第4話 ヒロイン創造
では俺の持論を展開してやろう。
「ロリ巨乳など、そんなものは素人がやること」である。
まだエロスの入り口に立った若人なら、致し方ないかもしれない。
ロリ巨乳の一番の魅力はそのギャップ。
あどけないのに、身体は完全に大人の女。
これがいいのだ、認めよう。俺もそこを通ってきた。
しかしだ。それではあまりにも、即物的すぎるのだ。
ロリと巨乳、このエロの二大巨頭をいっぺんに楽しみたい。
その気持ちはよく解る。だがそれはあまりにも刺激が強い。
もろ刃の刃ということに、気がつかなければならない。
その刺激を楽しんだ後、次は一体何を楽しむというのだ。
人は常に、更に強いモノを求める。
調味料の量が際限なく増えてしまうように。
過激さには限界がある。ではどうすればよいか。
その答えは、「曖昧さ」そして「想像力」にあると俺は考えている。
ロリと巨乳がエロの一つの極致とするならば、その中間を取ればよい。
「俺はそれより……もっと大人っぽいのが好みだ。背はまあ、そこそこ欲しい」
「吾輩は無理じゃ! 背は150センチ以下!」
「さすが夏木」
「二次元でくらい、夢を見たいお」
「そうだな……じゃあ俺は15、6歳の綺麗めを目指すわ。綺麗めお嬢さま風」
「春田の趣味はわからん」
「だから世の中回ってるんだろ。じゃなかったら、アイドルもののソシャゲは儲かってない」
「デュフ、確かに」
「……目はクリっと大きく。髪は金髪で……お団子。だけどまとめきれなくて、結局ロングになっちゃう感じ」
「ほほう、そこは黒髪では?」
「金髪だけど、あどけなさが残ってるのがいいんだよ。そのささやかなギャップが重要だ。俺に『さあ手折ってください』と言わんばかりの、初々しい花になる」
「詩人ですなあ」
そうだ、俺は詩人だ。
綺麗めだけど可愛い、大人っぽいけど、あどけない。何も知らぬげでいて、ひとたび一線を越えたならば、どれほど乱れるかわからない……。
そういう「曖昧さ」が、俺の心の琴線を刺激するのだ。
え、それでも結局飽きるだろって?
俺的な「エロス理論」で言うと、そこで物を言うのが「想像力」なのだ。
ここでひとエッセンス、この美少女に放り込んでやる。
「設定は、エルフだ!」
そう、この初々しい花はエルフなのだ。これが俺の想像力を掻きたてる。
何せ相手は耳の尖った異種だ。
どんな物語が展開されるのか、想像は広がる。
エルフって、どういう恋をするのだろう。どういうキスをするのだろう?
この広がる想像こそが、「エロスの伸びしろ」になる。
これがあれば、スルメの如く楽しめるのだ。
大体、男全員が「がっつきエロ」を求めてるなんて偏見にも程があるぜ。
この想像力さえあれば、例え女がいなくたってエロスを嗜むことが出来るのだ。勿論脳内でだが。
――なんてことをしていた数週間前を思い出しつつ、カチカチと適当に操作してみる。
「……そういえばキャラ設定で満足して、そのまま放置してたっけな」
プレビューモードで早速、理想の二次元を堪能した。
俺のエルフは清らかな微笑みを湛えたまま、俺の成すがままに回転している。
なんて素晴らしいんだ。
二次元は文句も言わないし、ずっと俺に笑いかけてくれる。
やっぱり二次元は最高だ!
ナマモノの女にえぐられた傷を画面上の女で癒しながら、エルフに喋らせてみる。勿論可愛いボイスも既に選択済みだ。
「狩りに行かないのですか、マスター?」
こんな新機能、本当にアクションゲームに必要なのか?
と思いながらも何度も何度も、セリフを言わせてみた。
「狩りに行かないのですか、マスター?」
言わせながらタッチペンでエルフをつついて、ピョンコピョンコと跳ねさせてみる。下着姿のエルフのたわわな胸は、下着の下からはみ出んばかりにボインボインだ。勿論お尻もプリンプリン。
重力法則を無視して、おっぱいはふわりと柔らかく揺れている。
ん? 巨乳は刺激が強かったんじゃないかって?
それはそれ、これはこれ。
大は小を兼ねるって言うだろ?
しかしこのぴちぴちの下着。
実にけしからんことだ。
前作までは味気ないものだった、まるでサラシのような……。でも俺の「想像力」の話をさせてもらうなら、そのサラシこそがネックなのだ。
サラシの下にどんなおっぱいが隠れているんだ……?
どんな尻を隠しちゃってるんだ……?
それを考えると、今までのものでもずっと眺めていられた。
なにせ俺はプロだからな。
「狩りに行かないのですか、マスター?」
俺の手が滑ったのか、またもやエルフが喋る。
我儘な娘だ。そんなに言うなら、連れて行ってやろう。
「だいぶなまってるからな。適当なクエストやってくか」
ゲーム内にある「ハンターの家」に入り、道具箱の中を物色する。中には初期防具のドングリアーマーと、各種お試し武器が取り揃えられていた。
「……とりあえず武器は双剣かな」
大抵、初期のクエストは雑魚キャラ討伐が主だ。
えてしてそういう小物は小さくてすばしっこい。
大ぶりな武器や飛び道具よりも、こういった機動性があるものが一番だ。
「そしたら、クエスト受注っと……」
何も考えず、俺はクエストに出発した。
今思うと、これが全てのはじまりだった。
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