第6話 初めての魔法陣!豚、牛、鳥。どの肉も旨いが、コストと料理のしやすさなら、やっぱ豚でしょ。異論は認める。肉はすべからく至高。

 テリータと外へ向かう。部屋の外で待機していたリリーヌーが俺たちが出てくるのを見つけ近寄ってくる。


「ユタカ様、一度家族の様子を見て参りますです。失礼しますです。」


 俺は飢餓に襲われているのを思い出し、持っていたままだったポテチをリリーヌーに持たせる。と言っても、ほとんどこいつが食べて、残り数袋だが。


「こ、これはありが……」


 お礼を言いかけるリリーヌーの口を慌てて抑え、言う。


「いいからいいから!こっそり持ってけ。家族も腹空かせてるんだろ。じゃあな」


 少し涙目で頭を下げるリリーヌーを置いて、俺は急いでテリータを追いかける。


 土間にはすでにテリータの姿はない。急いで靴を履き外に出る。

 テリータは俺の方を見て、俺の後を見て軽く頷く。

 俺の後ろからリリーヌーが出てきていたようだ。

 そのまま去っていくリリーヌー。


 何故か暖かい目でこっちを見てくるテリータ。


(ああ、俺が持っていた袋をリリーヌーが持っていたから、食べ物あげたのを察したのかー。さすが長ってだけあって目端が利く。しかもあれ、わざと生暖かい視線送ってるぽいよな。いい人なんですねーってテリータが思ってると俺に思わせたい系?なんか政治チックでやだー)


 俺は思考がぐるぐるしてくるがめんどくさくなって、思考を放棄し、テリータに声をかける。


「それでテリータ、次はどうするんだ?」


「わざわざ出てきてもらったのは、ユタカ様の魔力量ですと、先ほどのように抑えてもらっても甚大な威力が出る恐れがあったからです。ここなら広場になっているので、少しぐらいなら大丈夫かと。」


 俺は回りを見回す。

 確かに広々としている。


「ここは村民の集会とかに使っております。」


 テリータが俺の挙動を見て、言う。


「では、さっそくやって見せます。まずはやはり基本の火種の魔法です。よく見てて下さい。」


 そういうとテリータは集中した様子を見せる。

 すぐにテリータの指が光だす。リリーヌーよりかは濃いが、それでもその光はうっすらとしたものだった。


 テリータは光らせた右手の人差し指で地面に『火』と漢字を書く。


「まずは象徴となる図形を描きます。」

 テリータは説明しながら指を動かす。


『火』の文字はリリーヌーよりもしっかりしていて、形も間違いなく漢字の火の字だとわかる。

 リリーヌーのものは少し崩れていて一瞬何これと思うような文字だった。

 しかし、俺はテリータの書いたものを見て、魔法陣が漢字を使うことに確信が持てた。


「この図形は神象文字と言われています。しかし、その文字としての意味や読み方は遥か昔に失われ、今は皆、図形として暗記して魔法陣を書いています。この神象文字の含む軽魔素の量や形の精度で威力や効果時間が変わってきます。」


 テリータはそのまま『火』の文字の回りを丸く囲むように書いていく。


「神象文字を書き終わったら、次に円で囲みます。この円の大きさが範囲を決めます。また、綺麗な円なほど、効率よく神象文字の軽魔素が魔法として発現します。」


 ここも動きはリリーヌーと同じだが、丸の滑らかさはテリータが圧倒的に上手い。 


 テリータが丸を書き終わると文字と円が光だす。


 円の中心で火種が現れる。


 しばらく火種を出したあと、テリータは光らせた指で、魔法陣の円の部分を切るように指を動かす。


 その瞬間、魔法陣が消え、火も消える。


「このように魔法陣を壊すことで途中でやめることも出来ます。」


 消えた魔法陣を示しながら説明するテリータ。


 俺は我慢できなくなり、さっそくやってみることにする。


「ありがとう!やってみるよ」


「え、ユタカ様、まだ説明が……」


 まだ話が途中感を滲ませながらテリータが話しかけてくるが、その時には俺はすっかり自身の魔力に集中している。


 俺は重魔素を軽く回転させて指先だけ光らすと、さっそく地面に指をつける。


 そのままゆっくり地面をなぞると、俺の軽魔素が地面にべったりとついていく。


 ひとまず横棒を書いてみる。


 ……書けた!


 しばらくそのまま眺めているが、消える気配はない。


 自分の意思で消えるのかと念じてみるが、特に何も変わらない。


(一度書くと簡単には消えないのか。軽魔素ってやっぱり扱いにくいわー)


 俺はこのあとどうするか、悩んでしまう。


(横棒から火の字って無理じゃね?)


「うーん」


 思わず考え込む。


「ま、いっか適当にー」


 俺は横棒に縦棒二本足して、そのあと横横縦と線を引く。


「な、何ですかその図は!?神象文字?」


 テリータの驚いたような声を聞き流し、大きく丸で文字を囲む。


 囲み終わった瞬間、カッと強く光を放つ魔法陣。


 思わず眩しくて俺も手をかざし、目をつぶる。


 目を開けると、そこには芋が!


 まさに山と積まれた芋が、デンッと存在していた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る