第47話 コーラにするか、否か。それが問題だ。
「すっみませんでしたっーー。まちがえまっしたーー」
目の前で女神が土下座している。
あのあと色々と確認して貰ったら、だんだんと青ざめていく女神の顔色。そして突然のスライディング土下座。
俺は『目』でその様子を冷静に見ている。
霊体だけの世界で土下座なんて所詮ポーズに過ぎない。
俺の認識を弄って、そう見せているだけなのが『目』には、はっきりと写っている。
しかし、この『目』だって、所詮は目の前の女神の作ったシステムに則ったものに過ぎない。俺が、全てが茶番に過ぎないことを見てとっていることに気づいていて、それでも目の前の女神は茶番を続けているわけだ。
(なんと不毛な。まあ、このノリで行くと言うのなら仕方ない。目の前の女神は全てを覆すにたる力を持っていることに間違いはないのだし。)
「あー、めがみさま。かおをあげてください。間違いの内容を出来たら詳しくお願いします。」
俺は半分棒読みで問いかける。
「実はですね、夜更かししてたら寝過ごしてしまったみたいで。最初のトラック転生アラームが鳴ったのに気付かなかったんです。それで転生アラームが鳴ってると飛び起きて、すぐに(時間を)止めて、貴方をここ、神の間に召喚したのですけど……。ちなみに転生アラームってのは管理している世界で転生タイミングな人が出たときに教えてくれるアラームです。」
(目覚まし時計がわりかっ!)
俺は内心ツッコミつつ、きっとツッコミ待ちなんだろと、無視することにする。
「あー。最初の地球の方の転生予定者をスルーしちゃった訳ですね。そちらの方が邪神の使途と戦う予定だったと。」
「あら、良くわかりましたねー。そうなんですよー。残念ながらもうすでに天に召されてしまいましたが。」
(お前が寝過ごしてしまったせいでね。)
「それで、どうして俺があちらの世界に迷い込んだかわかります?」
「あー。分かりやすく言うと、転生させる予定の隙間があったから、世界が隙間を埋めるために自動でってか☆ん☆じっ、かなー?」
(詳しくは秘密ってことか。偶発的だったのは確かなんだな。)
「なるほど……。それで、このあと、俺はどうなります?地球に送りかえされますか? あちらの世界に戻れますか。」
「どちらもできるし、どちらでもオッケー!」
何故か、そこで似合わないウィンクをする女神。
「どちらでもオッケーってとこを詳しく。」
「はーいはーい。なんだか素直なんで丁寧に教えちゃうぞー。素直が一番だー」
すでにキャラが崩れている女神。
(何で、そんなすぐに放棄するようなキャラ付けしているんだ、こいつは。いやいや、スルーだスルー。)
「よろしくおねがいいたします。」
再び棒読みで答える俺。
「地球から、こちらの世界に来たときに、君は世界間の特異点になったんだよねー。でも、それは次世代の継承準備が済んでいるから、どっちでもオッケー!」
びしっと、どや顔で答える女神。
俺はしばらく待つが答えは以上らしい。
(これは天然かおちょくられているのか判断に困る。)
仕方ないので、『目』の情報と推測を合わせて、答え合わせをすることにする。
「あー。確認してもよろしいですか?」
「ちょっとだけだよ~。」
(制限つけてきたよ。)
「世界間の特異点とは何ですか?」
「世界と世界の間でエネルギーが通る管」
(なるほど……。通りで、俺だけ魔法を使っても消費カロリーより生み出すカロリーが高い訳だ。この世界だけで見たら永久機関みたいなもんか。そのエネルギーを地球から引っ張って来ているんだな。)
「特異点が継承されるのは誰ですか。あと、そのタイミングは?」
「シェルツェ・ユ・ギュンニュワール。タイミングは君がこちらの世界で死んだときか、地球に転生して戻った時。」
(あの赤子か! 腹手合わせでだいぶ魔素を使われたと思ったら……。きっとこいつがどこかで仕組んでいる気がするが、今はスルーだ。)
「おお、そろそろ時間だ。さあ、デブイユタカ、選びなさい。君は転生を望むか否か。」
俺の足元から、軽魔素ににた光の粒子が立ち上ぼり始める。
俺はこれまでの出来事を急いで思い返す。
不遇だった地球での生活。
守りたいと思った人たち。
残してきたもの。
俺に付き従ってくれたもの達。
(答えは決まったようなか、赤子に世界の命運を託すとか、心理的に無理。黒水隊のみんなも怪我してるかもだしな)
「地球には転生しません。」
(バイバイ、愛しのコーラ。)
「あいわかった、それでは君の異世界での転移ライフに、幸多からんことを。」
立ち上る光の粒子が俺にまとわりつく。
こうして俺は神との邂逅を果たし、正式に異世界での生活が始まった。
完
贅肉魔法物語 ~そこは、体脂肪率が魔力の強さに直結する異世界でした~ 御手々ぽんた@辺境の錬金術師コミック発売 @ponpontaa
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