概要
町に暮らす少女エリカは、いつも通りアルバイト先の古道具(発掘機械)屋『がじぇっと』に向かうが、いつも不機嫌な五十鈴店長の頭には、唐突に猫耳が生えていた!
ふたりは平和な町の小さな問題を解決しつつ、ギフト現象の謎を探ることに。
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- ★★★ Excellent!!!変わらないわけにはいかないけれど、少しずつ前へ、道は続く。
エリカがバイト先の古道具屋「がじぇっと」に出勤すると。
いつも不機嫌な店長に、猫の耳としっぽが生えていた!
恐らくは一度、我々の水準以上に科学が発展した後で、戦争により失われた世界。
我々には何だかわかる機械類も、エリカにとっては魔法や妖精さん。
作者様の『つくも』シリーズや『迷宮雑感』が面白かったので。
“ダメな成人男性主人公”の印象が強く(すみません……)。
ほわほわしたエリカちゃんは、かなり意外でした。
二巡読んで、納得したんですが。
これ、仮に店長一人称だと、店長の魅力がうまく見えてこないんだなぁ。
誰かの役に立てない自分が悔しい、とか。
変わるのが怖い、とかのエリカの葛藤も。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想定外読者にも伝わる作品の魅力と書き手の愛
成人済ツンツン系眼鏡男子に猫耳と尻尾が生えるところからスタートするこの作品は、明らかに僕を読者として想定していません。
というより、おそらく男性全般を対象として想定していません。主人公のエリカ・スタージョンはとても愛らしい女の子ですが、作品のキモはそこじゃないでしょう。ただ、それは別に悪いことではありません。昨今の二次元エンタメ界隈にはただひたすらに女の子がかわいい女性全般を対象していない作品なんてゴロゴロしていますし、それでヒットもしていますからね。『ごちうさ』とか『きんもざ』とか。
で、『ごちうさ』や『きんもざ』に想定していない女性ファンがつくように、この『がらくた通りと猫の耳…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しい話、易しくはない話 与えられたものについて
この物語の生い立ち自体を知っていて尚感じるのは、本作が作者自身の核に、これまでになく干渉して生まれ落ちたのではないか、という予感です。
主体のパーソナリティー、その語り口、短編では用いられた事もあるけれど、これだけ長きに渡って「猫を被り続けた」のは、初めてじゃないでしょうか。
エリカ・スタージョンという主観を、あるいは形を、介してでないと、この物語世界はおそらく「リアル」に、無骨に、意図を妨げる形でハードに、立ち現れたのではないかと感じます。この世界自体は、決して優しくはない。優しさを片時も手放さずにいられる、そういう主人公を通して、初めて世界は読者に笑みを見せてくれたのかな、と。
「嗜…続きを読む - ★★★ Excellent!!!特別な願いが込められた、とびっきりの猫耳と猫しっぽ
いっけなーい!遅刻遅刻!!と慌ててアルバイト先へ向かうと、店長に猫耳と猫しっぽが生えていてあら可愛い!
……というところから物語は始まるのですが、うん、私が説明すると相当安っぽい。でも実際はすごいんですよ。主人公が走っている描写だけで引き込まれます。その途中に繰り出すちょっとした動作ひとつで、あっという間に主人公のことが好きになりました。
ふんわりやわらかくて、どこまでも可愛くて、人が人を想うあたたかさで満ち溢れていて、物語に流れる空気がそれはそれは素敵なんです。
ただ優しいばかりの世界ではないのですが、シリアスな場面でも主人公のキュートさに心がぽやんと緩んだりして、読んでいると穏やかな気…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ずっと未来、僕らの世界の技術をもう知らない彼女の、不思議な日常と謎
舞台は今よりはるか未来。
『戦争』やらなんやらを経て、人類はかつての技術を無くしたり忘れたりしているような時代に生きている一人の少女、エリカ。
彼女のアルバイト先である『がじぇっと』には、名前のとおりそんな過去のアイテムがいっぱい。
ある日、店長の頭に猫の耳が生えたからさあ大変。
この不思議な『ギフト』という現象と、ドローンからシンセサイザー、アンドロイドといった二重の意味での過去の遺品たち。
エリカの日常の中でそれらが結びつきそうになりながら、それでも日々は過ぎていく。
そんな遠く小さな世界の、一人の少女が見る光景を、今度は読者が見る物語。