第12話 アルナの新技

 僕が疲れて休んでいると、訓練室の扉が開いた。


「おっアルナ君! 訓練してたか?」

 爽也さんが入って来た。


「待たせましたね」

 続いて木賊さんも入って来る。


「二人共、結構遅かったですね」

 僕が言うと。


「僕は、目当てのパーツが中々見つから無かったので」

「俺は……すまん。あれじゃ物足りなくて、もう一杯食ってきた」

 爽也さんの答えにみんなが笑う。


「アルナ君、篠崎隊の皆さんと手合わせしたけど、ボロ負けしたんだ」

 流輝さんがさっきの出来事を話す。


「篠崎隊と?」

 爽也さんが興味ありげな感じで聞く。


「そうだ」

 爽也さんの後ろから篠崎さんが声を掛けて来た。


「!? ……篠崎さん!?」

 爽也さんが驚く。


「始めまして。篠崎隊隊長、篠崎だ。よろしく」


「よっ、よろしくお願いします!」

 爽也さんが飛び跳ねるかのように握手して応える。


「僕も、話ができて光栄です!」

 木賊さんもそう言って握手する。


 唖然とする僕。


「アルナ君知らなかった? 篠崎隊は結構有名な小隊なんだよ」


 そこに流輝さんが教えてくれた。


「そりゃあボロ負けしますよ」

 僕は安心と自分への呆れでそう呟いた。


 そこに。


「あっ! 危ない!」

 誰かがこちらに呼びかけて来たので、そっちを向くと、短刀の闇器ギアが僕めがけて飛んでくる。


 僕は反射的に片腕で頭を塞ぎ、もう片方の手を飛んでくる闇器に向けた。


 ボカッッ


 ──闇器が空中で爆発した。

 僕はその残骸を頭から浴びる。


「すみません! 大丈夫でしたか?」

 投げたと思われる女の人が駆け寄ってくる。


「かろうじて……大丈夫」

 僕はそう答えたが。


「いや、それ大丈夫じゃないでしょ」

 爽也さんが笑いながら突っ込む。

「全身残骸まみれだね」

 流輝さんも。


「本当にすみません……」

 投げた女の人は心から謝罪をしているようだった。特に嫌なわけでもないしと思い。

「まぁ、けが人出ませんでしたし、大丈夫ですよ」

 僕は残骸を払いながらそう応えた。


「すみません……残骸は私が処理するので……」

 そう言って女の人はほうきを持ってきて残骸を集める。


「爆発系の闇器の練習をしてたんですか?」

 流輝さんが集めるのを手伝いながら聞く。

 みんなも残骸を集め始めたので、僕も集める。


「いえ、普通の短刀型の闇器です……なぜ爆発したのかはわかりません……」

 女の人の答えに、流輝さんはんーと考えて、あっと僕に聞いてくる。


「そういえばアルナ君って月光剣サテライト以外を使うと爆発するんだっけ? 椎名さんから聞いたけど」


「はい、そうですけど」

 僕は普通に答えると、流輝さんはでもなーと言い。

「距離があったしなー」

 というとまた考え、またあっと気づいたように言い出した。


「遠隔操作? ……かな?」

「遠隔操作?」


 遠隔操作ってあの遠隔操作か?

 闇使ダークナーとは関係なさそうな単語に、僕は不思議ながら聞いた。


「そう。心の闇によっては、闇器をある程度遠隔操作できる人もいるんだ。あんまり知られてないけど、本部の空無そらなしさんとか……」


「そんな事できるんですか!?」

 流輝さんの裏の知識に、僕は驚きながら聞く。


「やってみよっか。月光剣サテライトちょっと貸して?」

 そう言うと流輝さんは、残骸の片付けを終え、僕の腰から月光剣サテライトを抜き出した。


「あっ」


「はい、これでよし。アルナ君、これをその位置から動かそうとしてみて?」


 さっと土台を持ってきて、月光剣サテライトを置くと、そう言ってきた。


「わかりました……やってみます……」

 無理だろうとは思う。

 けどまぁやってみたほうが良いので、手を月光剣サテライトに向け、意識を集中した。



 シューーー

 月光剣サテライトから煙が出る。


月光剣サテライト、遠隔操作システム構築。構築完了。遠隔操作システムを実行します。」


 ボォォォワアア

 白い霧が勢いよく燃え上がった。


「ほんとにできちゃった……」

 できると思ってなかったんですかって突っ込みたくなる反応の流輝さん。


「えっ? 夢? じゃないよな?」

 爽也さんが頬をつねりながら驚く。


「……」

 木賊さんは驚きで声が出てない。珍しく口が空いている。


「まじか」

 僕はいまいち実感が沸かず、そんな反応だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る