第38話 食べ物で遊んではいけません。それは未来の自分の一部かもしれないんですよ。

 ラキトハは書き置きを残していたらしい。


 モレナが読み上げてくれる。


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 魔導師ユタカ殿


 ここまでの旅ではお世話になりました。

 これまで経験した巡礼の旅の、どれとも違った旅路、

 刺激的な毎日でした。

 願わくば姉も共に経験できていたらと思うばかりです。


 さて、その愚姉ですが、王都の近くに巡礼教団の隠し寺院があります。

 愚姉はそこに身を潜めている可能性があります。

 妾はここで別行動とさせて頂き、愚姉を迎えに行かせて頂きます。


 ユタカ殿の未来に幸多きことを。


           宣託者ラキトハ

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 モレナが読み終わる。

 いつの間にか皆が集まってきて、こちらを見ている。

 どうやら皆、俺が話すのを待っているようだ。


(そういや俺が雇い主だった。)


 俺はぽんっと一つ腹を打ってから、皆の方を向き話し始める。


「あー。俺はラキトハ姉妹を迎えに行こうかと思うんだが、どうだろう。ほら、ラキトハ姉がいたら、王都の情報とか聞けるかもしれないじゃん?」


 俺はついつい、そんなことを付け足してしまう。


「わかりました。おい、誰か巡礼教団の隠し寺院について知っているやつはいるか?」


 モレナが代表して答え、すぐに動き始める。


 すぐに隊員の一人から手が上がる。


(あ、あの子はつまみ食いのうまい奴だ。)


 それは俺がこっそり心の中で同士と呼んでいる少女だった。


 同士はモレナに答える。


「はいっ!うちは代々巡礼教団の信者なんだけど、私のおじいちゃんが話しているのを聞いたことがあるよ。何でもダンジョンの中なんだって。」


「王都の近くのダンジョンか。確か沼の近くと平原に、2つあったが、どちらも枯れてしまったんじゃなかったか。」


 と、モレナ。


(ダンジョンなんてあるんだ。)


「なあ、ミレーナ、ダンジョンが枯れるとどうなるんだ?」


 俺は何故か暇そうにしているミレーナにきく。


「魔素尽きて、モンスターが出なくなる。」


 言葉少なに答えるミレーナ。


 モレナの近くにガンゾールが近づき、声をかける。


「判断に迷ったら、占ってあげましょうか?」


「鋳掛け屋の占いは当たるとはきくが……」


 そこでこちらを見てくるモレナ。


「え、ええ?」


 なぜこちらを見ているかわからず戸惑う俺。


(占ってやろうか決めるかどうか、決めろってこと?)


 ガンゾールが戸惑う俺に声をかけてくる。


「ユタカ様、恐縮なんですが、はるか昔、占い当たりやすくする神象文字があったって伝説がありましてね。もしかしたら何か心当たりとかございませんかね。」


 俺は言われて考え出す。


(言われてすぐに思い付くのは『占』だけど、そんな単純かな。あとは『運』とか?『当』てるとかも可能性はあるか。)


「何個か思い付くのはあるけど、どれかわからないな」


 俺は答える。


「伝説では額に描くそうです。運命を読めるようになるとか。」


「うーん。失敗すると、不味いよね?」


「不味いですね。最悪の事態もあります。こう、ぱーんと。」


 何故か笑顔で答えるガンゾール。


(Mなのか、こいつ。さて、運命を見通す、か。やっぱり『運』かな。でもなんか違いそう。運命を見通す。運命を見通す。もしかして……)


 俺はガンゾールに答える。


「もしかすると、わかったかもしれない。」


「本当に!さすがユタカ様!」


「だけど、確実じゃないぞ。本当にやるか?」


「お願いします。」


 躊躇なく答えるガンゾール。


「よし、わかった!」


 俺は重魔素を回転し、ガンゾールの額に魔法陣を書き始める。


 慎重に慎重に描いていく。

 縦。横、縦。横、横、横。


 慎重に円で閉じ、様子を伺う。


 かっと光るが、魔法陣が崩壊することなく、額で輝いている。

 その額には『目』の文字が。


「あー。ガンゾール、どうだ?」


 ぼーとした様子のガンゾールに声をかける。

 なんだか視線が定まらず、危うげな様子に見える。


「不思議な気分です。運命が七色に輝いています?」


 俺は思わず隣にいるモレナと顔を見合せ小声できく。


「こいつ、大丈夫か?」


「多分。魔法陣の効果では?」


「トリップするような魔法陣じゃないんだがな」


 おもむろにガンゾールがカードの束を取り出す。

 目をつむったまま、シャッフルし始める。

 ふと、手を止め、一枚のカードを裏のまま差し出してくる。

 ガンゾールの顔を見ると、目を閉じ、額に光る『目』の文字がピカピカ点滅している。


「騎手です。ラキトハは平原のダンジョン、地下三階に。」


 俺は笑いと紙一重の異様な雰囲気のガンゾールに気圧されながらカードを受け取り、表返すと、確かに騎手の絵柄がかかれていた。

 ガンゾールの額の文字が消える。

 ガンゾールは夢から覚めたような顔をしている。


「よし、平原のダンジョンに向かうぞ。」


 俺は行き先を宣言する。


(額に第三の目って、アニメとか漫画だよね、元ネタ。なんだか、やな予感が。)


 俺は、この時の予感をもっとしっかりと考察すべきだったが、出発に紛れて、いつの間にか忘れてしまっていた。




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