたことないです!」

 こんなカレー、今まで味わった事が無い。

 味の薄いベースに加えて、ほのかな苦味が漂ってくる。それに加え、時々酸っぱさも相まって来て、何というのか、言葉に出来ない。


「そんな……」

「あの『クソまずい』って言われて評判のカレーを好んで食べる人が二人もいるなんて……」

 爽也さんが唖然としながら言った一言に加え、木賊さんが唖然を通り越して軽蔑の目で僕らを見つめる。


「えっ?『クソまずい』って言われてるんですか!? ……こんなに美味しいのに……」

「そうだよね!みんなおかしいよね!……」

 僕も流輝さんもカレーを口に運ぶ手がどんどん進む。



 しばらくの間が通り過ぎた。


「そういえば、佐部さん見ないね?」

 思い出したかのように爽也さんが言いだす。


「佐部さんなら、いつも朝食は早くすませて、訓練に行ってますよ」

 木賊さんが応える。


「へぇー、そういえば木賊君って佐部さんと知り合いだったの?最初の集合のときも近くにいたよね」

 流輝さんが聞くと。


「訓練してた時に、同じ教室でした。まぁでも会話はしたことほとんど無かったですけどね。でも同じ隊になったって事で、互いに打ち解けましたね」

「へぇー」


 木賊さんがなりようを説明して、流輝さんが感心する。


「俺は訓練してた時の友人は別の支部にいるんだ。まぁ訓練も三年前だから最近は合ってないけどな」

 爽也さんも自分の事を語る。


「私は家が銀海軍の身内だったからなー、小さいときから軍で訓練とか受けてたから」

「そうなんですね」


 僕が流輝さんの話に相槌をうつと、流輝さんはこう付け足す。


「まぁでも、そのおかげで今強くなれてるけどね」



「ごちそうさま! 私は今から訓練しに行くけど、みんなはどうする?」


 カレーを食べ終えた流輝さんがみんなに聞く


「ごちそうさま。僕も行っていいですか?」

 僕もカレーを食べ終え、流輝さんに聞き返す。

「うん。一緒に訓練しようか」

「はい!」

 僕は快く返事をした。


「俺も、食べ終わったら行きますよ」

 爽也さんが急いで大盛りの丼ぶりを口に運びながら言う。


「僕は、備品倉庫にちょっと用があるので、そっちに行ってから向かいます」

 木賊さんもあとで向かう事を伝える。


「じゃあ先に行ってるね」


 僕らは訓練室に向かう。

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