特別な願いが込められた、とびっきりの猫耳と猫しっぽ

いっけなーい!遅刻遅刻!!と慌ててアルバイト先へ向かうと、店長に猫耳と猫しっぽが生えていてあら可愛い!
……というところから物語は始まるのですが、うん、私が説明すると相当安っぽい。でも実際はすごいんですよ。主人公が走っている描写だけで引き込まれます。その途中に繰り出すちょっとした動作ひとつで、あっという間に主人公のことが好きになりました。

ふんわりやわらかくて、どこまでも可愛くて、人が人を想うあたたかさで満ち溢れていて、物語に流れる空気がそれはそれは素敵なんです。
ただ優しいばかりの世界ではないのですが、シリアスな場面でも主人公のキュートさに心がぽやんと緩んだりして、読んでいると穏やかな気持ちになれました。
でも、それだけでは終わらないところが、この物語の真髄ではないかと思うのです。後半にかけて、これまでのあたたかい世界観が大きな説得力となって襲いかかってきます。だからこそすごく切なくて、よりいっそう愛おしい。
この感覚を噛みしめたとき、あぁここまで大切に読み進めてきてよかったなぁと、ますますこの物語のことが好きになりました。安藤さんも大好きです!!!

健気で明るくて優しくて心の中まで綺麗で可愛い女の子と、ある日突然猫耳としっぽが生えてきちゃった成人眼鏡男子、というさじ加減が難しそうな人物を、あざとくならずにひたすら微笑ましく魅力的に描き出せる手腕も本当にすごいなぁと惚れ惚れしておりました。読者目線だけには留まらず、書く側の人間としても終始魅了されまくりです。メロメロです!

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