第24話 異世界戦場メシ『携帯ダンゴ』
――さあ、ここからが勝負だ。
まずは支給されているアイテムが何か、確認しないといけないな。
早速、備え付けの道具箱を覗きこんだ。
しかし冷静な俺と引き換えフィーリアはというと、乳を振り乱して怖がっていた。
「もう大げさだな、ワラビ採りに行くだけだろうが」
「うわ~ん、やだやだぁ! フィーはキャンプでお留守番してますぅ!」
「ったくどっちがハンターなんだか……」
あまりのヘタレぶりに呆れながらも、箱の中身を取り出しにかかる。
「地図があるな、まぁ標準か。……お! 携帯ダンゴがあるぞ!」
携帯ダンゴとは、スタミナ回復用のアイテムだ。
性能は決して優秀とは言えないが、この状況だと涙が出るほど嬉しい。
「クソッ、二つしかねえのか。そしたら一個ずつだな」
「フィーにくれるですかぁ」
「スタミナつけないと疲れるぞ。すぐ終わらせるためにこれから走るからな、先食っとけ」
ダンゴはピンポン玉ほどの、茶色くて固い食料だった。
周りにきな粉がまぶしてあって、いかにも戦場メシといった風情である。
ああ、なんて素晴らしいんだ。
ゲームの食べ物を食うなんて、ガキの頃からの憧れだった。
胸を膨らませて頬張った。
モグモグ……、何だ、コレ。
たぶん大豆を使っているのだろう、しっかりと豆の味はする。
だが土くれのような妙な味が、ずっと舌につきまとった。
それに、すごく変な匂いだ。
草のような、薬のような、およそ食べ物とはいえない不快な香りである。
食感ときたら、これがまたヒドイ。
やたらと固い癖に食感はモソモソボソボソして、口の水分が根こそぎ奪われた。その上、きな粉の粉っぽさが嫌に残る……。
はっきり言ってマズイ、クソマズイ。
俺が思い描いた戦場メシの夢は、一瞬で砕け散った。
「……食えたもんじゃないな」
「え、そうですかぁ。コチラでは普通ですよぉ」
「嘘だろ!? メシマズにも程がある」
「マスターのご飯が美味しすぎるのですぅ」
お嬢さまのフィーリアが言っているのだから、間違いない。
彼女が俺の適当な手料理にあれだけ感動した理由が、今わかった。
「ゲーム画面ではウマそうに見えたのにな」
それでも食わないとスタミナを補給する手段はない。
我慢して残りのダンゴも無理やり飲み下した。
すると、不思議と身体が軽くなったように感じた。
これがスタミナ、というヤツなのだろうか。
ダンゴの最悪の後味を口の中に残しつつ、気を取り直して準備運動をする。
「よし、手っ取り早く採るもの採るぞ」
「あ~ん、わかりましたぁ」
地図とコンパスを頼りに、キャンプエリアを飛び出した。
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