学園ガーディアンズ!

三浦常春

1章 進め!ガーディアンズ

 辿り着いたのは島だった。


 穏やかに揺れる水面を滑ること、およそ半日。果てしなく続く群青の上に、ぽっかりと女神の乳房が浮かんでいた。


 あれが目的の島である。


 島の両端に盛り上がる丘には鬱陶しいほどの緑が這い、それぞれの頂には壁のようなものが見える。その谷間には無機質な建造物と穏やかな街並みが広がっていた。


 遠くに見えていた島が、徐々に近づいてくる。波止場に立つ人型が大きく手を振っている。その表情まで、はっきりと見て取れるようになると、船は灰色のコンクリートに沿って緩やかに停止した。


 人の動きが慌ただしくなる。白地に赤の線を描いたフェリーと港との間に階段状の橋が渡される。それを伝い、少女はようやくその土地へと降り立った。


 先に見た光景を、少女は一生涯忘れることがないだろう。楽園ともとれるその街を、彼女は夢に見続けるだろう。噂ばかりに聞いていた、同族の理想郷だった。


 そして月日は流れ――四月八日。成宮明里なるみやあかりは晴れて高校生となった。

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