第2話 魔法を目撃!魔法をつまみに酒っていいよね。

 あのあと、ポテチの美味しさにも目を見開き、貪るように食べて落ち着いたのか、ガリガリの子供がこちらを向いてくれたので、さっそく声をかけてみる。


「えっと、落ち着いたかな。俺の名前はデブイユタカ。デブイが姓でユタカが名前だ。君の名前は?」


 ガリガリの子供はポテチの油でベトベトの顔を地面に擦り付けるように土下座をすると答える。


「魔導師様、これはとんだ失礼しましたです。おらの名前はリリーヌーと言います。こんな美味しい物を頂きまして、本当にありがとうございますです。」


「あー、リリーヌーくんかな。とりあえず顔をあげてよ。話しにくいしさ。あと、話し方も普通でいいよ?」


「わかりましたです。それと魔導師様、おら、成人した女人なので、リリーヌーと呼んで下さい。」


 リリーヌーは顔を上げながら答える。


 思わず俺はまじまじとその顔を凝視してしまう。


(言われてみれば確かに女性っぽい顔つきだけど、絶対子供だろ。背だって低いし。)


 俺は驚きを隠しきれずに聞いてしまう。


「えっとそれは申し訳ない。えー。だいぶ若く見えて、ね。何歳なのかな?」


「16歳になりますです。」


(まじか。せいぜい10歳くらいにしか見えないよ。しかも成人したって言ってたよな。ここは日本じゃないのかな。)


 俺は恐る恐る聞いてみる。


「質問ばかりで申し訳ないんだけど、いいかな。ここはどこでリリーヌーは何してたの?」


「命の恩人の魔導師様のお役に立てるなら何でも聞いて下さいです。ここはコレー村の近くの森で、おらはお腹空きすぎて、食べ物を探していました。でも、食べられる木の実のなる木は全て枯れていて、果物や食べられる山菜も獣達に荒らされていて。」


「それで行き倒れそうになったときに俺と出会ったんだね。コレー村には食べ物ないの?この国の名前は何?あと、ずっと気になったんだけど魔導師って何?」


 俺は矢継ぎ早に質問をする。聞けば聞くほど気になることばかりだが、ようやくずっと気になっていた『魔導師』についても質問をしてみる。


「はい、村もずっと凶作で。しかも年々酷くなっているんです。もうすっかり食べ物もなくて。この国の名前はわからないです。魔導師様は魔導師様なのではないのですか。見たこともないお召し物を着て、偉丈夫なお体をされていらっしゃいます。噂に聞く魔導師よりもご立派なお姿なのでてっきり魔導師様かと思いましたです。」


(凶作で飢えていたのか。日本じゃあんまり想像つかないな。虐待とかで餓死ってのは聞くけど、どうやら少なくともコレー村って所は村人全員餓死寸前って感じなのか。それに自分の国の名前もわからないって絶対日本じゃないよな。そして魔導師についても何もわからんぞ。)


 俺は要領を得ないリリーヌーの魔導師の説明に、聞き方を変えてみることにする。


「つまり、俺みたいに豊満な体型だと魔導師なのかな?あと、俺のことはユタカでいいから。」


 リリーヌーは頷きながらも不安そうに言います。


「はい、ユタカ様。おらも噂で聞いただけなのですが、体の大きさが大きいほど強い魔導師様だと思います。」


 俺は内心首をひねる。

(体格と魔法に関係があるのか?どういうことだろ。)


 リリーヌーは続ける。


「ユタカ様は魔法はお使いにならない、ですか?」


「俺は使ったことないな。リリーヌーは使えるのか。」


「はい、火をつけるのと、水を少し出すだけですが。おらは魔力が少なくて、誰でも出来るその2つだけしか出来ない、です。」


(おおっ、この子、魔法使えるの!?見てみたい!誰でも出来るならもしかしたら俺も使えるかも!?)


「リリーヌーさん!使って見せてもらうことは出来るかな!」


 俺は前のめりになって問いかける。


 リリーヌーは少し身を引きながらも立ち上がり答える。


「は、はい。わかりましたです。」


 改めて立ち上がったリリーヌーの頭の高さが、自分の胸ぐらいまでしかない。


(背も低いし、やっぱり子供にしか見えないよなー。いやいや、今はそれより魔法、魔法!見逃さないようにしなきゃ。)


 目をつぶって、集中した様子のリリーヌー。


 その指がうっすらと光り出す。


 目をうっすらと開け、しゃがんで指を地面につけ、ゆっくりと動かし始める。


 俺が固唾飲んで見ていると、どうやら地面に指で文字を書いているようだ。


 リリーヌーの指の通った跡が指と同じように光っている。


 リリーヌーの指の動きが止まる。


 地面には光で「火」という漢字がかかれていた。


 そのままリリーヌーが光る「火」の文字の回りを丸く、光る指で円を書いて行く。


 指が円を書き終えるとリリーヌーは一歩下がる。そこには光で描かれた円と円の中の「火」の漢字が地面に書かれていた。


 その時、円が輝きをまし、次の瞬間、円の中央にロウソクぐらいの火が立ち上る。


「おおっ、火が出た!」


「ふー。成功したです。」


 俺が食い入るように魔法の火を見ていると、ゆっくりと円と火の漢字の光が消えていき、完全に光が消えると同時にロウソク大の火も消えた。


「おらの魔力だとこれぐらいの火が限界です。」


「いやいや、すごいよ!俺にもやり方教えて!」


 俺は興奮のあまり、気がつけばリリーヌーの肩を掴んで頼み込んでいた。

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