概要
とある事情からやけっぱちになって日本を飛び出しジムに居候していたアキラはこんな試合は無理だろうと言うが、普段は弱気なロニーがなぜか出ると言ってきかない。
しょうがなく練習に付き合い始めると、予想しなかった出来事がいくつも起こり、さらにわずかながらロニーにチャンスがあることもわかってきた……
ボクシングという過酷なスポーツを通じて、不器用ながらも情熱にあふれる男たちを描く現代ドラマ。
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少し珍しいテーマですが、幅広い読者へ向けての作品です。
インドネシアなんてバリしか興味ない、ボクシングははじめの一歩をちょっと読んだこ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!王道と異色の隙間を縫うように、ボックス!
うだつの上がらない挫折したロートルが、一念発起して若き王者に挑む。
これは酷く使い古されたテーマの物語であり、似たようなあらすじの物語を探そうと思えばいくらでも見つけることができるだろう。
しかしそれは、このストーリーに王道の面白さがあるということだ。
王道を陳腐だと思わせないだけの確かな文章力と構成力は、右手にするするとページを進めさせる。
そしてそんな王道のストーリーにスパイスを加えるのが、インドネシアというあまり馴染みのない舞台。
正直自分はインドネシアについて「東南アジアの国だよね?バリ島とかがあるんだっけ」程度のことしか知らないし、恐らく大抵の日本人はそんなものだろう。
この物語…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ボクシング全くわからなくても、熱くて良いです。
ジャカルタの33歳のボクサー、ロニーのもとに、
日本から若手ボクサーとの試合の依頼。
やる気のなかったロニーが、奮起する。
とにかくプロローグを読みましょう。
私、ボクシングは全くわかりませんが、
「これは面白いぞ!」という予感がビシバシします。
(33歳で“老”って言われちゃう世界なんですね……)
ロニーも、ジムの居候アキラも、
ロニーの練習に付き合ってくれる仲間たちも、
出てくる人物みんな、脳までボクシングでできてるのが
とても良いです。
インドネシアの情勢とか、恋愛とか、
人生なのでボクシング以外のこともあることはあるのですが、
とにかくボクシングが熱くて良かったです。 - ★★★ Excellent!!!ロニー!俺だ!右カウンターを打ってくれ!
インドネシアでジムを経営する老ボクサーと、そこに居候をしている日本から逃げ出してきたボクサー。日々、なんとなく暮らしている2人の元に、赤道を超えた日本から試合のオファーが。相手は売り出し中の期待の新人。傍から見ればどう見ても「噛ませ」としてのオファーを受け、2人のボクサーの止まっていた歯車が動き出す。
ボクシングを軸とした登場人物たちの交流や、インドネシア情勢を織り込んだ展開もさることながら、ボクシングの練習や試合における、理屈や狙いが印象に残りました。アホ丸出しな感想で恐縮ですが、「識者が難しそうなことを説明してくれて、それを読んで『へ~』『すごい』と思える話」、大好きなんです。
とも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!最高の読後感!読んだ記憶を消してもう一度読みたい!!
ボクシングにかける熱き男たちの物語。
ボクサーという生き方に、人の強さの真髄を見ました。
その描かれ方が、熱くて渋くて深くてとてつもなくカッコいいのです!
そして読後感が最高です。底抜けに良いです。
一話毎に積み重ねてきたものが、ひとつの無駄もなくリングの上で昇華する圧巻のラスト。もう究極的。最高に気持ちいい!
なんというかそれは未体験の気持ちよさで、スポーツや格闘技に打ち込んだ人にしか到達できない境地の片鱗に触れることができた心地でした。
読んでるだけでそんなところまで連れて行ってくれる作品、本当にすごい。
忘れた頃に読み返して、この強烈な読後感を再び味わいたいのですが、感動は当分薄れ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!左封じ極東より
題名を読み、本文第一話冒頭を読み、「ああ、これはそういう話なんだな」と納得。ロニーとアキラ、そして彼らを取り巻く縁のすべてが右カウンターに乗る、そんな話なんだなと。
縁にも色々ある。因縁というくくりで言えば、運命もそれにあたるだろう。この物語の登場人物の過去には、今の環境のすべてに起因があり、それゆえに縁が紡がれ、未来への右カウンターに繋がる運命の物語へと続く。
物語の最後、ひとつの因縁が終わり、残った一番大きな因縁への決着が囁かれる。その因縁が、はたしてどう新しい縁を紡ぎ、運命の決着を見せるのか……。それを夢想するだに、読み進めていた熱さが胸に蘇る。
これからこの物語を楽しま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カマセ犬サイドからのボクシング小説
「あしたのジョー」「ロッキー」「はじめの一歩」……
ボクシングをテーマにした名作の多くは主人公がファイターであり、アウトボクシングをやや不当に扱っている感は否めない。
アウトボクサーの物語が少ないとお嘆きの貴兄にこの作品をお勧めしたい。
この作品のユニークな点は、それ以外にもある。
外国人ボクサー、しかも欧米人やボクシング王国のメキシカンではなくインドネシア人ボクサーの物語であること。
カマセ犬の役割のインドネシア人のアウトボクサーサイドからの物語というアイデア自体はたしかに誰でも思いつくだろうが、実際に書ける作家は限られてくるだろう。インドネシアを文字情報だけではなく肌で知っていなければい…続きを読む