第3話 異世界の村へ初めての訪問!初めてと言えばアレンジできる家系ラーメン、最初は普通を頼みます。二回目からベストを探していく楽しみ。

「それでどうやるの?リリーヌー!ねえねえ、どうやるの?」


(漢字だよね!真ん中の文字は、歪んでいるけどどう見ても『火』って読める。そういや普通にリリーヌーと話せてるよな。日本語使っているのか?どういうことだ?いやいや、そんなことより魔法だよ魔法!)

 俺は興奮し、思考はぐるぐるしながら、リリーヌーに詰め寄る。


 リリーヌーも焦ったように早口で答える。


「お、落ち着いてくださいです。ユタカ様!おらもあんまり魔法は詳しくないのです!だから、ちゃんとした説明とか出来ないです。何でも聞いて下さいと言ったのに申し訳ないですー。でもでも、もしよかったらおらの村に来ませんか?村長代行ならおらよりも学があるからきっと詳しく説明出来るのです……」


「おおっ、行く行く!案内よろしくね!」


 俺はすっかり魔法に夢中になっていた。



 俺はさっそく出発することにし、リリーヌーに案内されて村に向かって歩き始めた。



 そのまま数時間、森の中を歩いたが俺は不思議と疲れない。軽い疲労感はあるが、元の世界なら、こんなに歩いたら汗だくで、膝はガクガクになっているだろうに。

 どちらかといえば、ガリガリのリリーヌーの方が、見た目通り体力がないのだろう。だいぶ疲れた様子なので、小休止を取らせることになった。


 小休止の間に、リリーヌーに聞いた話によると、魔力の多い俺は体も強いらしい。だから疲れにくいんじゃないかと。


 それを聞いて、喜び勇んで近くの木を殴り付けに向かう俺。


 振りかぶり、全力のストレートを木の幹におみまいする。


 体を思いっきり捻った衝撃で、俺の腹のお肉様がぶるんぶるんと波打つのを感じる。


 しかし、木はびくともしなかった。

 穴も空かないし、漫画みたいなドーンとかドシーンといった爆音も鳴らず。


 拳を木に当てたまま、固まる俺。


 ゆっくり体勢を戻し、振り返ると、リリーヌーがこちらを見ている。


 何しているんだという、呆れたようなリリーヌーの視線が痛い。


 俺はそっと視線を反らし、何事もなかったかのように小休止しているリリーヌーから少し離れて座る。


 リリーヌーの方を見るのが気まずくて、空を眺めながらぼーとする。


(そういや木を全力で殴ったけど手は全く痛くないな。それならやっぱり何かしら強くなってるのか?ゲームに例えるなら、攻撃力が上がらなくて防御力だけ上がったとか?要検討だな、後で)


 つらつらと考えていると、リリーヌーが立ち上がったので、小休止を切り上げ、また歩き始める。

 何故かより一層リリーヌーと距離ができたかのような悲しい思いが沸いてくるが、圧し殺し、ただ足を進める。


 森が切れ、草原に出ると遠目に村が見えてきた。


 さらに体感で一時間ほど歩き、村に近づく。


 荒れ地のなか、ぽつんと木の柵に囲まれた様子の村だ。


 正面の大きめの閉まってる門からそれて進むリリーヌーに続く。


 どうやら人用の入り口があるようだ。


 細めの木戸を押し開け進むリリーヌーに続く。


「おっ」


 腹がつかえる。


 強引に体を捻りながら押し込み、何とか木戸をくぐり抜ける。


「ふぅ」


 俺はやりきった感を滲ませながら額の汗を拭う。


 なんとも言えない顔でこちらを見ていたリリーヌーに、進むように促す。


 木戸を抜けたことで村の家が見てるようになった。


(だいぶ、ひなびた……趣のある家が多いな。やっぱり魔法もあるみたいだし、異世界確定かー。)


 俺はキョロキョロしながらリリーヌーの後に着いていく。


 途中、村人らしき人を何度か見かける。


 特に誰も近寄ってこない。


(おいおい、子供ばっかりじゃないか。うん?違うのか、皆栄養状態が悪くて小柄なのか?)


 歩きながらリリーヌーに聞いてみる。


「なあ、リリーヌー」


「どうかしました、ユタカ様?」


「村の人ってみんなリリーヌーぐらいの背の?」


「そうですね、大人はみんな、おらと同じくらいだと思いますです。でも、男手はみな戦争に行ってて、今村にいるのはおなごと子どもばっかりです。」


「そ、そうなんだ。」


(うわ、戦争とかあるのか。なんか重い話題が多すぎじゃね?飢餓に戦争って。ヤバい世界に飛ばされて来たのか?どうせ異世界転移するならベリーイージーな世界がよかったのに。)



 リリーヌーと話ながら歩いていると、まわりより少し大きな建物が見えてくる。


「ユタカ様、ここが村長の家です。」


「村長代行じゃなくて?」


「代行は村長の奥さんなんです。村長も戦争に行っちゃったから、奥さんが代行として頑張ってるんです。」


「お、おお。なるほどね。」


「ちょっとここで待っててもらえますです?おもてなしの準備を伝えて来ますです。」


 俺は頷き、リリーヌーは村長の家に入っていく。


 一人になると、急に視線を感じる。遠巻きに村人達がこっちを伺っているみたいだ。


(まあ、そんなに大きな村じゃ無さそうだし、急に知らない人間が来たらこんな感じになるのはわかるけど……。居心地悪いな。)


 俺は手持ちぶさたなのもあり、リリーヌーの使っていた魔法について考えることにする。


(確か、リリーヌーは指を光らせて、その光で地面に漢字っぽいのを書いていたよな。あの光ってたのが魔力?リリーヌーの話の断片から推測するに、体が大きいほど魔力があるってことだから、体のなかの魔力を使って魔法を使っている可能性が高いよな。俺の体にも魔力があるのか?)


 俺は目を閉じて自分の体に意識を集中する。


(まずはやっぱり心臓でしょ。こういうのは血に魔力が宿るのが定番だしな。)


 俺は自信の偏った異世界物語系の知識を元に、胸に手を当て、自身の心臓の鼓動に意識を集中する。


(……何も感じない。ドキドキはしているけど、全身を巡る魔力とか、心臓に宿る魔力溜まりとか、全く感じないぞ。)


 俺は目を開け、自身の体を見下ろす。


(やっぱりそんなに簡単にはわからないのかな。村長代行さんとやらの説明聞いてからにすっかな)


 俺はさっぱりな手応えに、落胆して自らの体を見下ろす。


(そういや、こっち来て、何か腹痛になりそうなならなそうな違和感をお腹に感じたよな。)


 そう考えながら、お腹を撫でる。


 意識するとまだ、お腹に違和感がある。


(これが魔力だったりしないよな。ほーら、動けー)


 俺が何気なくお腹の違和感に向けて動くように考えた瞬間、モゾリと何かがお腹で動くのを感じた。


「うへっあっ」


 お腹で何かが動いた何とも言えない奇妙な感触に、思わず、変な声をあげてしまうのだった。

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